テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
⚠️警告warning※読後の責任は一切負いかねません。全て自己責任でよろしくお願い致します。
目の前に広がる、真っ暗な『御霊坂(みたまざか)トンネル』の入り口。不気味な風が吹き抜けている。
晴輝は「やっぱり帰ろう」と言うが、翔はすでにスマホのライトをつけてノリノリ。
トンネルに足を踏み入れる二人。声が不気味に響く。
ここで翔が、ネット掲示板に書かれていた「未解決事件のルール」を晴輝に話す。
翔:「なぁハル、このトンネル、5年前に消えた人たちが『天井にへばりついてる』って噂なんだよ。だから、絶対に上を見ちゃいけないらしいぜ」
(「トンネルの天井には、神隠しに遭った人たちの顔がへばりついている。決して上を見てはならない。もし目が合えば、次は自分が天井に引きずり上げられる。」ネット怪談より。)
晴輝:「じゃあ足元だけ見てさっさと帰るぞ」
しかし翔は、動画を撮るためにスマホのインカメラ(自撮りモード)を起動してしまう。
翔:「画面越しならセーフっしょ!ほらハル、ピースして!」
嫌々スマホの画面を見る晴輝。
そこに、天井からダラリと垂れ下がる「長い黒髪」と、逆さまになった人間の「目」が、ゆっくりと画面にフェードインしてくる――。
翔:「ほらハル、カメラ見て!……って、あれ? 画面なんかバグってね?」
晴輝:「は? 何がだよ、早くしろよ」
翔:「いや、なんか俺たちの後ろ……変な黒いモヤみたいなの映って……」
晴輝:「……え?」
翔:「待て、これモヤじゃない。……髪の毛? なんで天井から髪の毛が垂れて……」
晴輝:「おい翔、冗談だろ? やめろって(苦笑)」
翔:「違う、マジで……。ハル、画面見てみろよ。……上から、誰か逆さまで、俺たちのこと、見て……」
晴輝:「(スマホの画面をのぞき込む)」
晴輝:「……っ!!!!(声が出ない)」
(画面に映る、天井から逆さに生えた、血走った巨大な「目」と目が合う)
翔:「ハル……それ、絶対に後ろ振り返るなよ……。今、俺の肩に、冷たい手が……」
翔の肩に「冷たい手」が触れた瞬間、晴輝は翔の腕を引っ張って、前だけを見て猛ダッシュでトンネルを走り出す。
背後から「ベチャッ、ベチャッ」と、天井を何かが這い回るあり得ない足音が追いかけてくる。
晴輝:「走れ翔!! 後ろを見るな!! 上を見るな!!」
晴輝:「はぁ、はぁ、……クソ、出口はどこだよ!?」
翔:「おかしい、おかしいってハル! もう5分は走ってる! このトンネル、そんなに長くないはずなのに!」
(パッと、緑色の「非常口」の看板が2人の横を通り過ぎる)
晴輝:「(足を止める)……嘘だろ。あの看板、さっきも通り過ぎたぞ……?」
翔:「え……?」
晴輝:「俺たち、さっきから同じ場所をぐるぐる回って――」
(ブーッ、ブーッ、ブーッ、と激しいスマホの通知音が鳴り響く)
晴輝:「うわっ!? ……び、びっくりした。誰だよこんな時に……」
晴輝:「……は? 翔、お前……何してんの?」
翔:「何がだよ! 俺は今、お前の目の前に……」
晴輝:「じゃあ、このLINE……誰が送ってきてんだよ……
(画面に、翔からのLINEの通知が超高速で連打される)
『翔:うしろ』
『翔:うえにいる』
『翔:ハル、うえをみて』
『翔:たすけてたすけてたすけて』
翔:「な、何それ……俺、スマホなんか触ってない、ポケットに入れたままだぞ……!?」
(ピコン、とさらに1通の通知。今度は【写真】が送られてくる)
晴輝:「写真……? ……あ、あああッ!!」
翔:「ハル!? 何が映って……」
晴輝:「見んな翔!! スマホを見るな!!」
(写真に映っていたのは、今まさにスマホを見つめている晴輝と翔の頭上、数センチのところまで、天井から髪の長い女の顔が『逆さまに垂れ下がってきている』生々しいリアルタイムの自撮り写真だった)
(ビチャッ……と、晴輝のスマホの画面に、上から謎の黒い液体が垂れ落ちる)
晴輝:「……上から、何か、落ちてきた……」
(晴輝、恐る恐るスマホの画面を指で拭う)
晴輝:「冷た……いや、これ、ぬるぬるして……」
(スマホの明かりで自分の指を見る。それは黒い液体ではなく、赤黒い『血』だった)
翔:「ハル、それ……血、じゃねえか……?」
(ビチャッ、ビチャッ、ビチャッ!と、今度は2人の肩や足元に、大量の血の滴が落ちてくる音がトンネル内に響き渡る)
晴輝:「走れ!! 翔、立ち止まるな!!」
(2人は再び走り出すが、上から降ってくる血のせいで、足元が滑ってうまく走れない。)
(ブーッ、ブーッ、と晴輝ポケットの中で鳴り続けるLINE)
(ピコン!と、今度は晴輝のスマホではなく、『非通知』からの音声通話が翔のスマホにかかってくる)
翔:「うわっ!? な、今度は俺のスマホかよ!?」
(走りながらスマホの画面を見る翔の顔が、一瞬で真っ青になる)
晴輝:「翔! 誰からだ!?」
翔:「おかしい……おかしいってハル! 画面の文字、『晴輝』ってなってんぞ……!?」
晴輝:「は!? 俺は今、スマホをポケットに……」
(晴輝が自分のスマホを確認するが、画面は真っ暗で発信なんてしていない。なのに、翔の画面には「晴輝」からの着信が光り続けている)
