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街灯が照らす住宅街。
駅から15分程歩いた、バス停にも近く、駅から反対方面に10分程歩いた先にスーパーがある。
詩苑のアパートの立地はとてもよく思えた。
街灯がポツポツ照らされ住宅街を歩く。
いつもより早めに景色は変わっていく。
ふと、悠真は右側にある公園を見た。
原っぱは暗くなにも見えず、ぶらんこと滑り台とシーソー、2つある古びたベンチだけが不気味に写った。
公園の少し行った向こう側には保育所がある。
たいした遊具はないが、住宅街と保育所が近いということで、割りと日中は人が多い。
子供が何人か遊びあっている姿を、悠真は何度か目にしていた。
公園の2本先、交番があるのも知っている。
悠真はあとで立ち寄ろうと決める。
昨年の11月、詩苑の住むアパートの下の階に住む大学生の女の子がストーカー被害にあった。
ごみが荒らされた、郵便受けに届いた手紙類請求書類を見られた形跡があったとかで、詩苑を含め同じアパートに住む住人は状況確認で話を聞かれている。
犯人は捕まったのか、ストーカー被害はおさまったのか、その辺は詳しくは知らないが、それから交番勤務の警察官が頻繁に見回りをしてくれているらしい。
4軒のみ入ったアパートを通りすぎる。
左上の部屋のみ電気が付いてないのがわかる。
腕時計を確認する。
21時前だった。
眩しいくらい煌々と明かりの付いているコンビニの前でショートヘアーの見知った顔がしゃがんでスマホをいじっているのが見えた。
「悪い、遅くなった」
ダークブラウンのまるっとした後頭部に声をかけると、無表情に近い顔が悠真を見上げる。
無表情に見える瞳の奥には、確かに不安が見えた気がした。
「ううん、鍵、やっぱ持ってた?」
「発掘した。店長が」
ははっ、と声がもれる。
少しだけ下がった眉にひそかに上がる口角。
「この間、大月さんが片付けたって言ってたのに」
「、、どのへんを? 」
先程までいた、食器の積み上がったシンク。
洗濯物なのか、洗った後なのかわからない服の山。パソコンの周りの空のビール缶やコーヒーのペットボトル。
灰皿におさっまていないタバコの吸殻を思い出しながら視線を流した。
そういえば、仕事の服だけはパリッと糊でもきかせたように壁に掛かっていたのも思い出した。
『ばっかだなぁ。男ってもんはな、欠点が1つや2つ多い方が魅力ってもんなんだ』
いつだったか、店長が店のカウンターでグラスを拭きながら話していた。
その時の制服もパリッとビシッとしていて、髪もバックにしっかり撫で付けてあった。
無精髭なんて、もちろんない。
その後に続く和人さんの『薫はイイトコロが1つや2つしかないけどな』の返しに、スタッフや客も笑った。
音もなく薄い笑いが出た。
『その欠点まみれなのが店長のいいところですけどね』
ふふっと笑う詩苑は尊敬の眼差しを店長に向けていた。
「このアパートって」
並んで向かっていた先、通りすぎたアパートを見上げて沙織は静かに言った。
「変わってるよね」
アパートから沙織に視線を変える。
悠真の疑問が見えたのかもしれない。
「、、普通、こういうアパートの郵便受けって部屋の前にあるのだけじゃない?」
沙織も悠真を見る。
沙織からアパートの下の階のところ、ポストを見る。
A4サイズの用紙が入る程度のポストが4つ、2×2になるように設置されている。
風除室なんてなく、中央にある外階段を登り2階に行くだけの簡単な作りのアパート。
「確かに。俺んちにはドアのとこのポストだけだわ。
、、てか、ポスト鍵付いてんじゃん」
どうやって開けたの、という視線で沙織を見る。
「、、400だった。無理矢理語呂合わせで」
「、、400《しおん》、、。」
ポストは鍵はもう開けられていて、数枚の紙束を持ち、階段を登る。
かん、かんと金属の音が2つ分静かに響く。
詩苑の部屋は2階の左側。
ドアノブに鍵が掛けられているか確認した後、キーホルダーの付いていない鍵を差し込んだ。
カチャン。
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コメント
1件
読み終えました。第4話、街の描写から沙織さんの存在まで、空気感がじわじわ伝わってくる回でしたね。特に、悠真さんが詩苑の部屋の電気が消えているのに気づくところと、ポストの暗証番号が「400」だったという沙織さんのひと言に、彼女の詩苑さんへの思いみたいなものを感じました。最後の鍵を開ける音、次の展開が気になります。素敵なお話をありがとうございます🌷