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瀕死の状態で正体不明のモンスターに遭遇したかのような、生理的な忌避感。
アルベルトの眼は、決して〝最愛の妹を見る目〟ではなかった。
私は、心配そうにアルベルトの顔色を伺うコロナリータという女を、冷ややかな視線で観察した。
「ねえ、悪いのだけど、少し中で休ませてくれる? アルベルトも混乱しているでしょうし、貴方にも……少し、尋ねたいことがあるの」
「は、はい!もちろん! さぁ入って」
彼女が、弾んだ、けれどどこか空ろな声を上げて家の中へと私たちを招き入れる。
「アルベルト……歩ける?」
「はい……。ありがとうございます」
アルベルトの声はまだ不安定だったが、ダイキリに肩を貸され、かろうじて立ち上がることができた。
私たちは薄暗い廊下を通って、部屋へと案内される。
外観同様に内部もかなり老朽化し、建材が腐りかけた匂いが鼻をつくが、驚くほど手入れされていた。
廊下には埃がほとんどなく、家具の上にも塵一つ積もっていない。
まるで、誰かがここで「正常な日常」を演じ続けているかのようだ。
「ここを使ってください! あたしの、お父さんが昔使ってた部屋なんだけど、今はあたしが使ってるの」
コロナリータが示したのは小さな個室だった。
簡素なベッドと小さな机、数冊の本が入った本棚。
生活の気配は、確かにそこにあった。
「ありがとう」
私は短く礼を言い、部屋の隅に鞄を置いた。
「お茶淹れてきますね!少し待っていてください!」
コロナリータが足早に去ると、室内には重苦しい沈黙が降り積もった。
アルベルトは壁に背を預け、苦悶に満ちた表情で目を閉じていた。
ダイキリはソファに浅く腰かけ、落ち着かない様子で窓の外の荒野を見つめている。
「大丈夫?」
問いかけると、アルベルトはゆっくりと重い瞼を開いた。
「ええ……少し落ち着きました。申し訳ありません……見苦しい真似を」
「謝ることはないわ」
「ただ……頭の中に、分厚い霧がかかっているようです」
彼は、自身の存在を確かめるように額に手を当てた。
「あの方が……本当に、私の血を分けた妹なのかどうかも、今の私には分からない。けれど、なぜでしょう……あの顔を見ていると、胸の奥が、焼け付くように痛くて仕方がないのです」
ダイキリが、縋るような目で振り返る。