テラーノベル
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「……31番が生きてる」
俺は写真を握りしめた。
間違いない。
警察署の前に立つ男。
そのスマホに表示された番号。
**31**
「でも、どうして警察署にいるの?」
美咲が写真を覗き込む。
俺にも分からない。
ただ一つだけ確かなことがある。
31番は、まだ組織に捕まっていない。
「助けに行こう」
俺が言うと、美咲はすぐに首を振った。
「ダメ」
「なんでだよ」
「罠かもしれない」
「でも生きてる」
「だから危険なの」
美咲は写真を俺から奪う。
「31番が警察署の近くにいるなら、組織も知ってる」
「私たちが動けば、組織も動く」
「じゃあ、どうするんだよ」
「何もしない」
その言葉に腹が立った。
「31番を見捨てるのか?」
美咲の表情が変わる。
「違う」
「じゃあ何なんだよ!」
「今の私たちには、31番を助ける力がないの!」
声が響いた。
ネットカフェの個室。
狭い空間。
俺たちは黙り込む。
美咲の手が震えている。
「……私だって助けたい」
「でも」
「助けようとして、また誰かが死んだら?」
その言葉に何も言えなくなった。
美咲は視線を落とす。
37話。
あの男。
俺たちを逃がすために残った。
俺たちは助かった。
でも、あの人は――。
「だから、私はもう」
美咲がつぶやく。
「誰かを助けるために、別の誰かを犠牲にするのが嫌なの」
俺は写真を見る。
31番。
まだ会ったこともない。
顔も知らない。
それでも。
一度だけ。
俺に助けを求めた。
あのメッセージを思い出す。
**『お願いします』**
俺は立ち上がった。
「行く」
「悠真!」
「俺は行く」
美咲が俺を見る。
#狂人
🐈⬛˚ᯤ₊
88
211
榎本くもり
945
リユ
379
「何も分かってない」
「分かってる」
「罠かもしれない」
「分かってる」
「組織が待ってるかもしれない」
「それも分かってる」
それでも。
俺は写真をポケットに入れた。
「それでも、行く」
美咲は黙っている。
「組織を潰すために31番を見捨てるなら」
俺はファイルを見る。
「俺たちは、あいつらと何が違うんだ?」
その言葉に、美咲は何も返さなかった。
しばらくして。
小さく息を吐く。
「……本当に頑固だね」
「よく言われる」
「知らないからね」
「何が?」
美咲は少しだけ笑った。
「私も行く」
夜。
警察署から少し離れた場所。
俺たちは建物の影に隠れていた。
「いた」
美咲が指差す。
警察署の入口。
写真と同じ男がいる。
黒いコート。
スマホを持っている。
その隣に、もう一人。
誰かと話している。
俺は写真を見直す。
「……あれ?」
「どうしたの?」
「この男」
俺は黒いコートの男を指差した。
「どこかで見た」
記憶を探る。
そして思い出す。
「病院だ」
母さんの病院。
果物を置いていった男。
あの時。
受付の近くにいた。
「組織の人間……?」
美咲が息をひそめる。
その瞬間。
黒いコートの男がこちらを向いた。
目が合う。
「……見つかった」
男が走り出す。
「逃げて!」
俺たちも走る。
だが。
男は俺たちではなく――
警察署の中へ駆け込んだ。
「え?」
俺たちは足を止める。
男は逃げたんじゃない。
自分から警察署に入った。
そして。
数秒後。
警察署の入口から、一人の若い女性が出てきた。
俺はその顔を見た瞬間。
言葉を失った。
「……31番」
女性も俺を見た。
目が合う。
その瞬間。
女性の顔が青ざめる。
そして。
俺に向かって一言だけ叫んだ。
「来ちゃダメ!!」
その直後。
警察署の中から、複数の人間が一斉に走り出してきた。
俺たちを追っている。
31番も逃げ始める。
俺は走り出した。
「31番!」
彼女が振り返る。
その目には恐怖が浮かんでいた。
「どうして来たの!?」
俺は叫ぶ。
「助けに来た!」
31番の足が止まる。
その表情が歪む。
「違う……」
「私を助けたら……」
「あなたも終わる」
俺は立ち止まった。
31番は震えながら言った。
「私……」
「あなたのこと、知ってる」
「え?」
31番の口から出た次の言葉に。
俺の足が完全に止まった。
「あなたが応募する前から」
「ずっと見てた」
(第四十話へ続く)
コメント
1件
みぅです、読みました…🥀 第39話、まさかの展開に鳥肌が立ちました。 31番はまさかの女性で、しかも悠真のことをずっと前から知ってた…?しかも「見てた」って、何をどういう意味で? それに病院に現れた黒コートの男も怪しすぎるし、警察署が本当に安全な場所なのかも分からなくなってくる。 悠真が「俺たちはあいつらと同じになる」って言ったシーン、すごく響きました。正義って難しいですよね。 次が本当に気になる…!更新楽しみにしてます🤍