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爆豪くんVSお茶子ちゃん。
できるなら引いて欲しい。近距離に強い爆豪くんと、触れなきゃ発動出来ないお茶子ちゃん。
「START!」
始まってしまった。
最初に突っ込んだお茶子ちゃん。爆発に巻き込まれたかと思ったら、
「上着を浮かせて這わせたのかぁ よー咄嗟に出来たな!」
攻撃を食らっても果敢に挑むお茶子ちゃん。だが一向に爆豪くんには触れられない。
「休むことなく突撃を続けるが….これは….」
「おい!!それでもヒーロー志望かよ!そんだけ実力差あるなら早く場外にでも放り出せよ!!女の子いたぶって遊んでんじゃねーよ!」
「そーだそーだ!」
会場の一部から爆豪くんへのブーイング。
私は思わず椅子から立ち上がった。
同時に、相澤先生が実況席のマイクを奪う。
「今遊んでるっつったのプロか?何年目だ?シラフで言ってんならもう見る意味ねぇから帰れ。帰って転職サイトでも見てろ。
ここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してんだろう。本気で勝とうとしてるからこそ、手加減も油断も出来ねぇんだろうが』
私は立ち上がった。あの観客の声に。否定したくて。でも今は違う。プロヒーローが敵わぬ敵に挑む姿に見惚れるように。
お茶子ちゃんは今まで爆発で浮き上がった地面のコンクリートを活かして流星群を作り出した。
奇しくも一発の爆破で爆豪くんには一発も入らず、倒れたお茶子ちゃんは担架で運搬された。
「あぁ麗日….ウン 爆豪1回戦突破」
「ちゃんとやれよやるなら….」
「さァ気を取り直して」
「私情すげぇな……」
「1回戦が一通り終わった!!小休憩挟んだら早速次行くぞー!!」
呆気に取られてしまった。彼らの試合に。
「愛嶋。座ってろ。撮られるぞ」
相澤先生の言葉も、耳に入ってはいたが聞いてないに等しかった。撮られるのは困るので座るが….。
私は諦めていた。お茶子ちゃんの個性で、爆豪くんに勝てるはずがない。そう思っていたが、お茶子ちゃんは諦めていなかった。
たしかに、何者にも負けない存在というのはかっこいい。かっこよくて、頼もしくて。この人なら絶対に大丈夫と言える。
それと同時に、敵わないとわかっていながら、必死に食らいつく姿も、同等….またはそれ以上にかっこいいのだ。
最初から勝てるとわかってる存在に、私たちは心を動かされる。だが、それ以上に、勝とうと挑む姿に心を動かされるのも事実。
さっきの戦い。
ヒーロー対ヴィランだとしたら、お茶子ちゃんに増援が来るまでの時間稼ぎくらいにはなるだろう。あのブーイングに屈しない爆豪くんも素晴らしい。
爆豪くんはたしかに口は悪いし態度も悪いし顔面怖いし圧強いけど、好意に人を傷つけて遊んで、かつて私を虐めていた奴らと同じように、多くでいたぶったりはしないはず。……いやどうだろうわかんない….少なくとも雄英に入って私の知っている爆豪くんはそんなことしない。
「あーおォ!!今切島と鉄哲の進出結果が!引き分けの末 キップを勝ち取ったのは切島!!これで二回戦目 進出者が揃った!っつーわけで!そろそろ始めようかァ!!」
考え事してたらいつの間にか小休憩が終わっていた。
「今回の体育祭 両者 トップクラスの成績!!まさしく両雄並び立ち今!!
緑谷 VS 轟 !!START!!」
今回の体育祭。私はほぼ出場しないことが決まっていた。だから、席でみんなの活躍を見て水を飲んでいる….だけじゃない!
放送室に入った時から、実はノートと筆記用具を持ってきていたんだ。私は分析することが趣味。そう。ここまでみんなが明かした手の内は全部ノートに書かれているんだ!
もちろんお茶子ちゃんの勇姿も!
轟くんは私と同じく氷の範囲攻撃を得意としている。それに、多分、見せて来てないだけで戦闘訓練で氷を溶かすために使っていた炎の範囲攻撃もできると思う。
私と似たような個性。もちろんタイマンになったら私の方が威力は劣るし、水は凍らされ、または炎の威力に飲まれ蒸発してしまうだろう。
そんな轟くん。一見最強に見えるが、私と同じように反動があるはず。轟くんは私と違って接近戦にも何かしら備えがあるだろうが、緑谷くんの得意な接近戦に持ち込めば勝機はある。
轟くんが出す氷を弾き飛ばす。それの繰り返しに見えたが、緑谷くんの一発が轟くんの腹に入った。これは大きい!
心操くんの試合の時と違って大きな音が連発している。ミッドナイト先生から漏れる音までは拾えないが、緑谷くんは多分何か喋ってる。それで、その言葉に感化されて、轟くんが炎を出した!!
