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くるみ_226
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第4話 初めての顔合わせ
翌週の金曜日。
仕事を終えた仁人は、会社のロビーで大きくため息をついた。
「……緊張する。」
スマホを見る。
勇斗からのメッセージ。
『店の前で待ってる。ゆっくりで大丈夫。』
「……。」
優しい。
だから余計に緊張する。
今日は勇斗の友達、柔太朗と舜太と初めて会う日だった。
「おーい!」
後ろから聞き慣れた声。
振り返ると太智が走ってくる。
「そんな顔してどないしたん?」
「……今日。」
「ああ、勇斗さんの友達と飯やろ?」
「うん。」
太智はニヤッと笑った。
「めっちゃ緊張しとるやん。」
「してない。」
「耳真っ赤やで?」
「……暑いだけ。」
「今日そんな暑ないやろ。」
「うるさい。」
太智は肩を組もうとして、仁人に避けられる。
「冷たっ!」
「近い。」
「昔から変わらんなぁ。」
笑いながら歩いていると、待ち合わせ場所が見えてきた。
勇斗がこちらに気づいて手を振る。
「仁人。」
「……お疲れ。」
「太智くんも来てくれてありがとう。」
「こちらこそ! 仁人一人やと絶対固まる思うたんで。」
「おい。」
「図星やろ?」
「違う。」
勇斗は小さく笑った。
「行こうか。」
◇ ◇ ◇
居酒屋の個室。
ドアを開けると、二人の男性が立ち上がった。
「初めまして!」
明るく笑う柔太朗。
その隣では、落ち着いた雰囲気の男性が軽く頭を下げる。
「初めまして。舜太です。」
「ど、どうも……。」
仁人は少しぎこちなく頭を下げた。
太智はにこっと笑う。
「太智です! よろしくお願いします!」
「勇斗から話は聞いてるよ。」
柔太朗が笑う。
「ツンデレでかわいい人だって。」
「……。」
部屋の空気が止まる。
仁人はゆっくり勇斗を見る。
「……勇斗?」
「あ。」
「言ったの?」
「少しだけ。」
「少し!?」
「いや、結構。」
「勇斗!」
柔太朗が吹き出した。
「本当にかわいい!」
「笑うな!」
その様子を見ていた舜太が苦笑する。
「勇斗、お前なぁ。」
「ん?」
「恋人の恥ずかしい話ばっかりしたらあかんやろ。」
「そう?」
「そらそうや。」
太智もうんうんと大きく頷く。
「ほんまそれ! 仁人、恥ずかしがりやねんから。」
「太智まで!」
「せやけど事実やん。」
「味方しろ!」
「無理や。」
個室の中は笑い声に包まれた。
◇ ◇ ◇
料理が運ばれ、少しずつ空気も和らいでいく。
「仁人くんって猫好きなんだって?」
柔太朗が尋ねる。
「……。」
仁人は箸を止める。
「勇斗が言ってた。」
「……。」
「猫カフェでデレデレだったって。」
「勇斗。」
低い声。
「はい。」
「あとで覚えてろ。」
「怒ってる?」
「怒ってる。」
「ごめん。」
勇斗は素直に頭を下げる。
すると仁人は小さくため息をついた。
「……もういい。」
その様子を見て、舜太が優しく笑った。
「ほんま、仁人くん優しいなぁ。」
「え?」
「普通やったらもっと怒っとるで。」
「……そうですか?」
「せやせや。勇斗はたまに調子乗るからな。」
「舜太!」
「事実や。」
柔太朗が笑いながらグラスを持ち上げる。
「でもさ。」
「?」
「勇斗があんなに幸せそうに恋人の話するの、初めて見た。」
部屋が静かになる。
勇斗は少し照れたように頭をかいた。
「……そうかな。」
「そうだよ。」
柔太朗は笑う。
「仁人くんのこと、本当に大好きなんだなって分かる。」
仁人は勇斗を見た。
勇斗は照れくさそうに笑いながらも、否定しなかった。
「……うん。」
その一言だけだった。
だけど十分だった。
仁人は思わず視線を逸らす。
「……。」
耳が熱い。
勇斗はそんな仁人の様子を見て、ふっと笑う。
照れている。
それだけで、なんだか嬉しかった。
帰り道。
店を出ると夜風が心地よく吹いていた。
「今日はどうだった?」
勇斗が尋ねる。
仁人は少し考えてから、小さく笑う。
「……思ってたより。」
「うん。」
「楽しかった。」
その笑顔を見た勇斗も、自然と笑みを浮かべた。
二人はゆっくりと並んで夜道を歩いていく。
その距離は、出会った頃よりも少しだけ近くなっていた。
コメント
1件
第4話、温かい気持ちになりました!仁人くんの緊張と耳が赤くなる感じ、すごくリアルで可愛かったです。太智くんのツッコミも絶妙でしたね。特に「勇斗があんなに幸せそうに恋人の話するの初めて見た」という柔太朗くんの言葉にジーンと来ました。照れながらも否定しなかった勇斗さんと、それを見て逸らす仁人くんの耳が熱くなる描写、最高でした。出会った頃より少し近くなった距離、じんわり良いですね!