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おまけ:昼と夜のあいだで
昼と夜は、決して交わらない。
それが、私たち――ソラスとルナの約束だった。
私は昼を歩く。
太陽の下で、波の音とカモメの声を聞きながら、少年を探す。
彼の名は知らない。けれど、胸の奥に預けられた“響き”が、確かにそこにあった。
その響きが完全になる日まで、私は彼を導かなければならない。
私は夜を歩く。
月の光に照らされた森や街を抜け、少女を探す。
彼女の名は知らない。けれど、首元に揺れる鍵が教えてくれる――この旅は、終わりではなく始まりだと。
彼女が笑う顔を見たい。記憶の奥にある、その笑顔を。
私たちは決して同じ道を歩かない。
昼が沈み、夜が昇るとき、相手の足跡を追いかけるだけだ。
時には、互いの足跡がすぐそばに寄り添うこともある。けれど、それでも会わない。
会えるのは、すべてが揃った時だけだから。
そしてその日が来た。
扉の丘、朝と夜の境界で、私たちは向かい合った。
互いの首に掛けられた半分の鍵が、静かに震える。
昼と夜が溶け合い、二つの光が一つになる。
それは私たちが生まれた理由であり、最後の役目だった。
少年と少女が互いの名前を呼び、涙を流す姿を見届けて、私たちは静かに目を閉じた。
役目は終わった。けれど、またいつか――新しい二人が現れるなら、私たちは再び歩き出すだろう。
昼と夜は、決して交わらない。
けれど、この瞬間だけは――同じ空を見上げていた。