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1 - 終わり

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2025年02月20日

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俺の兄ちゃんはかっこいい。


バレーボールが大好きで、堂々としてて、優しくて、強くて、


母ちゃんと父ちゃんと弟と衛輔にぃの試合を応援することが世界で一番すきだ。


衛輔にぃのプレーは全然目立たない


だって衛輔にぃは絶対にエースにはなれない、点を決めることは出来ない、とんでもスパイクで相手を出し抜くことも、相手の攻撃を打ち落とすことも出来ない。


衛輔にぃの仕事は繋ぐこと、必死に繋いで繋いで繋ぎ続けた先に勝利をもぎ取るエースがいる。


衛輔にぃがピンチを救うヒーローになる、その瞬間を一番近くで応援することが俺の夢だった。

だから吹奏楽部に入った、衛輔にぃが全国に行って、それで俺が音駒の応援歌のトランペットソロを、一番近く、繋げの横断幕のすぐ後ろで衛輔にぃたちの背中を押す。

それを目標に小学生の頃から頑張ってきた、才能はなかったけど努力は返ってきた。地道にコツコツ、努力して努力して、市の吹奏楽団では1番上手かった。


俺は天才じゃなくても努力は裏切らない、そう知った。


でも、どれだけ努力して上手くなっても、努力した天才にただの人間の俺は敵わない。


俺が中一、衛輔にぃが中三、中学最後の大会。


ソロを吹いたのは同い年の天才だった。

先輩が吹いていたらまだ諦められていた、だけど俺の夢は同い年の天才に、呆気なく奪われてしまった。


天才の癖に、普通の人間の気持ちなんてわかんない癖に楽しそうに吹いておいて、なにが

来年は救輔だね

だ、俺の機会は終わったんだ、たとえ来年お前より上手くなってソロの座を貰ってもそこに衛輔にぃはいない。


俺はなんのために頑張ってきたんだ、だまれ、やめろやめろやめろ天才の癖にわかったような口をきいて、なんでお前なんだ


「だまれ」


言っちゃった、悪意も恨みも全部あった、多分あいつのことが嫌いだった、頭に血が昇って口が止まらなかった。


だから俺があいつの人生を壊した。


その後あいつは一度もコンクールにでず、幻の天才として吹奏楽の世界から姿を消した。


あいつの存在を確認できるのは音駒中の応援歌だけ。それだって次の年は俺が吹いた。


時折都会の中に淋しく響くトランペットは聞こえないふりをする。


天才はもう形も残らず消えて…消してしまった。


でも俺は知っている、天才は全てに秀でる訳では無いと。


そして意地と根性もまたそれに勝るとも劣らない天性なのだと。


あいつはもう吹奏楽部には居ない、俺の左に並ぶの奏者なんて居ない、俺は意地と根性と努力、俺の天性でこの場所にいる。


でももし天才が凡人になりへて好きなことを始めてしまったら、他の分野で才能を発揮し天才と言われ、その分野で才能がなくとも天性を持ちうるお前に、


俺はまた殺されるのだろうか。

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