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ネット上が東和商事の不正疑惑で燃え盛る中
深夜の静寂を切り裂くように玄関のドアが激しく叩かれた。
「健一! 健一、いるんだろ!!出てこい、この裏切り者が!!」
インターホンのモニターに映っていたのは、ネクタイを緩め、髪を振り乱した長谷川部長だった。
かつての傲慢な面影はなく、社会的破滅を悟った獣のような形相だ。
「……ひっ! 部長だ……部長がこんなとこまで…!」
健一はリビングの隅でガタガタと震え、耳を塞いだ。
「あら、お客様よ。里奈さん、開けてあげて」
私の指示に、里奈は「お安い御用よ」と邪悪な笑みを浮かべてドアを解錠した。
なだれ込んできた部長は、床に這いつくばる健一を見つけるなり、その胸ぐらを掴み上げた。
「お前、よくもあんな情報を流しやがったな!俺の人生は終わりだ、家族にも愛想を尽かされた!お前も道連れだ!!」
部長の拳が振り上げられた瞬間、私は冷たく声を放った。
「あら、部長さん。警察を呼ぶのはこちらの方ですよ? 不法侵入に暴行未遂……これ以上罪を重ねて、退職金どころか実刑を望んでいらっしゃるのかしら」
部長の動きが止まる。彼はそこで初めて、部屋の奥に鎮座する私の存在に気づいた。
「お前は……健一の嫁か。…ナオミという女に情報を売ったのはお前だな!?」
「いいえ、ナオミは私自身ですよ。…それより部長さん。あなたが里奈さんと密会していたホテルの領収書、健一さんがしっかり保管していましたよ」
「会社の経費で、私の夫の愛人を抱く……ずいぶん贅沢な遊びをされていたのね」
私は、里奈と部長が並んで写っている「例の現場」の写真をテーブルに並べた。
里奈が部長の腕に絡みつき、嘲笑う。
「部長、そんなに怒らないで。これからは健一と一緒に、私の『奴隷』として働けばいいじゃない。ねえ、奈緒さん?」
「ええ。二人で競い合って床を磨けば、少しは更生できるかもしれないわ」
部長は崩れ落ちるように膝をついた。
目の前には、自分が使い捨てたはずの部下
その裏切った愛人
そしてすべてを支配する「終わったはずの妻」。
「……ああ……あ、ああ……」
部長の喉から、健一と同じ絶望の音が漏れる。
私は、その様子をナオミのアカウントで「ライブ配信」し続けていた。
視聴者数は過去最高を記録し
コメント欄には
『悪の巣窟ww』
『サレ妻の復讐劇、神展開すぎる』
という文字が踊る。
「さあ、部長さんも、健一さんも。……夜食の用意はできているわよ。ただし、食べるのは『床に落ちたもの』だけ。……里奈さん、始めてちょうだい」
里奈が高級な寿司を床にぶちまけ、ヒールで踏み潰す。
「ほら、お腹空いてるんでしょ? 食べなさいよ、元エリート様たち」
かつて会社という城でふんぞり返っていた二人の男が
一人の女の足元で、無惨に、泥臭く、その尊厳を自ら食らっていく。
私はその光景を、ワイングラス越しに眺めていた。
彼らの心臓が止まらない程度に、じっくりと壊していく家庭を楽しむため。
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#大人ロマンス
#サレ妻