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金曜日の放課後。
真理亜は、駅前のカフェで一人静かに紅茶を飲んでいた。
今日は、学校帰りに家へ帰らず、
こうして一人になって自分の気持ちを整理しようと決めていた。
カップに映る自分の顔は、少し疲れていた。
でも、心の中には確かなものがひとつだけ、残っていた。
真理亜:(私は――大吾くんが、好き)
それはもう、言い訳の効かない事実だった。
ドキドキしたり、安心したり、傷つけたくなかったり、もっと知りたくなったり――
全部、大吾に対してだけ抱いた感情だった。
でも。
真理亜:(私が大吾くんを選んだら、残りの六人の“優しさ”に背を向けることになる。それでも、私は逃げたくない)
選ぶことは、責任を持つこと。
恋をするというのは、ひとりを愛する勇気と、ほかの誰かに別れを告げる覚悟がいる。
真理亜:(大吾くんを選ぶなら、みんなにちゃんと向き合って、伝えなあかん)
そう決めたそのときだった。
スマホが震えた。
画面には「西畑大吾」の名前。
「今夜、ちょっとだけ時間くれへん?」
真理亜は、ぎゅっとスマホを握った。
真理亜:(ああ――きっと、大吾くんも感じてるんや)
夜。
シェアハウスの裏庭に、大吾と真理亜は並んで座っていた。
月は丸くて、静かな夜風が頬を撫でる。
大吾:「真理亜ちゃん……最近、ちょっとだけ、距離が近なってる気がしてた」
真理亜:「俺の勘違いかなって思ったこともあったけど……でも、信じたくなった。君が、俺を見てくれてるって」
真理亜はそっと、大吾の手の上に、自分の手を重ねた。
大吾:「……勘違いやなかったよ」
真理亜:「私は……大吾くんが、好き。ずっと怖かった。誰かを選ぶことが、誰かを傷つけることになるって、分かってたから。でも、大吾くんを“好き”って気持ちは、本物やねん」
大吾は目を見開いて、少しだけ泣きそうな顔をした。
けれど、その目は嬉しさでいっぱいだった。
大吾:「ありがとう、真理亜ちゃん。……俺も、ずっと、君が好きやった」
握った手に力が入る。
ようやく届いた、想い。
でも――
真理亜:「このまま“付き合おう”って言いたいけど……その前に、私やらなあかんことがあるねん。……他の六人に、ちゃんと伝えたい。“ありがとう”って。“ごめんなさい”って」
大吾は、少し黙ってから、静かにうなずいた。
大吾:「……うん。それが、真理亜ちゃんやもんな。君は、逃げへん人や。俺、そういうとこも、好きやで」
その言葉に、真理亜は心から微笑んだ。
彼に出会ってから、今日まで。
すべての時間が、この一言のためにあったように思えた。
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