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《〇〇さん、12番診察室へどうぞ。》
診察室のプレートには【呼吸器科・目黒蓮】と書かれていた。
ノックして診察室に入ると、長身で爽やかな男性医師がこちらを見てふっと微笑んだ。
《こんにちは。〇〇ちゃん。調子はどう?》
「…夜になると、少し咳が増えてきて、」
目黒はこの病院に勤務してからずっと〇〇の担当医をしている。
少しずつ打ち解けて、信頼関係も築かれていた。
今日は診察時にしっかりと検査もする。
〇〇からしたら、何度も経験した検査だが、深く息を吸って一気に吐くこの検査は毎回少し苦しい。
《はい、じゃあ大きく吸って…せーのっ》
吸って、吐いて、吐いて、吐ききって…。
眉を少し寄せ、苦しい表情をすると目黒先生がすぐに優しく声をかけた。
《苦しいよね、ごめんねあと少し。》
その声が背中を支えるようで、なんとか検査を終える。
その後、診察で新しい吸入薬の使い方や、気温差での注意点などを詳しく説明してくれた。
《大丈夫。正しくお薬を使えばしっかりコントロール出来るから。》
そう言われると、不安な気持ちが少しだけ軽くなる。
《それじゃあ、また2週間後に来てね。お薬の効果とかを確認したいから。》
と言われ、診察室を後にする。
会計待ちで待合室の椅子に座っていた時。
急に胸の奥が重く冷たい感覚に襲われる。
(咳が…止まらない…息、が…出来ないっ…)
視界が歪み、周りの音が遠のく中で、誰かの足音が近づいてきた。
『分かりますかー?ゆっくり呼吸しようか、大丈夫、大丈夫、落ち着いて。』
落ち着いた低い声と共に、背中に温かい手が添えられる。
視線を上げると、先程1階ですれ違った男性医師だった。
ふわふわしている意識で見た名札に書いてあったのは【Dr,深澤辰哉】という文字。
『酸素、すぐ用意して処置室も開けて』
近くにいた看護師に指示を飛ばしながら、〇〇の背中に手を添えている。
そのまま処置室に運ばれ、吸入薬と酸素を投与。
ある程度呼吸が落ち着いてきたところで、深澤先生はふっと表情を緩めた。
『よし、もう大丈夫そうだね。』
そこへ、目黒先生が駆け込んでくる。
《ふっかさん、ありがとう、》
『はいよ〜ん、また困ったら呼んでね』
《〇〇ちゃん、今は苦しくない?》
「…はい…大丈夫です、」
その会話をしたあたりで、〇〇の意識はふっと遠のいた。
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