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「なんだ、何もいないな。」
入る前は戦慄していたけど、入ってしまえば、特にどうということはなかった。
猛毒や魔獣の巣窟なのかと思っていたけど、実際は物音一つせず、石の建造物が羅列されているだけ。
恐ろしいものなんて何もないけど、不思議と不穏な空気を感じる。
…長い。半球に何かがありそうだと思って目指したはいいものの、やはりこのダンジョンは大きすぎる。
そろそろ目標まで半分は歩いたと思うけど、やっぱり代わり映えしない景色は好めない。
歩いていて気づいたのだが、ところどころ文字の書かれた石板がある。先駆者が書いたのか、ダンジョン固有の文なか。私には読めない文字で書いてあり、内容を理解することは叶わなかった。どこかで見覚えのある文字ではあるのだが。
「…あ!」
やっと中心部に辿り着いた。何時間ほどかかったのだろう。日は暮れてはいないものの、そろそろ空が紅くなり始めるころだろう。
…やっぱり、遠目で見るのとは臨場感が違う。
中心部には石の建造物がない、円状のゾーンがあり、その中心にその半球があった。
何かの魔導具の力だろうか。半球は地上から10mほどのところに浮いており、ゆっくりと回っていた。あの下に宝があるのだろうか。
…巨きい。
半球には曲面に模様が描かれていた。これだけ近くても、その模様を完全に見きることができないほど、繊細だった。
半球は鉄鋼のような素材でできており、表面は驚くほど滑らかだったが、太陽の光を反射することはなかった。
どんな職人にこんな芸当ができるのだろう。
足を進めると
ようやくダンジョンに”守られていたもの”を見ることができた。
「…魔導器?」
それは、腰くらいの高さの、小さな石台の上に置かれていた。
黒い球体。大きさはちょうど片手で持てるくらい。
形の精巧性でいえば、ちょうど頭上にある半球と同じ印象を受けるが、表面には模様がなく、ただの精巧な球体だ。
…綺麗だ。
光を反射していないせいか、それは背景とは雰囲気が乖離していた。まるで別次元にあるようだ。
これほど巨大なダンジョンの宝だというのに、相応の格は感られなく、それが逆に異質感を醸していた。
異質といえば、コレから 魔力を”全く”感じない。
魔導器や魔導器なら、魔力を放つのが当然だ。
ただの植物や動物でさえ、少量の魔力を纏っている。
その点で言えば、コレはそこら辺の小石と変わりない。
「…と、そろそろ夕刻かな。」
日が暮れれば 魔獣の活動が活発になる。
ずっと歩いていたせいで、体力も残り少ない。
残り数時間の間に、救助が来なければ…多分…。
命の 危機が目の前に迫り、体も疲弊しているというのに、不思議と 遺跡を引き返せば良かった。とは思わなかった。
なにか行動を起こすべきなのであろうが、不思議と”ソレ”から目が離せない。
空は既に紅くなっている。
「…リーニエ達に…会いたい…。」
…れ?体が、だるい。… 目がかすんできた。目が覚めた時は大丈夫だと思っていたけど。流石に蔦があるとはいえ、あの高さから落ちたダメージは体に蓄積していたのかも。
…もう、ここまでかな。