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バーで健吾に付き合おうと言われた日以来、茜は毎日のように健吾のマンションに通っていた。 一日おきに泊まって、ラブラブな毎日。
「けーんーごっ!
だぁい好きぃー!!」
時間さえあれば健吾に会い、キスをして抱き合った。
少し前のすさんだ生活とは逆の幸せすぎる日々・・・。
そして、今日はクリスマスイブ。
健吾は今からティアラに行かなきゃいけないんだけど、夜の11時にはあがれるようにしてくれた。
あがるまで一人じゃさみしいから、茜も客としてティアラで待つ為に用意をして、二人でティアラに向かった。
ティアラはクリスマスイブなので、早い時間から少し混んでいた。 茜はカウンターのすみに座り、パインジュースを飲む。
『今日、バイト終わったら車でどっかに行こう!
茜、どこがいいか考えといて!』
仕事が一段落ついた時、健吾が言った。
どこかいい所ないかなって考えたけど、地元にはロマンチックな所はあまりなかった。
「あ!東京は?!」
今日の夕方のニュースで、東京のどこかのイルミネーションを放送してたのを思い出した。
「すっごい夜景キレイらしいよ!
でね、明日は渋谷で買い物するの。
ダメ? 東京行きたいよー!!」
茜が駄々をこねたら健吾は笑いながら了解してくれた。そして、
『わかったよ!
その代わり、今から洗い物手伝って!』
と、茜をカウンターの中に連れ込む。 健吾は不器用だからよくグラスを割ったりして、洗い物が苦手だった。
洗い物をしていると、健吾が話し掛けてきた。
『やっぱみんな東京行きたがるよなぁー。
どこがいいの?
こんでるし、渋滞すごいし、だるくねぇ??』
「んー。買い物とか?
あと、オシャレだもん。」
明日の買い物を考えたらウキウキする。
『そーいえば、明たちが三月から東京行くらしいぞ。
ケンも一緒で、仕事決まったんだって。』
「絵里は?」
『わかんないけどさぁ』
ケンは三月に卒業だ。 進学はしなくても、地元で就職すると思ってた。
絵里はずっと彼氏と一緒にいたいタイプだし、遠距離がうまくいくのか心配になってきた。 ケンの就職先が見つかったのはおめでたい事だけど、複雑になる。
洗い物が済み、カウンターの席に戻ると入り口のドアが開いた。
そこにはケンが一人で立っている。
「どしたのー?
ちょうど、ケンの噂してたんだよ!」
ケンは茜の隣の席に来て座って、小声で『絵里がいなくなった』と言った。
『茜ちゃん、何か知らない?』
「絵里とは昨日から連絡とってなくて。」
急いで絵里に電話したけど繋がらない。 家にも帰ってないらしかった。
「何があったの?」
ケンに聞くと、ケンは気まずそうに話した。
『昨日明さんと会ってて、明さんの友達の女二人と飲んだんだよ。
絵里を俺ん家に残してきたから、早く帰る約束したんだけど・・・。
俺、飲み過ぎちゃって。絵里が待ってる事とかどーでもよくなって・・・。
そのうち明さんが片方の女といなくなってさぁ。 俺は残った女を家に送ってすぐに家帰ったんだけど、家に絵里いなくて。
』
「で?バレていなくなったの?」
『それはないと思うけど・・・』
ケンがそう言った時、ケンの携帯が鳴った。
・・・しかし、着信の相手は明だった。
『はい・・・あ、そうですね。はい。
・・・あ、大丈夫です。今からですか?
・・・じゃあ、行きます、はい。』
ケンは電話を切ると、ため息をついた。 そして、明のところへ行くと言い、ティアラを出ていった。
残された茜と健吾は複雑な心境だった。
『大丈夫かな。絵里ちゃん。』
健吾もソワソワしている。 茜も落ち着かず、気持ちを沈める為にタバコに火をつけた。
それからあっとゆうまに時間が過ぎ、11時になった。
健吾の用意を待ち、二人で外に出る。
ティアラのある通りの街路樹やビルにはカラフルなイルミネーションが光って、街中に宝石箱をひっくり返したようだった。
どちらからともなく二人は手を取り合い、ゆっくり並木道を歩いた。
「キレイだね。」
『だなぁ。』
ここで雪でも降ってくれたらホワイトクリスマスで最高なんだけどな。なんて、ロマンチックな事を思ったりするうちに、茜は絵里の事をすっかり忘れてしまっていた。
そして健吾の車に乗り、健吾は東京に向かって車を走らせた。
・・・その時、ある一軒のカフェの中にある顔を見つけた。
「あ!止まって!!」
茜は健吾に車をとめてもらい、
「少し待ってて」
と言って車から降りた。
そして、そのカフェに向かって走った。
カフェの入り口に来た時、やはりあの顔は絵里だと確信した。 絵里が一人でココアを飲んでいた。
まわりの客はみんな幸せそうに笑い、店内は明るいクリスマスソングがかかっている。
でも、絵里はまわりに目もくれず、うつむいていた。
茜は絵里の向かいに座わり、下を向いている絵里の頭をポンとたたいて言った。
「何やってんの?」
絵里は茜の顔を見て驚き、また下を向いて言う。
『ん・・・。
なんか、一人になりたくて。』
少しの間、二人に沈黙が流れた。
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