セメントス先生が防御のために使ったセメント。それも同時に
大爆発を起こした。
大きな衝撃波。観客ももちろん、マイキ先生なんかひっくり返っちゃって。
「散々冷やされた空気が瞬間的に熱され膨張したんだ」
こんな中でも冷静に解説する相澤先生…。
「それでこの爆風てどんだけ高熱だよ!ったく何も見えねー。オイ!これ勝負はどうなって…..」
「み、緑谷くん場外。轟くん…..3回戦進出!!」
今まで使って来なかった轟くんの個性。それをあの会話の中で、何かを引き出して使わせた…..。
緑谷くん、最初はパッとしない子だなと思ってたけど、あの子、すごい子なのかもしれない。緑谷くんにぜひ勝ち上がって欲しい気持ちはあるけど、緑谷くんの個性は反動が大きすぎる。この試合に勝てたとしても、後々まで進めるかは分からない。
「カァウンタァアア!!」
爆豪くんVS切島くん。
切島くんの個性は硬化。圧倒的防御に適した個性。それに比べて、爆豪くんの爆破は攻めの個性。矛が勝つか盾が勝つか…..。
「あぁ!!効いたァ!!」
よろけた切島くんを、爆豪くんは逃さなかった。切島くんに向かって爆破。
「爆豪えげつない絨毯爆撃で三回戦進出!これでベスト4が出揃った!!」
飯田くんVS轟くん
「お互いヒーロー家出身のエリート対決だ!飯田天哉VS轟焦凍!!START!!」
飯田くんはスピード自慢。運動神経が言い訳じゃない私からしたら羨ましい。
飯田くんの行動不能により、
「轟!炎を見せず決勝進出だ!!」
常闇くんVS爆豪くん。
「爆豪のラッシュが止まんねぇ!常闇はここまで無敵に近い個性で勝ち上がって来たが、今回は防戦一辺倒!!懐に入らせない!!……とぉ….煙幕ばっかだな?どうだ?」
「常闇くん降参!爆豪くんの勝利!」
「よって結果は 轟対爆豪 に決定だあ!!」
常闇くん降参とは…..!男らしい!
やっぱりダークシャドウにも弱点があったか…..轟くんに爆豪くんに常闇くん….。
最初の戦闘訓練、この3人だったことを思い出すと、とんでもない人たちとペアになったと思う。
「さァいよいよラスト!!雄英1年の頂点がここで決まる!!決勝戦 轟対爆豪!!今!!START!!」
轟くんが氷結で先手を打った。爆豪くんが掴みに入るが、轟くんは場外を氷で回避。あれは使えそうだ。
「左側をわざわざ掴んだり爆発のタイミングだったり….研究してるよ。戦う度にセンスが光ってくなアイツは」
「ほうほう」
「轟も動きは良いんだが、攻撃が単純だ。緑谷戦以降どこか調子が崩れてるなァ…..」
相澤先生の言う通りだ。私や轟くんのような個性は、個性だけで敵の動きを左右できる。接近戦が弱いのもそういう理由だ。
逆に、爆豪くんや緑谷くんのような接近戦の個性は、小回りが利きやすい….はずなんだけど、緑谷くんは体調が心配だ。席には座っているから、リカバリーガールの治癒で何とかして貰えたんだと思う。
けど、治癒は、攻撃を全く食らっていない状態には戻せない。だから私が雄英入学前に受けた個性調査では、脱水症状を治すことは出来なかった。私はいつも通り点滴で水を入れて貰ったっけ。
「麗日戦で見せた特大火力に勢いと回転を加えまさに人間手榴弾!!轟は緑谷戦での超爆風を撃たなかったようだが果たして…..」
「轟くん場外!!よって爆豪くんが勝ち!!以上で全ての競技が終了!今年度雄英体育祭1年優勝は….A組!爆豪勝己!!」
「愛嶋。行け」
「はい。お邪魔しました」
表彰式はグラウンドにて。私もグラウンドに降りてみんなを称えるつもりだ。….が、
「ん”ん”〜!!」
1位の台座に縛り付けられている爆豪くん。2位の台座にいる轟くん、3位の台座にいる常闇くんと違って、なにか悪いことをしたのか?暴れて捕らえられたヴィランみたいになってるぞ。
あれ?そういえば飯田くんは….家の事情?こんな日に?それは大変だな。
「私が メダルを持って来t
「我らがヒーロー オールマイトォ!!」
オールマイトが3人に言葉を掛けながらメダルを首に下げていく。正直羨ましい。
そんな羨ましく思う私を他所に、爆豪くんはいらないいらないと抵抗。….口にかけられてしまって、これでは凶暴な犬のようだ。
いや、貶しているつもりはなくて。爆豪くんの勝利に執念する気持ちとか、態度の大きさとか、いろいろ学ばないといけないことはあるんだ。ただ、今の見た目が。
「さぁ!今回は彼らだった!しかし皆さん。この場の誰にもここに立つ可能性はあった!ご覧頂いた通りだ!競い、高め合い!更にその先へと登っていくその姿!
