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瀬里香はスマホに送信された、陸斗と緑が一緒にホテルに入って行く画像を見つめていた。
【あとは、瀬里香さん自身が決めることです】
と書いた 徹のメールと共に。
そこへ陸斗からのLINEが入った。
【渋滞に巻き込まれちゃったよ(汗) 帰り、ちょっと遅くなりそう】
瀬里香は返信しなかった。
やはり満席だった電車の、誰もいないドア付近に 徹と緑は向かい合わせで立っていた。
緑は複雑な表情で、深く考え込んでいた。
「兄は どうしようもない男だけど、なぜか憎めなかった。
どこか、淋しい目をしていたから…ですか?」
徹の言った言葉は図星だ。 緑は頷いた。
「確かに、兄には可哀想なところもあるんです。兄が中学生、僕は小学生の時に 母が男と家を出て…母は‥こう言うのもあれなんですが、器量が良く 父からすれば自慢の嫁でしたし、僕よりも 兄は母のことを慕ってました。いつ男ができたのかもわからなかったし、そんなことをするなんて 想像もしていなかった。僕はあまりピンときてませんでしたが、父や兄は 相当なショックを受けてました」
「私には、お母さんは病死したと言ってました」
徹が頷いた。
「世間では割とよくある話かもしれませんが、兄にとっては信じられない‥信じたくない話で、人に言うのも 恥ずかしかったんでしょうね。兄は、父からよく言い聞かされてたんです。『女は怖いし したたかだ。騙されるより、騙すくらいの男になれ』‥と。 でも、それはそれで 悪いことなんですけどね」
徹は笑ったが、緑は神妙な顔をして 電車の揺れに身を委ねていた。
「だからと言って、兄のしたことは 許されるべきことではないと思ってます。ちゃんと頭を打つべきです。それが、兄のためでもあるんですよ」
間もなく駅に到着するアナウンスが 車内に流れた。
#狂愛
柏木さくら
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コメント
1件
ああ、なるほど…。陸斗が「女は怖い」って刷り込まれて育った背景が明かされた回ですね。母の裏切りがトラウマになって、今の歪んだ関係性を生んでる——設定としてすごく納得がいきました。徹が「兄のためにも頭を打つべき」と言い切ったのも、この話を知ってるからこその重みがありますね。瀬里香は画像を見て、陸斗の嘘も知ってしまった。静かに動き出す感じがたまらないです。