コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「これより、亀山中学校の体育祭を開催します」
全校生徒が決められた列で並び、
アナウンスが流れた。
いよいよこの日が来てしまった。
恭平や朋華達は俺が1位を獲ったら春香に
告白するということを知らない。
生徒数の少ない学校だ、
下手に八百長みたいなことになりうるのも
嫌だったし、あくまで俺の気持ちだったから
春香以外に伝えなかった。
まず最初に行われるのが100m走。
ここで1位を取れば俺のノルマ達成なのだが、
そう甘いものでもなかった。
3年生の各組の出席番号順事に走るペアが決まるので、
毎年対戦相手はほとんど変わらない。
ってことは毎年2位の俺に今年も、
例年1位の『石原』という男が障壁としてぶつかる。
『位置着いて…よーい…パーン』
スターターピストルの音と同時に
一斉に6人の男が走り出す。
70m辺りだろうか、やはり2位の位置に着いていた。
石原との距離3mほど。
なにくそ根性でジリジリと距離は詰まってはいたが
ゴールテープを切ったのは石原だった。
次々と体育祭の種目が行われていく。
組体操や女子のダンス、玉取り競走…
俺のクラスでのハリコの劇も
ライオンキングよろしくとでも言わんばかりに
俺が修学旅行中にひっそりと買って
すぐ先生に取り上げられたシンバのぬいぐるみを
ハリコで作ったプライドロックの上で
筋肉モリモリな男が掲げている。
ちなみに俺はハイエナ役。
珍けな劇だがそれなりに盛り上がっていた。
そしていよいよ次はマイルリレーだ。
走者は恭平、男子A、男子B、俺という順番だ。
これで実質人生最後の体育祭に幕を閉じる。
(後に自分の通う高校で体育祭は行われなかった。)
ここで1位を獲れなければ俺は
どうすればいいんだろう?と考えている間に
スターターピストルは鳴っていた。
第1走者である3年B組の恭平と石原率いるA組は
少しA組が優勢だった。
1年生や2年生も一緒に走るのだが、
さすがに3年生に追いつけることはない。
その後も第2走者、第3走者とバトンは
繋がれたが、A組との差は10m以上も開き、
A組が先頭を走っていた。
「詰んだーーー!!!!」と思いながらも
アンカーのA組を見送った後にバトンを受け取る。
裸足でがむしゃらに走る。走る。走る。
自分の足に神経を集中させ、
自転車のペダルを漕ぐイメージで
ひたすらに走る。
周りの黄色い声援も聞こえるり
気付けば最終コーナーでA組と並んでいた。
走る相手の上がる息が聞こえる。
最後のストレートで残りの体力全て出し切った。
ゴールテープを切ったのは、俺だ。
ゴールした瞬間飛び跳ねた俺を、
恭平や優希は抱きしめて俺は転げ落ちた。
色んな意味で嬉しかった。
この時ばかりは俺って漫画の
主人公なんじゃないかと思えるほど、
自分が輝いて見えた。
他の走者の協力もあってだけど
1位を獲得できた。
これでミッション達成。
この逆転劇によって3年B組自体も
体育祭でのクラス対抗で総合優勝することになり、
クラスの人たちからも褒められた。
まさに感無量だった。
最後の表彰授与もなぜか俺が出ることになり、
最後で最高の体育祭は幕を閉じた。
その夜。
「明日話したいことがある!
昼休憩に体育館裏に来て欲しい。」
と春香にメールを送ると、
「わかった!」
と返信がすぐやってきた。
明日、リベンジだ。
そう思い、寝床につく。
明日を考えドキドキするよりも先に、
緊張の糸も切れ、疲れていたのか
気付けば眠りの中へと入っていった。
翌朝、学校に投稿する。
もう朝から胸の高鳴りが止まらない。
生まれて初めて面と向かって
好きな女性に告白するなんて一大事だ。
授業なんて頭に入ってこなかったし、
友達との話も心ここにあらずだった。
そうしてとうとう来てしまった昼休憩。
誰よりも早く見つからないように
生憎の微量の雨の中、傘もささずに
体育館裏で春香を待つ。
たかが数分が俺には何時間にも感じた。
傘をさした女子二人が体育館裏の角に見えた。
横山と春香だ。
横山は春香を見送るとすっと消えて、
春香が傘をさしてこちらへとやって来た。
高血圧で俺は死ぬんじゃないかと思うくらいの
高鳴りを抑えて、自分の気持ちを伝えた。
「春香の事が好きです。付き合ってください。」
「私も健一のことが好きです。」
火照るその顔は、今まで見た何よりも可愛かった。
じゃぁ、また夜メールするねと言って春香と別れ、
俺は体育館裏に1人残って佇む。
夢じゃないですよ?と自分に言う。
春香と付き合えた事実が嬉しすぎて
何も考えられない。
外は雨なのに頭の中では桜が咲いていた。
チャイムの音で我に返りクラスに戻ったが、
遅刻して先生に怒られ、みんなに笑われた。
春香もニッコリと笑い俺を見ていて、
俺もてへへと言いながら春香を見て笑った。
中学3年生9月中頃。
春香との交際が始まった。