テラーノベル
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――紅、深く傷を負う――夜。
山の奥。
鬼の気配は、消えていなかった。
雪紅:
「……まだいる」
童磨:
「数、さっきより多いねぇ」
新人隊士:
「え……!?
き、聞いてません……!」
雪紅:
「下がれ」
新人隊士:
「で、でも……!」
その瞬間。
――地面が、崩れた。
新人隊士:
「きゃあああ!!」
足を滑らせ、転倒。
雪紅:
「……っ!」
鬼:
「――見ィつけたァ……」
闇から、
今までとは明らかに“格”の違う鬼が現れる。
圧。
息が、重くなる。
童磨:
「……上弦クラスじゃないけど」
雪紅:
「強い……!」
新人隊士:
「ど、どうしましょう……!」
雪紅:
「童磨、あの鬼を」
童磨:
「了解――」
だが。
新人隊士:
「ま、待ってください!!」
――雪紅の前に、飛び出した。
雪紅:
「何を……!」
鬼の視線が、一気に新人隊士へ向く。
鬼:
「ヒヒ……脆いのが来たァ……」
新人隊士:
「た、助け……!」
雪紅:
「――戻れ!!」
反射的に、
雪紅が前に出る。
紅の呼吸。
全力の踏み込み。
雪紅:
「紅ノ型――」
だが、その刹那。
新人隊士:
「氷柱様ぁ!!」
童磨の方へ、手を伸ばす。
その“ズレ”が。
――致命的だった。
鬼の爪が、
雪紅の脇腹を深く裂く。
雪紅:
「……っ!!」
血が、滲む。
童磨:
「雪紅!!」
鬼は、追撃に入る。
鬼:
「――遅いなァ!!」
雪紅は、歯を食いしばる。
雪紅:
(……ここで、倒れるわけには)
再び、刀を振るおうとした、その時。
――視界が、揺れた。
足元が、崩れる。
雪紅:
「……っ」
膝を、つく。
新人隊士:
「え……!?
ち、血……!」
鬼:
「ヒヒヒ……!」
鬼の影が、覆いかぶさる。
その瞬間。
――氷の衝撃が、地を裂いた。
童磨:
「……下がれ」
鬼の動きが、止まる。
だが。
雪紅:
「……童磨……!」
童磨は、雪紅を見た。
血に染まった羽織。
呼吸が、乱れている。
童磨:
「……」
新人隊士:
「ど、どうしよう……
わ、私のせい……?」
雪紅:
「……っ、動くな……」
声が、掠れる。
童磨:
「……雪紅」
雪紅:
「……大丈夫……
まだ……戦える……」
立ち上がろうとする。
――が。
力が、入らない。
童磨:
「……無理だ」
雪紅:
「……っ」
童磨:
「君は、下がって」
雪紅:
「……嫌……」
童磨:
「命令だ」
初めて、強い口調。
雪紅:
「……」
悔しそうに、唇を噛む。
鬼:
「――余所見かァ!!」
再び、鬼が動く。
童磨:
「……邪魔」
氷の呼吸。
今までよりも、冷たい。
だが――
雪紅の視界は、ぼやけていく。
雪紅:
(……血、止まらない……)
新人隊士:
「わ、私……
どうしたら……」
雪紅:
「……何も、するな……」
その声は、ほとんど囁きだった。
雪紅:
「……下がって……」
意識が、遠のく。
最後に見えたのは。
――童磨の、
今まで見たことのない横顔。
笑っていない。
余裕もない。
ただ、
必死だった。
雪紅:
(……ばか……)
そのまま、
紅は闇に落ちた。
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