テラーノベル
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第3話 「無自覚って、一番ずるい」
翌日の《Nocturne》。
開店前の店内では、仕込み組と掃除組に分かれて準備が進んでいた。
「tg、そこ届く?」
「ん〜、ちょっとむり!」
背伸びして棚の上の箱を取ろうとするtg。
しかしあと少し届かない。
「危なっかしいな……」
prが後ろから手を伸ばし、ひょいと箱を取った。
「うわっ、prちゃんありがと!」
「別に」
「背高いの便利だね〜」
「お前が小さいだけ」
「えぇ〜?」
tgは頬を膨らませる。
prはその顔を見て、少しだけ笑った。
「……ガキか」
「今笑った!?」
「笑ってねぇ」
「笑ったって!!」
tgが騒ぎながらprの腕を掴む。
その瞬間。
「……」
「……」
prの動きが止まった。
tgは無意識だ。
けれどprは違う。
細い指。 近い距離。 楽しそうな顔。
全部まともに食らってしまう。
「prちゃん?」
「っ、離せ」
「へ?」
「近い」
「またそれ?」
「“またそれ?”じゃねぇよ……」
prは顔を逸らす。
耳が赤い。
tgは数秒見つめてから、ふっと笑った。
「prちゃんって、ほんとかわいいね」
「殺すぞ」
「照れてる〜」
「照れてねぇ!!」
その声に、奥からakが飛び出してきた。
「なになに!? 今日もラブコメ!?」
「違ぇ!!」
「p~のすけ毎日声デカいって!」
「akのせいだろ!」
akはげらげら笑いながら、tgの肩に腕を回す。
「でもtgちゃんモテるよな〜」
「え、そう?」
「無自覚人たらし!」
「それmzたんにも言われた!」
「ほら!」
prは眉間を押さえた。
「……お前らほんと騒がしい」
「え、prちゃん嫉妬?」
「は?」
「akと仲良さそうだから〜」
「はぁ!? 誰が!!」
反応が早い。
akは腹を抱えて笑った。
「うわ出た! わかりやす!」
「黙れ!!」
tgは目をぱちぱちさせる。
「え、prちゃん嫉妬とかするタイプ?」
「しねぇよ」
「でも今それっぽかった!」
「気のせい」
「え〜絶対そう!」
prは深いため息をついた。
もう調子が狂いっぱなしだ。
tgがいるだけで、 普段なら流せることが全部引っかかる。
笑われるのも、 近づかれるのも、 他のやつと仲良くしてるのを見るのも。
全部。
「……最悪」
小さく漏らした声を、tgは聞き逃さなかった。
「prちゃん?」
「なんでもねぇ」
「変なの〜」
そう言って笑うtgに、 prはまた目を逸らした。
―――
一方その頃。
厨房では、ktyがエプロン姿で仕込みをしていた。
「〜♪」
鼻歌交じりに野菜を切っている。
しかし次の瞬間。
「あっ」
ころころころ……
切ったトマトが床を転がっていく。
「うわぁぁ〜!!」
「……ktyお」
mzが呆れた顔で拾い上げた。
「またやってんのか」
「ご、ごめん……」
「怪我すんなよ」
「うん……」
しょんぼりするkty。
mzは少し黙ってから、ぽんと頭を軽く叩いた。
「ドジ」
「うぅ……」
「でもまあ」
mzは拾ったトマトを洗いながら、小さく笑う。
「そういうとこ嫌いじゃねぇ」
「……え?」
ktyが固まる。
mzはハッとして顔を背けた。
「……今の忘れろ」
「え、え、えっ!?」
「聞こえてねぇだろ」
「聞こえたよぉ!!」
ktyの顔が一気に赤くなる。
そのタイミングでatが入ってきた。
「どうした?」
「mzちが急にかっこいいこと言った……」
「mzが?」
「うるせぇktyお」
mzは珍しく少し焦っている。
atは数秒考えたあと、真顔で言った。
「恋じゃん」
「ぶふっ!!」
ちょうど水を飲んでいたmzが盛大にむせた。
「aっちゃん!?!?」
ktyも真っ赤になる。
atは首を傾げた。
「違うのか?」
「違っ……」
mzは否定しかけて、止まる。
ktyを見る。
困ったように笑って、 でも嬉しそうにしている顔。
胸がざわつく。
「……知らねぇ」
それだけ言って、mzは顔を逸らした。
ktyはそんなmzを見て、 こっそり口元を緩める。
―――
夜。
営業が始まる直前。
tgは店の看板を出そうとして、背伸びしていた。
「んん〜……重い……」
すると後ろから手が伸びる。
「貸せ」
「あ、prちゃん!」
prは軽々と看板を持ち上げた。
「すご〜」
「お前非力すぎ」
「prちゃんが強いんだって!」
tgが笑う。
その笑顔を見て、 prはまた少しだけ黙った。
「……なぁtg」
「ん?」
「お前、誰にでもあんな距離近いの」
「え?」
「……いや、なんでもねぇ」
聞くつもりだった。
自分だけじゃないのかって。
でも聞けなかった。
聞いてしまったら、 期待してしまいそうだったから。
tgは不思議そうに首を傾げる。
「prちゃん今日変だよ?」
「お前のせい」
「えぇ!?」
prは看板を置いて、 そのままtgの額を軽く指で押した。
「うわっ」
「少しは自覚しろ」
「だから何の!?」
prは答えない。
でもその横顔は、 少しだけ優しかった。
――続く。
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