テラーノベル
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ルティは「嘘だろう」と顔を真っ赤にしていて、私も自分の言葉を思い返して顔が赤くなる。お店のおばあちゃんは「初々しいね」と微笑んで、ジェラートをほんの少し多めにしてくれた。何だか恥ずかしい。
私たちはお互いに照れながら、近くのベンチで実食することにした。ルティが照れているのはなんだか可愛い。
私が選んだのはシンプルなバニアジェラートで、ルティはメロンジェラートだ。コーンの上に乗せられたジェラートを木のスプーンで食べていく。濃厚でとっても美味しい。
「んん~~~幸せ」
「可愛い。……そんなに喜んでくれるのなら、もっと早く連れて行けば良かったですね」
「いつもは他に色んな物を買ってくれますよ?」
「そうだけれど、シズクが喜ぶなら店ごと買収──」
「それは止めてください」
「はい」
(気を抜くと何かと贈物をしようとしてくるのよね。……そして規模がおかしい)
「……もっとシズクに贈物ができれば良いのですが」
しゅん、とケモ耳が垂れて、尻尾がへにゃりとなって垂れ下がる。それはちょっとずるい。
「十分貰っていますよ。それに高価なものとかでなくても、この間、ラベンダーのポプリを作ってくれたでしょう」
「え、ええ?」
「そういうのだって私にとっては特別な贈物です」
「……!」
そう恥ずかしくも、素直に嬉しい気持ちを伝えたら、ルティはボンと顔を真っ赤にして、それからブンブンと尻尾を大きく揺らしていた。
「シズクは無欲すぎます。もっとほしがって良いのですよ」
「じゃあ、ルティは私が今度ブックカバーを作って贈っても、嬉しくないですか?」
「え。……手作り?」
「そうです。世界に一つだけですよ?」
「ほしいです。家宝に」
「しないで使ってくださいね」
私の言葉にルティはもの凄く喜んでくれた。これで少しは高価な物でなくても嬉しいという気持ちが伝わっただろうか。
他種族だけれど、嬉しい物が一緒かどうか一つ一つ確認していくのも大事なことだ。文化、環境、倫理観など全く違うのだから、自分にとっての物差しで考えずに相手と共有していく。そうすれば少なくとも前世のようなすれ違いは起こりにくくなる。
(周りの環境や、人間関係が圧倒的に問題だったけれど、それと同じくらい私たちは対話する機会がなかった。意図的に削られていたけれど、それでももっと話し合うことができていたら……)
「シズクは宝物に気付かせる天才ですね」
今のルティのように、ヴィクトルの笑顔が見られたかもしれない。そう思うと胸が痛んだ。前ほどではなく少しだけだけれど。
***
温泉都市リディスは、年がら年中観光客や静養のために訪れる人が多い。落ち葉がちらつき、まもなく冬が来るらしいが、観光客も多く賑わっている。特にこの地では異種族婚に関しての差別がないし、様々な種族が生活しているので人族だけとか、森人族だけとか偏りがないそうだ。
(冬になると、薬草採取も難しくなるのかしら? そうすると外出も減るわよね……)
前世では王女だったのもあって、庶民らしい生活知識はなかったけれど、日本での生活環境のおかげで、家事スキルは身についている。魔導具の発達もあるので生活水準もずいぶんと上がっていたのが大きい。
(そういえば元の世界の編み物技術は、この世界でも通用するんじゃ?)
「シズク?」
「ジェラートを食べ終わったら、毛糸など売っているお店に寄れますか?」
突拍子もないことを言い出した私に、ルティは小首を傾げた。ケモ耳もピクッと動いて可愛い。そして感情表現が分かりやすかったりする。
「構わないですが? 毛糸?」
「実は手芸部に入っていたので、マフラーやカーディガン。あと小物類が編めるのです」
「編み物……マフラー……シズクが?」
「はい」
「全財産をお渡しするので、私に作ってほしい」
「全……っ!?」
真顔。
これは本気で全財産を渡すだろう。しかしその申し出を断ったら、ルティは絶望した。最近、絶望の頻度が多くなっているような気がしなくもない。
「……お金を払っても作ってはくれない」
「逆です! ルティからお金は取りません」
「どうして?」
なんでこの人は自分が贈物をするのは当然なのに、私から贈物を貰うという発想にならないのか。さっきの言葉を、まだちゃんと理解していないのかもしれない。種族的な違いからなのか。ちょっとよく分からないけれど、しっかりと認識の齟齬は正そうと口を開いた。
「ルティは大切な人ですから。人族は大切な人に、特別の手作りの物を贈るんですよ。だからお金は取りません」
「──っ!?」
ルティは、ボボボッと耳まで真っ赤だ。天竜狐族は『特別』という言葉にとても弱い。そして『贈物』という単語にも大興奮する。
「まあ、毛糸代などは金額によっては、ルティから借りる予定だったので、普通の贈物と少し意味合いが違うと言えば違うような……」
「私に贈るつもり……で?」
「(正確には副業ができないか考えたけれど、間違いではない。うん)そうですよ、ルティに贈りたいのです」
「私に贈物……」
その部分が重要だったのか、ルティはウットリしながら、まだ見ぬ贈物に思いを馳せていた。
「(あ、これって期待値が今ぐんぐんと上がっている感じ? こ、これはマフラー以外にも用意しておいたほうがいいかも?)ルティ、戻ってきてください。あと、ジェラートが溶けかけています」
そう言いつつ、この隙にスプーンで解けかけた部分を掬って食べた。んん、メロン味が濃厚だわ。口の中で蕩けて美味しい。
「シズクが……すっごく可愛すぎる。どうしよう、好き、世界一可愛い……! 伴侶になってほしい」
「ルティ、大丈夫……じゃないですね」
「シズクが日々可愛いのは事実ですから」
(自信満々に言い切った)
ルティは見ているこっちが恥ずかしくなるほど、私への好意を前面に押し出してくる。そして乙女のように恥じらうのだから、狡いと思う。
周囲の人たちは微笑ましく笑顔になって通り過ぎていく。敵意や殺意なんてなくて、ただ普通の恋人同士として見てくれていることが嬉しいし、安心する。
(しかもサラッと『伴侶になってほしい』って、それって天竜狐族的に……プ、プロポーズだったのでは!?)
「シズク?」
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