次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!てな感じで最後に一言!皆さんご唱和ください!!せーの、
「プルスウ
「お疲れ様でした!!!」
え?
ブーイングを受けたオールマイト。
「あぁいや…..疲れただろうなと思って…」
オールマイト、教師になったのは今年が初めてだっけ。プロヒーローとしては満点だが、こういうちょっと躓くところもチャームポイントだ。
プロヒーローとしてあれだけ素晴らしいのに、低姿勢を崩さない。私もそうありたい。
閉会式後。
「君だよね?」
「えっ」
声をかけて来たのは、カメラとマイクを持った人。人目でメディアだとわかる。もしこのカメラが回ってるとしたらまずい。
私はメディアに出てはいけないし、何よりヴィランに存在をバレてはいけないんだ。せっかくUSJに乗り込んで来て、私を捕まえようとした2人組を確保したと言うのに、
「え、えぇと、なにが、ですか?」
「惚けないでくれよ。レクリエーション中に1対3で勝ったの。君だろ?」
あぁ、まずい….どうにかしないと。少し
1人になりたくて、人の少ないところに来てしまった私が良くなかった、
「い…..いや….私、じゃないです。人違い、じゃないですかね、」
苦しい言い訳…..でも私は目立つような容姿じゃないし、
「黒い髪に紫の瞳。それに…..」
なんだ?特に目立つ服も着てないし、
「10歳の子どもとそう変わらない身長!」
オイ今色んな人敵に回したぞアンタ!!
ってそうじゃなくて、しまった身長で判断されていたか…..上から見たら身長なんてそう変わらないだろうに….。
この人を振り切って脱出することはできる。カメラとマイクは精密機械。機械に水をかければ爆発してこの難を逃れることは出来るが、それは私があの時の個性の生徒だと言っているのも同義、
どうしよう、
「やぁやぁ探したよ」
金髪の細身の男性。触覚の髪は彼の肩以上に長く、細くて長い身体にスーツの良く似合う人だ。…..じゃなくて、まずい、人が集まって来てしまったら、
金髪の人は私の肩に手を置いて話し続ける。
「君、雄英の子だろう?相澤くんに用があってね。どこにいるだろう。放送室かな?案内してもらえるかい?」
この人…..助け舟を出してくれてるんだ!
「は、はい!すみません。失礼します。
相澤先生のお知り合いの方ですか?もしかして警察の方だったりします?」
「えっ、….そ、そうなんだよ!最近大怪我したらしいから心配でね、」
「そうでしたか。包帯ぐるぐる巻きですが、何とか復帰してるんですよ〜」
と、歩きながら話して…..やっと一通りが多いところに。さっきのメディアの人がいないか確認して….。
「すみません、助かりました。ありがとうございます」
「いや。私達も警戒を解いたところだったんだ。なるべく人の多いところにいなさい。プロヒーローが近くにいれば安心だ」
「はい。ありがとうございました」
お辞儀をすると、その人は片手を上げて歩いて行った。かっこいい人だ。私のことを知っているとすると、警察関係で、もしかしたらヒーローなのかもしれない。相澤先生のお知り合いだと話していたし、相澤先生にどんな人なのかお聞きしたいn
「逃げないでくださいよ 愛嶋ゆうさん!」
「?!」
さっきのメディアの人の声だ。姿は見えないのに、声だけ聞こえる。それは私だけではないようで、周りの雄英生徒もプロヒーローも辺りを見渡している。
恐らく、マイク先生のような個性….拡声器、とかありそうだけど、今は分析している場合ではない、
「愛嶋ゆうさぁん!周りの生徒は苦労して雄英に入ったのに自分は生まれながらにして持ったコネで入ったんですよねぇ?!」
「やめて!!違う!!私はー、」
「特待生制度。良かったですね、生まれながらの勝ち組が!!今日はどんな気分でみんなを見ていたんです?!這いつくばって戦う姿を嘲笑ってたんですか?!」
「そんなわけない!!やめて!!」
困る!今この場には帰宅しようとしている同級生達が、
「なんの苦労もしないで雄英に入学して!友達ごっこは楽しかったですか?!」
「違う!違う!」
「否定したってしきれませんよ。プロヒーローたちの手のひらで、暖かく育ってきたこと、雄英には入試しないで入ったこと!全て事実じゃあありませんか!!」
「やめて!!」
個性を使うにも、ここは人が多すぎる。何より、個性を持ってる本人が見当たらないと意味はない。
まだ知られたくなかった。違う、違う…..でも否定しきれないのは本当、黙っていたかった、A組のみんなに、同級生に、知られてしまった……。
これからの みんなの目が 怖い
嫌われるのは 怖い……。
メディアの人は、相澤先生の個性とマイク先生が捕らえたらしい。辺りは騒然となって、もちろん、時は止まってくれず、夏が、始まった…..。