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プレゼンが終わってから数日。
社内にはようやく落ち着いた空気が戻っていた。
照と辰哉も、久しぶりに定時で帰れる日が増えていた。
────────
夕方。
時計が十八時を回る。
💛「終わった?」
照がデスク越しに声を掛ける。
💜「あとこれだけ」
キーボードを打つ音が止まる。
💜「よし、おしまい」
照は立ち上がる。
💛「帰るか」
💜「うん」
今では自然と一緒に帰るようになっていた。
誰かが誘うわけでもない。
気付けばエレベーターで隣に立ち、駅まで同じ道を歩いている。
────────
駅前の商店街。
仕事帰りの人で賑わっている。
歩いていると、小さな雑貨屋の前で辰哉が立ち止まった。
💛「どうした?」
💜「これ」
ショーウィンドウには、ガラス細工が並んでいた。
星や月、小さな動物。
その中に、小さな青いイルカがあった。
💜「昔さ」
💜「こういうの見ると絶対立ち止まってたよね」
💛「辰哉がな」
💜「照も付き合ってくれてたじゃん」
💛「一人じゃ店入れなかったから」
💜「そうだったっけ?」
💛「そうだった」
二人で笑う。
店には入らず、そのまま歩き出す。
でも。
昔の何気ない思い出を笑って話せるようになったことが、少し嬉しかった。
────────
駅へ向かう途中。
スマホが震える。
辰哉だった。
画面を見る。
母からのメッセージ。
「今度の日曜日、お父さんの誕生日だから帰ってこれる?」
💜「あ……」
照が横を見る。
💛「何かあった?」
💜「実家」
💜「帰ってこいって」
💛「帰るの?」
辰哉は少し困ったように笑う。
💜「うーん」
💜「久しぶりだから帰ろうかな」
照は静かに頷いた。
💛「親、喜ぶよ」
💜「照は?」
💛「俺?」
💜「最近帰ってる?」
照は少し考える。
💛「一年くらい帰ってないかも」
💜「そんなに?」
💛「忙しくて」
辰哉は呆れたように笑う。
💜「ちゃんと帰りなよ」
💛「そうする」
────────
改札が見えてくる。
今日はここで別方向。
照が右。
辰哉が左。
立ち止まる。
💛「じゃあ」
💜「うん」
少しだけ沈黙が流れる。
別れ際になると、まだ少し名残惜しい。
そんな時だった。
💛「辰哉」
💜「ん?」
照は少し照れたように視線を逸らす。
💛「今週末」
💛「時間ある?」
辰哉は目を丸くする。
💜「あるけど」
💛「話したいことがある」
胸が高鳴る。
その一言だけで。
照の表情は真剣だった。
💜「……分かった」
💛「土曜日」
💛「迎えに行く」
💜「うん」
短いやり取り。
でも。
辰哉には何となく分かっていた。
照が話したいこと。
それはきっと。
五年前に言えなかった、本当の続き。
土曜日まで、あと三日。
その三日が、今までで一番長く感じられそうだった。
コメント
1件
うわ、このタイミングで「話したいことがある」は心臓に悪い……! ガラス細工のイルカに立ち止まるやり取りから、自然に実家話になって、別れ際のあの真剣な一言。照の「迎えに行く」って言葉、五年前の続きを今度こそ言うんだろうなって察しちゃう。三日間が長く感じられる描写、すごく共感しました。続きが気になる!
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