テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
1,466
青 ね、ねぇ。黒。
黒 どうされましたか?
青 や、やっぱりなんでもない!
そう言って走り出す天使。
最近こんなことばかりだった。
お風呂に入って、髪を乾かしてあげたあと。
青は何かを言いたげにして、何でもないと走り去っていく。
何かあったのだろうか。
最近は打ち解けてきて、色々話してくれるようになった。
青 一緒に食べよ?
青 あのお花なんていうの?
など些細ではあったが、はじめと比べたら大きな変化だった。
それなのに。
最近の青はどこか様子がおかしい。
それも寝る前になるとだ。
何か不安なことがあるのかもしれない。
明日の夜も続くようだったら話を聞いてみよう。そう思った。
翌日の夜。
やはり
青 …。
少しうつむきながらモジモジとして逃げるように離れていく青。
黒 青。少し待ってください。
そう言ってホットミルクを持ってベッドで青と話すことにした。
黒 何かありましたか?
青 へ…?
温かいミルクを一生懸命フーフーと冷ましながら少しづつ飲んでいた青。
青 な…何もないよ。
やはり誤魔化すように笑う。
黒 俺には言いづらいですか?
青 そ…そういうわけじゃ…
黒 最近何か言いたげにしていますよね?
青 …。怒らない?
青はきゅっと俺の袖をつかんだ。
その力はあまりに弱かった。
黒 え…?お…怒りませんが…
こんな確認はされたことがない。
怒られるようなことをしたのだろうか。
年齢に合わず、少し大人びたところがある青は怒られるようなことなんてこれまで一度だってしたことがなかった。
イタズラなんてしたこともない。
何を言われるのかと思考を巡らせていると、重たそうに青が口を開き、ポツリポツリと話し始めた。
青 あ…あのね。
雷が鳴っていた夜があったでしょう?
黒 えぇ。
青 怖くて勝手にお部屋に入ってお布団に入っちゃってごめんなさい。ってちゃんと反省したの。
黒 謝ることではありません。怒ってなどいませんよ。むしろ、お一人にしてしまって申し訳なかったです。
青 ち…違うの。
黒 違う…というのは…?
青 ちゃんと反省して許してくれて良かったって思ったら、黒が暖かかったなって事とか、一緒に寝れて嬉しかったなって思っちゃって。
話しながら大きな瞳に涙を溜める青。
青 我儘はダメなのに、寝る前になるとまた一緒に寝たいなって、同じお布団に入りたいなって思っちゃって。
我儘言う悪い子は黒嫌いだよね。ごめんなさい。
黒 …。
我儘を言うどころか、我儘なことを考えてしまったことを反省して涙を流して謝る青。
小さな子供なら、「一緒に寝たい」の一言で済む話だ。
それなのに、我儘をあまりに重く受け止めすぎている青。
「甘えたい」という純粋な気持ちが、この天使には謝らなければならない事実として認識されている。
小さな子供とは思えない光景に息を呑んだ。
黒 青。
こっちを見てください。
青は大きな瞳をこちらに向けた。涙に濡れた瞳はウルウルと濡れている。
黒 貴方はまだ小さな子供です。我儘でもおねだりでも何でもして良いんです。
貴方が俺と一緒に寝たいと思ってくださったのなら、俺の隣なんていつでも開けます。
むしろ、貴方が安心して隣で眠ってくださるのは嬉しいことなのですよ。
青 怒ってない…?
黒 当然です。
怒る必要がありませんから。
青 悪い子じゃない…?
黒 貴方は少々いいこすぎて、無理をしてしまうことがありますから。
むしろ少し悪い子になってほしいくらいです。
すると一番不安そうに、黒の裾をきゅっと摘んで、大きなウルウルとした瞳を向けながら
青 …嫌いに…ならない?
黒 なりませんよ。なるはずがありません。
貴方は世界でたった一人の俺の大切な主ですから。
そう言い切ると、青の顔はぱっと明るくなり
青 そ、それなら…今日は一緒のお布団でぎゅってくっついて眠ってもいい?
黒 もちろんです。
青 雷鳴ってないし、怖い夜じゃないのに?
黒 えぇ。一緒に眠りましょう。
青 やったぁ。
そういうと、青は嬉しそうにへにゃりと笑った。
青 ふわぁ…
黒 さあ夜も更けてきました。もう眠りましょう。
青 うん…
もう青は限界らしい。目がトロンとしており、今にも眠ってしまいそうだ。
黒 さぁ、おやすみなさい。青。
青 うん…おやすみなさい。
するとすぅすぅと呼吸音が聞こえる。
もう眠ってしまったのだろう。
青 えへへ…黒…だぁいすき。
と寝言を言いながら俺のことを小さな手で抱きしめている青。
離すまいとするように。
小さな指先が、服をきゅっと握る。
その小さな温もりを、俺はしばらく抱きしめていた。
我儘ひとつでこんなにも怯え、申し訳なさそうにしてしまう。 その姿がたまらなく愛おしくて、そして少しだけ痛々しかった。
腕の中の小さな温もりが、規則正しく上下する。
この子がこれから先も、何も怯えず眠れる夜を過ごせますように。
ただそれだけを、静かに願った。
コメント
8件
短編集は初めての試みなので、少し不安ですが、少しづつ上げていけたらと思っております。 この作品は「二本のフォーク」の青さんと黒さんの日常のお話になっております。 まだ読んでいない方はぜひそちらを読んでから、またこのお話を読んでいただくと見方が変わるかもしれません。 お気軽にコメントお待ちしております。
もう〜〜第1話から尊すぎて胸がきゅんきゅんするんだけど!?!?!😭💕 「一緒に寝たい」って言うだけでこんなに悩んで謝っちゃう青ちゃんが健気すぎて…でも黒さんの「貴方は少々いいこすぎる」って返しがもうね、深いよ…!ちゃんと青ちゃんの性格理解してるんだなって伝わってきてじーんとしたよ…🥺 寝言で「だいすき」って言うシーン、リアルに膝から崩れ落ちたわ…これは続き絶対読みたいやつ!!零先生、尊すぎる作品をありがとうございます…🌸✨