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第5話 休日のショッピング
友人たちとの食事から数日後。
久しぶりの休日。
仁人はソファで猫の動画を見ながら、のんびり過ごしていた。
「……かわいい。」
画面の中では、小さな子猫が毛糸玉と格闘している。
思わず口元が緩む。
その時。
「仁人。」
「っ!」
慌ててスマホを伏せる。
キッチンから出てきた勇斗は、その様子を見て首を傾げた。
「何見てたの?」
「……ニュース。」
「ニュースで『かわいい』って言う?」
「言う。」
「どんなニュース?」
「……猫。」
「ニュースじゃないじゃん。」
「……。」
図星だった。
勇斗は笑いを堪えながらソファの隣へ座る。
「今日さ。」
「なに。」
「買い物付き合って。」
「いいけど。」
「服見たいんだ。」
「勇斗の?」
「ううん。」
勇斗は仁人を見つめる。
「仁人の。」
「は?」
「夏服少ないでしょ。」
「ある。」
「去年のばっかり。」
「着られる。」
「新しいのも似合うと思う。」
仁人は腕を組んで考える。
「……高い。」
「今日は俺が出す。」
「いらない。」
「誕生日も近いし。」
「まだ一か月ある。」
「前祝い。」
「意味分かんない。」
「じゃあデート代。」
「……。」
その言葉に弱い。
「……少しだけ。」
「よし。」
勇斗は嬉しそうに立ち上がった。
◇ ◇ ◇
ショッピングモール。
「人多い……。」
仁人は少しだけ勇斗の後ろを歩く。
「土曜日だからね。」
「疲れる。」
「休憩しながら見よう。」
洋服店へ入ると、色とりどりの服が並んでいた。
「これどう?」
勇斗が白いシャツを手に取る。
「普通。」
「じゃあこれは?」
「派手。」
「これは?」
「派手。」
「これは?」
「派手。」
勇斗は苦笑した。
「全部派手になってる。」
「黒がいい。」
「また黒?」
「落ち着く。」
その時だった。
店の奥に、小さな猫のワンポイントが刺繍されたパーカーが掛かっていた。
仁人の視線がぴたりと止まる。
「……。」
「見つけた?」
「べ、別に。」
勇斗はパーカーを手に取る。
「これ?」
「違う。」
「猫ついてるよ。」
「見てない。」
「さっきから見てた。」
「見てない。」
仁人は目を逸らす。
その反応がおかしくて、勇斗は笑ってしまった。
「試着だけでも。」
「いや。」
「お願い。」
「……。」
「絶対似合う。」
「……一回だけ。」
◇ ◇ ◇
数分後。
試着室のカーテンが少しだけ開く。
「……。」
恥ずかしそうに顔だけ出す仁人。
「どう。」
勇斗は思わず息を呑んだ。
白いパーカーに、小さな黒猫の刺繍。
シンプルなのに、とてもよく似合っている。
「……かわいい。」
「服がな。」
「ううん。」
「勇斗。」
「仁人が。」
「っ!」
仁人は勢いよくカーテンを閉めた。
「帰る!」
「まだ着替えてないよ。」
「 恥ずかしい!」
試着室の向こうから聞こえる慌てた声に、勇斗は声を出して笑った。
◇ ◇ ◇
店を出ると、勇斗の手には紙袋があった。
「……買ったの?」
「うん。」
「俺、お金払ってない。」
「プレゼント。」
「だからいらないって。」
「でも。」
勇斗は優しく笑う。
「仁人が嬉しそうな顔してたから。」
「……してない。」
「してた。」
「……。」
言い返せない。
紙袋を抱えた仁人は、小さくため息をついた。
「……ありがと。」
勇斗は一瞬驚き、それから嬉しそうに笑う。
「どういたしまして。」
仁人は照れ隠しに前を向いて歩き出す。
その耳は、また少しだけ赤く染まっていた。
勇斗はその後ろ姿を見つめながら、小さく微笑む。
そんな何気ない休日が、二人にとって大切な思い出になっていくのだった。
コメント
1件
第5話、めちゃくちゃ可愛かったです…!仁人の「派手」連発からの猫パーカーにロックオンするところ、試着後に勇斗に「仁人が」って言われて「帰る!」ってなるところ、全部が尊い…。勇斗の優しい「でも、仁人が嬉しそうな顔してたから」にグッときました。最後の「ありがと」も、ちゃんと言えたのがじんわり来た。何気ない休日デート、最高でした🔥 続きが楽しみです!
くるみ_226
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