テラーノベル
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激毒の閃光と、黒銀の質量が激突した。
轟音とともに凄まじい衝撃波が弾け飛び、神々の庭園だった大地の残骸が、紙くずのように宙へ巻き上げられていく。
その中心。
テラモンの前に立ちはだかっていたのは――1x1x1x1だった。
半透明の緑色の身体は怒りによって激しく明滅し、その内部に透けて見える黒い肋骨が、ギシギシと不気味な音を立てている。
全身から噴き上がる濃緑色と漆黒の炎は、まるで怒りそのものが形を得たかのようだった。
頭には、前面に鮮烈な「X」の刻まれた緑のドミノ・クラウン。
その下で輝く真っ赤な瞳は、これまで見せたこともないほど凶暴な怒りに染まっている。
そして肩には、テラモンから贈られた赤いケープ。
そのケープを激しくなびかせながら、1x1x1x1は両手でヴェノムシャンクを握りしめていた。
刃の向こう側にいるのは――ハックロード・シェドレツキー。
「ガァァァァァッッ!!」
ハックロードのマスクの奥から、獣とも機械音ともつかない重低音の咆哮が響く。
黒銀の大剣とヴェノムシャンクが激しく擦れ合い、緑と紫の異常なノイズが周囲へと飛び散った。
ハックロードは目の前の小さな異形を睨みつける。
彼の世界にも存在していた。
いや。
彼自身の憎悪によって、取り込まれたことすらある存在。
1x1x1x1。
しかし――目の前にいるそれは、ハックロードの知る1x1x1x1とは明らかに違っていた。
ただ世界を腐食させるだけの存在ではない。
ただ憎悪を撒き散らすだけの怪物でもない。
その炎の奥にあるのは、剥き出しの執着。
激しい嫉妬。
そして――身を投げ出してでも守ろうとする、防衛本能だった。
1x1x1x1はハックロードの骸骨マスクを睨みつける。
そして、血を吐き出すような声で叫んだ。
「テラモンに……手ぇ出してんじゃねぇぞ、このクソ骸骨ッッ!!!!」
「1x……!?」
地面に倒れていたテラモンが、驚愕に目を見開く。
だが、1x1x1x1は振り返らない。
背中にいるテラモンの存在を確かに感じながら、ただ目の前の敵だけを睨みつけている。
そして――。
「勘違いするなよ、バカテラモン!!」
「……え?」
「俺はお前を助けたわけじゃねぇ!!」
1x1x1x1の炎がさらに膨れ上がる。
「勘違いしたら、その首跳ね飛ばすからな!!」
「いや、助けてくれたんじゃ……」
「うるせぇ!!」
テラモンの言葉を即座に遮る1x1x1x1。
そして、ハックロードへ向かって牙を剥いた。
「こいつを絶望させて、痛めつけて、引き裂いていいのは……この世界で俺だけなんだよ!!」
「……」
「お前みたいな、どっから湧いて出たかも分からねぇ変な骸骨マスクが、勝手に調子乗ってんじゃねぇ!!」
ヴェノムシャンクの刃が、毒々しい緑色に輝く。
「こいつは……」
一瞬だけ言葉に詰まる。
だが、1x1x1x1は拳を強く握りしめ――。
「俺の……神だ!!」
その叫びが、世界全体を震わせた。
「他の奴が指一本触れることすら許さねぇんだよッ!!」
「……ッ!!」
ハックロードの赤い眼光が、わずかに細くなる。
「俺の神」
その言葉に反応するかのように、ハックロードの背中に鎖で縛りつけられた巨大な棺が――。
ガタリ。
と、不気味に揺れた。
ハックロードは何も言わない。
ただ、声帯を失った喉から低い唸り声を漏らす。
そして――。
ブンッ!!
黒銀の大剣が横薙ぎに振り抜かれた。
「うおおおおおッ!!」
1x1x1x1の身体が吹き飛ぶ。
ズザザザァァァッ!!
地面を何度も跳ねながら滑っていく。
しかし。
「……へっ」
1x1x1x1は片手を地面につき、勢いを殺しながら立ち上がった。
赤い瞳がギラリと光る。
「その程度かよ……クソ骸骨」
ヴェノムシャンクの先端を、ハックロードへ向ける。
半透明の身体を満たす緑の炎が、一気に燃え上がった。
対するハックロードの全身からも、漆黒と緑のエーテルが噴き出す。
二つの異形。
二つの「1x1x1x1」と、異なる世界のシェドレツキー。
互いの殺意がぶつかり合い、空間そのものが悲鳴を上げる。
「行くぞ、クソ野郎!!」
1x1x1x1が地面を蹴った。
「俺のテラモンに触ろうとしたこと……!」
一瞬でハックロードの懐へ潜り込む。
「その腐った骨の奥まで――」
ヴェノムシャンクを振り抜く。
「後悔させてやるッ!!」
ガァァァンッ!!
黒銀の大剣と毒の刃が激突する。
凄まじい衝撃が周囲を吹き飛ばした。
本来なら世界を滅ぼすために振るわれていた「毒のヴェノムシャンク」。
それが今は――たった一人の存在を守るために振るわれている。
ドゥームブリンガーとビルダーマンは、呆然とその戦いを見つめていた。
「お、おい……」
ビルダーマンが呟く。
「あの1x1x1x1って……さっきまで世界中を毒で壊してたんだよな?」
「はい……」
ドゥームブリンガーも目を丸くする。
「そのはずなのですが……」
二人の視線の先。
1x1x1x1は、ハックロードの猛攻を必死に受け止めながら叫んでいた。
「お前がどれだけ強かろうが知ったこっちゃねぇ!!」
大剣を弾く。
「俺の目の前でテラモンを殺させはしない……!!」
ヴェノムシャンクを振り抜く。
「絶対にだッ!!」
再び、二つの大剣が激突した。
ガギィィィンッ!!
毒の火花が空へ散る。
ハックロードは一歩も退かない。
1x1x1x1も退かない。
そこにあったのは――あまりにも歪で、あまりにも不器用な「愛」だった。
嫉妬。
執着。
独占欲。
そして、何よりも強い「失いたくない」という感情。
そのすべてを、1x1x1x1は毒と炎に変えて戦っていた。
その背中を見つめながら、テラモンはゆっくりと立ち上がる。
胸の奥が、焼けるように熱かった。
自分が生み出した最悪の悪意。
自分の恐怖から生まれた怪物。
自分を「大嫌いだ」と叫び続ける、ツンデレな影。
その存在が今――。
自分を守るために、命を燃やしている。
「……1x」
テラモンは小さく呟いた。
その声は、激しい戦闘音にかき消される。
だが。
1x1x1x1の赤い瞳が、一瞬だけこちらを振り返った。
「……見るな!!」
「……!」
「今の俺、めちゃくちゃカッコいいところだからな!!」
「……ふっ」
テラモンの口元に、思わず笑みが浮かんだ。
「そうだな」
1x1x1x1の炎が、さらに激しく燃え上がる。
「だから……」
テラモンは静かに、その背中を見つめた。
「無茶はするなよ、1x」
「うるせぇぇぇ!!」
叫び声とともに、1x1x1x1はハックロードへと再び突撃する。
その背中は小さい。
けれど――今のテラモンには、誰よりも頼もしく見えていた。
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CsauChan
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