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そう言った暁人さんは私の頬を撫でたあと、フワリと包み込むように抱き締めてきた。
雲の上の存在――、しかもどんな女性も夢中になるような美形にそんな事をされ、私はどう反応したらいいか分からず、固まってしまう。
その間も、暁人さんは言葉を続けた。
「愛されて『幸せ』と思えたなら、もっと自分を好きになれるんじゃないか? つまらない男を思い出して傷付くより、俺の愛を受け入れてくれ」
確かに本当の意味で彼を愛し、愛される関係になったら、とても幸せになれるだろう。
けれど私の胸の奥には、同棲して二日目の告白への戸惑いが残っている。
「……信じてもいいんですか? ……私、もう裏切られたくないんです」
「もしも俺が君を裏切ったら、殺してもいい」
極端すぎる言葉を聞き、私は困り切って返事をする。
「……殺すなんてできません」
すると暁人さんはクスッと笑い、私の額に口づけてきた。
「勿論、比喩だけど。……それぐらい、俺は芳乃を裏切らない自信がある」
そう言って微笑んだ彼に一瞬既視感を覚えたけれど、すぐ優しいキスを与えられて、甘くかすんだ思考に紛れていった。
「ん……」
柔らかな唇を何度も押しつけられた私は、空気を求めて喘ぐ。
暁人さんは後頭部と背中を大きな手で支え、その掌のぬくもりに気持ちが落ち着いていった。
彼は上下の唇を甘噛みすると、スルリと腰から臀部を撫で下ろす。
そうされても不思議と、嫌悪感や抵抗はなく、私は自然と彼のキスを受け入れていた。
私は初対面同然の彼と、これからセックスをする。
職場では上司に当たる人だし、私は彼に借金しているし、二人の関係は〝普通〟ではない。
でも彼は〝訳あり〟な私を優しく受け入れ、絶望から救ってくれた。
――なら、抱かれるぐらい、いいじゃない。
――私を大切にすると言ってくれているこの人なら、身を任せても裏切る事はないかもしれない。
傷付いているから、差し伸べられた手に縋る。
愚かしい選択かもしれないけれど、ズタボロに傷付いた私はただ、優しい誰かに助けてもらいたかった。
やがてキスは舌を絡め合う深いものとなり、寝室にリップ音が何度も響く。
Tシャツの裾から彼の手が侵入し、お腹や腰に触れてくる。
素肌を撫でられてゾクゾクと身を震わせるけれど、やはり抵抗感はない。
むしろもっと触ってほしいと、私の心に奥にある雌の本能が訴えていた。
私は自然と腰を揺らしながら、おずおずと暁人さんの体に触れる。
思っていた以上に滑らかでスベスベしている肌が気持ち良く、私はつい何度も彼の背中を撫でた。
暁人さんは名残惜しそうにキスを終えると、私のTシャツを脱がしてパサリとベッドの上に落とす。
そのあと、彼は私の背中に手を回したかと思うと、プツンとブラジャーのホックを外してきた。
「……怖い?」
そう尋ねられて小さく首を横に振ると、彼は「良かった」と微笑んで私を抱き上げた。
「きゃ……っ」
お姫様抱っこをされた私は、驚きと恥ずかしさで小さな悲鳴を上げる。
私はすぐにキングサイズのベッドに横たえられ、スカートも脱がされて下着一枚の姿になった。
(今日……、何の下着をつけてたっけ)
曲がりなりにも暁人さんと同棲するから、どうでもいい三軍の下着はつけていないはずだけれど、初めて彼と体を重ねるなら、一軍の綺麗な下着をつけておけば良かったと、今さら後悔する。
不安になって起き上がろうとしたけれど、優しく肩を押されて押し倒された。
「そのまま」
暁人さんは唇の前に人差し指を立てて「しぃ……」、と静かにするように伝えたあと、少しのあいだ私の体を見つめ、「綺麗だ」と呟くと両手で乳房を撫でてきた。
「ん……」
温かい手で素肌に触れられ、得も言われぬ心地よさと安堵を得る。
スルスルと掌で摩擦されていくうちに、乳首がプツンと凝り立った。
「はぁ……っ、あ、……あ、……」
ウィルに愛撫された時は『大して気持ち良くない』と思っていた場所が、暁人さんに優しく触られると、別の器官に思えるほど快楽を伝えてくる。
まるで自分の体なのに、知らない人の体に思える。
「嫌じゃない?」
確認され、私は「はい」と頷く。
「……ウィリアムと比べてる?」
けれどそう尋ねられ、ドキッと胸が高鳴った。