翔:「嫌だ、嫌だ嫌だ! 鳴り止まねえ!!」
(恐怖のあまり、翔が走りながら通話ボタンを押してしまう)
(スピーカーから聞こえてくる、激しいノイズと、水を吸い込むような不気味な呼吸音。そして――)
スマホからの声(晴輝のそっくりな声):『……翔、うしろ。……翔、上。……翔、お前さぁ……なんで俺の隣で走ってんの?』
翔:「ひっ……!?!?(声にならない悲鳴)」
(翔が恐怖で、隣を走っている「本物の晴輝」の顔をまともに見られなくなる)
晴輝:「翔!? どうしたんだよ、俺を見ろ!!」
翔:「お前、誰だよ……!? 上から落ちてきた何かが、ハルのフリしてんじゃないのかよぉおッ!!」
(人間不信とパニックに陥った翔は、晴輝の手を振りほどき、狂ったように1人で猛ダッシュしてしまう)
翔:「あ”あ”あ”あ”あ”ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
(翔は次第に晴輝から見えなくなり、暗闇に消えていく)
暗闇に消えた翔を、晴輝が「待て!」と追う──。
しかし、奥から「シュッ!」と激しい音が聞こえ、翔の悲鳴が途絶える。
追いついた晴輝が見たのは、床にポツンと落ちた翔のスマホだけ。その画面のインカメラには、天井で逆さ吊りにされ、生気を失った目で晴輝を見下ろす翔の姿がリアルタイムで映っていた……。
晴輝:「……翔? 嘘だろ、なぁ、冗談って言えよ……!」
(晴輝は、震える手で床から翔のスマホを拾い上げる)
(画面の中の翔は、天井から逆さ吊りにされたままピクリとも動かない。しかし、その虚ろな目が、スマホを持っている晴輝の動きに合わせて『ギチギチ』と不気味に動く)
晴輝:「うわあああッ!!!(スマホを放り出しそうになる)」
(その時、スマホのスピーカーから、ブツブツとノイズ混じりの翔の声が響く)
スマホの中の翔:『……ハル……に、げて……』
晴輝:「翔!? 生きてるのか!? 今すぐ助ける、どこにいるんだよ!!」
スマホの中の翔:『ちがう……上じゃない……後ろ、後ろをみろ……』
晴輝:「え……?」
スマホの中の翔:『お前が今……ずっと手を引いて走ってきたその「翔」は……誰なんだよ……?』
(静まり返るトンネル。カツン、と晴輝の背後で『足音』がする)
晴輝:「(心臓がドクンと跳ね上がる)」
(よく考えたら、翔はさっき晴輝の手を振りほどいて暗闇の奥へ走っていったはずだ。じゃあ、今自分のすぐ後ろに立っている気配は、一体誰なのか?)
(おそるおそる、晴輝が振り返る)
翔(?):『どうしたんだよハル? 早く行こうぜ、出口はすぐそこだろ?』
(暗闇の中に、何食わぬ顔で立っているもう1人の「翔」)
(ニコニコと笑う翔(?)。しかし、その目が、人間のそれとは思えないほど不自然に大きく見開かれている)
晴輝:「あ……あ……」
(晴輝は悲鳴を上げて走り出し、今度こそ死に物狂いでトンネルを飛び出した)
(モノローグ)・晴輝
「気がついた時、俺は自分の部屋のベッドの上にいた。必死の思いで警察に通報した。だけど、警察から返ってきたのは耳を疑う言葉だった。『御霊坂トンネルなんて場所は、この世のどこにも存在しません。それに――』」
警察:『あなたが探している「翔」という少年ですが、そんな人間、この街には最初から存在していませんよ』
「学校の奴らに聞いても、翔の家族の家があった場所に行っても、誰もあいつを知らない。世界から、翔の存在が丸ごと消されてしまったんだ。あいつは、最初からこの世界にいなかったことになっている。ただの、俺の酷い妄想だったんだ。そう思い込もうとした。……だけど、俺のスマホの『写真フォルダ』には、あの日、あいつが最後に撮った自撮り写真が1枚だけ残っている。画面の奥の真っ暗な天井から、無数の手が伸びて、翔の体を掴んでいる写真が。そして……写真の隅っこには、信じられないものが映り込んでいた」
「翔の体を掴む無数の手。その手のひらの一つ一つに、人間の『目』がついていた。その目は、画面の中にいる翔を見ているんじゃない。……写真のレンズを通して。今、このスマホで、この物語を読んでいる『あなた』のことを、じっと見つめているんだ。」
「信じるか信じないかは、あなた次第――。
あ、言い忘れてた。もし今、あなたの頭上から『ミチ……ミチチ……』って音が聞こえても、絶対に、上を見ちゃダメだよ?」
「あとがき」
初のオリジナルホラーです!人間不信って本当にゾクッとしますよね。ちなみに、このお話のベースになった掲示板、まだネットのどこかに残ってるらしいですよ……。感想コメント、天井を気にしながら待ってます😨
世界のまにまに日常譚
総長ヒューガ
84
コメント
1件
ああ、これは…読んでる間、ずっと背筋が冷たかったです。スマホのインカメラで天井を見てしまう演出、めちゃくちゃ怖かった。それにLINEの「うしろ」「うえをみて」の連打…あれ、現実であり得る恐怖すぎて鳥肌が立ちました。そして最後の「翔は最初から存在しない」という展開。伏線というか、タイトルの“人間不信”がじわじわ効いてくる構成、巧いなと。写真の隅の目が読者を見てるっていうメタ的な仕掛けも、思わず自分の周りを見回しちゃいました。続き、めちゃくちゃ気になります…!