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米軍特殊部隊により完全に制圧された施設内。拘束された田中と理恵は、米軍兵士たちに連行されていた。一方、拓真と亮太は一時的に安全を確保されたものの、兵士たちに囲まれていた。
「俺たちを助けに来たって……本当なのか?」拓真が防護スーツを着た兵士に問いかける。
「それは正確ではない。」兵士は短く答えると、手に持ったタブレットを操作した。「まず君たちに知ってほしいのは、我々の目的は“世界の均衡を保つこと”だ。」
「均衡?」亮太がかすれた声で尋ねた。「どういう意味だ?」
兵士は冷静な声で説明を続ける。
「君たちが巻き込まれた計画――“ライカントロピー計画”――君たちの国だとアルファプロジェクトは、ある国際的な利権争いの一部だ。君たちの政府だけでなく、我々の一部もその計画に関与していた。」
「お前たちの一部だと?」拓真が目を細めた。「つまり、米軍もこの計画に加担していたってことか?」
「過去形で語るべきだな。」兵士は静かに言った。「我々の内部でもこの計画を危険視する者たちがいた。人間を兵器化する技術が普及すれば、世界は新たな戦争時代に突入する。我々の任務は、その引き金を引かせないことだ。」
「だから、この施設を潰しに来たってわけか。」亮太が吐き捨てるように言った。「俺たちを見捨ててもよかったんじゃないか?」
「君たちが生きていることが重要だ。」兵士は毅然とした態度で言った。「君たちは、この計画を知る数少ない生存者だ。その証言は、計画の全貌を暴く鍵となる。」
拓真はしばらく沈黙した後、問いをぶつけた。
「じゃあ、田中や理恵はどうなる? あいつらも証言させるのか?」
兵士は表情を変えずに答えた。「彼らはすでに不要だ。我々には別の目的がある。」
その言葉に、拓真は不安を覚えた。
「別の目的……?」
兵士はタブレットを操作し、施設の地下部分の設計図を表示した。
「ここには、ライカントロピー計画の“失敗作”と呼ばれるものが隠されている。彼らを捕獲し、消去することが目的だ。」
「失敗作?」亮太が疑念を抱きながら聞き返した。「具体的には何なんだ?」
兵士の声が低くなる。「狼男たちだ。計画の初期段階で生まれたが、制御不能になり、隔離されている。彼らが外に出れば、君たちが体験したもの以上の混乱が広がるだろう。」
その瞬間、施設の奥から低いうなり声が響き渡った。それは人間の声ではなく、獣のような咆哮だった。
「くそっ、もう動き出したか!」兵士が無線で指示を飛ばし始めた。「全員準備しろ! 拘束された実験体が暴走を始めた!」
拓真は拳を握りしめ、兵士に向き直った。
「つまり、あんたたちはここを片付けて、この地獄を隠すつもりなんだな?」
兵士はその言葉に答えず、武器を構えたまま静かに言った。
「君たちは我々の保護下にある。邪魔をするな。」