テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「リオ」とアシュレイに呼ばれて、顔を上げる。目が会い、黄色い瞳に惹き込まれそうになる。珍しい色だが、アシュレイによく似合っている。
「はい」
「俺達と一緒に来る気はないか?」
「ないです」
いきなりの質問に驚いたが、リオは即答する。
「ギデオンと離れる気はないです。俺はギデオンの傍で、ギデオンの役に立ちたい」
「ふっ、そうか。リオがそれほど言う狼領主に、一度会ってみたいものだな。デック、説得は難しいようだぞ」
アシュレイがデックに向かって笑うと、静かに立ち上がる。
「二人とも積もる話もあるだろう。リオ、そう|急《せ》かずにゆっくりと休むといい。まだ顔色が悪いようだ。俺は自室にいるから、何かあれば呼んでくれ」
そう言うと、アシュレイは出ていった。
扉が閉まり足音が聞こえなくなったところで、リオが口を開く。
「なあ、あの人は、俺達の魔法のこと知ってるのか?」
「知ってる。だけど絶対に人に言いふらしたりはしない」
「信頼してるんだな。長いつき合いなんだって?いつどこで知り合ったんだ?」
「追々に話すつってんのに…せっかちな奴だな。まあいいか、いずれ話すつもりだったから、今話しても」
こっちとデックが手招きする。
リオは指図されるままに椅子に座る。アンもついて来て、リオの足に身体を寄せて伏せた。
デックが棚の上のガラス|瓶《びん》から二つのグラスに水を注ぎ、それを机に置いて正面に座る。そしてひと口飲むと、少し考える素振りを見せた。
リオも水を飲んで黙って待つ。
リオの視線に気づいたデックは、小さく深呼吸をすると、「七年前のあの日…」と静かに話し出した。
七年前のあの日、デックは誘拐された。
たまたま村の外で魔法を使っている所を見られて、逃げる隙もなく口と身体を縛られ連れ去られた。
連れ去ったのは悪徳な商人で、魔法を使ったデックを目撃するなり、護衛の大男に命じてデックを気絶させ縛ったのだ。この商人は魔法を使う一族のことを知っていた。商売で遠出をするたびに森の奥深くや山奥の|辺鄙《へんぴ》な場所を捜していたらしい。
デックが目覚めると馬車に乗せられていた。何日も馬車に揺られ隣国にまで連れてこられた。
村から遠く離れ、しかも国を出てしまい、デックは不安でたまらなかった。隙を見て逃げたいが、両腕を縄で縛られているために魔法が使えない。助けてと叫ぼうものなら、護衛の男に張り倒される。
そのうち、とても賑やかな街に着いた。食事を運んでくる召使の男が「王都に着いたぞ」と言うのを聞いて、震えた。