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善悪の言葉に反応せず、まだ続けている馬鹿は放って置く事にして、善悪はキビ団子の説明を続けるのであった。
「続、ふふん! でござる、さっき言った様に食べさせられた者は、最後に手にした者の眷属(けんぞく)、むつかしく言うと『手下』になってしまい、何でも言う事を聞く下僕(げぼく)になってしまうという、大変サディスティックで支配的なアーティファクトなのでござるよ!」
ふむ、なるほど……
ただ言う事を聞かせられるのではなく、眷属にしてしまうと言う辺り、中々にヤバ目の聖遺物という事が窺い知れる。
だってそうだろう、団子を喰わせた対象が、例えばコユキだとしよう、すると、コユキ単体のみならず周囲に楽しそうに集まっている存在、少し前に言った七十一体もの悪魔や霊体、恐らくだが善悪やリョウコ、リエまでも思い通りに動かせてしまうと言う事だろう、その影響は、普段会っていなくてもコユキに心酔している秋沢(アキザワ)明(アキラ)や、ジローとユイ、若しかしたら狩野(カリノ)猟師(リョウジ)まで思うままに操ってしまうかもしれないのである、そしてその対象が大相撲の前頭力士、怖じぬ勇者としてジワジワ来ている最中のあの大洗(おおあらい)出身の関取にまで及んだとしたら……
考えただけで恐ろしい能力、そう言って憚る(はばかる)事無い、恐ろしいアーティファクトと言って良いだろう。
流石に鈍ちんのコユキであってもサドアイテムの登場に、己の身を守ってばかりは居られないと危機感を持ったのか、さっきまでの怯えるアピールを止めて、普通に、あれ? 普通の風情で半分程に減ったホールケーキを再び食べ始めるのであった、たぶん、お腹が空いていたのであろう…… 残念至極!
残念の原因、バクバク独り占めでケーキを頬張っていたコユキが善悪に対して言うのであった。
「んで、その団子が大した物だって事は理解したけどね、んで? お婆ちゃんが言ってた、アタシに集めて来いって言ってたアーティファクトって? まさか手がかり一つ無く集めて来いって言われても流石に無理なんじゃないのぉ? ねぇ、善悪?」
「む、確かにそりゃそうでござるな…… ふむ、些か(いささか)、いや、本格的に行き詰ってしまったでござるな…… どうしよ」
その時、いつもの向こうっ気ばっかり強い、スプラタマンユの長兄が起き抜けだろう声を上げるのであった。
「ダイジョウブ! ダヨ! ゼンカイ、ノ、サーチ、デ…… シラベテアルヨッ! フフンッ!」
前回? ああ、あの時!
富士山麓にアスタロトの領域、魔界の第一層、ムスペルヘイムへのクラックを探した時に、オルクスは確かに色々なクラックを見つけたとか言っていたっけな?
そうか、その内の幾つかがアーティファクトを隠してある場所、彼我(ひが)の中間の不確かな領域、 きっとオルクスはそう言う事を伝えようとしているのであろう、そうコユキは思ったのであった。
「オルクス君、この団子みたいな気配の場所ってどれ位あるの? 分かるんでしょ? 教えてくれるかな?」
「ウン、ツヨイノハ、ゴカショ、カナ? ホカニモ、ヨワイノガ、イッパイ、アルヨ」
「五箇所ね、どう? 善悪! 強い五箇所だけアタシがサクッと取ってくるよ! そう言う事だよね?」
聞かれた善悪は、顎に手を当てて暫く(しばらく)思索を巡らしていた、何故なら恐怖からの無理強いとは言え今の自分はトシ子の弟子であり、勝手に指示して良いとは思えなかったからである。