テラーノベル
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フィニスに襲撃され、落下していくリーンスガエラ。落下と同時にエレノアの魔法がピンポイントに直撃するであろう、落下地点とタイミング。共に完璧な奇襲だ。
『ぐっ……!!』
当然リーンスガエラもそのことは分かっているのだろう。持っていた炎のナイフをエレノアの魔法目掛けて投擲し、そのまま術式を構築。魔法を避けることから、対処する方向へ思考を転換させていた。
『そんな短時間の構築魔法じゃこの魔法は防げないわよ!』
力を使い果たし、両膝をついた状態のエレノアのそばを飛んでいるゼフィリアが叫ぶ。
飛んでくるプラズマに灼熱のナイフが届く。
バチンという大きな音と共に分解されるナイフ。
ドーン!
地面に落下し、舞い上がる砂煙の中膝をついているリーンスガエラ。
その彼女目掛けて、青白く輝く球体が、バチバチという大きな音と共にリーンスガエラを包み込んでいった。
⸻
パチッ……パチパチッ……
リーンスガエラに魔法が直撃。白い煙が立ち込めると共に、あたり一帯が独特な匂いに包まれる。
フィニスが木の枝から飛び降り、エレノア達の元へ駆け寄っていく。
「エレノア!大丈夫か?!」
両膝をついたまま顔を上げるエレノア。
「やっぱり歳ね……もう足にきちゃったわ」
その反応を見て、小さくため息をつくフィニス。そんな2人の周りをゼフィリアはくるくると飛び回っていた。
『どう?すごいでしょあれ!私も結構疲れるんだからね!』
耳元で嬉しそうに大声を上げるゼフィリアに、苦笑いをするフィニス。アルテアが治療をしているルミナが気になり、そちらに視線を送ろうとした次の瞬間……
『私を扇で吹き飛ばした時……そのまま反対側の扇で風を送り、そいつを飛ばしたって訳ね……』
「「!?」」
白い煙の中から聞こえてくる声に驚く2人。
『なんで?!あれを喰らって無事な訳……!!』
あの魔法を喰らってもまだ生きているリーンスガエラに驚きを隠せずにいた。
『プラズマだっけ?よく分からないけど……雷みたいな性質で助かったよ』
徐々に薄れゆく煙から現れるリーンスガエラ。自身の胸元にあるコアを守るため、フィニスが腕を切り落とした方の半身を犠牲に魔法を受けたのだろう。肩から先は崩れ落ち、魔法を受けた半身も黒く焼け焦げているものの、コアには傷ひとつついていなかった。
『だとしても……あんな落下の瞬間じゃ……あの魔法を防ぐような魔法や、対抗する魔法を発動させる術式構築の時間なんて……!』
『私は攻撃魔法も防御魔法も使ってない。そんな時間がないのは分かってたから』
ふわりと身体を浮かせるリーンスガエラ。
『落下の衝撃で舞い上がった砂埃に混ざるよう、私はただ簡単な術式の魔法で水蒸気を発生させただけ。あとは勝手に放電して、威力が落ちたみたい』
一気に冷たい表情へと変わるリーンスガエラ。
『さすがに……これだけやられたら……私もムカつくよね』
残った腕をフィニス達に向けるリーンスガエラ。空気が揺らいでいき、ひとつの炎が生成される。
「くそっ……!!」
『フィニス!ダメ!』
魔法を撃たせまいと駆け寄るフィニスにゼフィリアが叫んだ。
「ゼフィリア!あなたは帰りなさい!」
『なんで!そんな場……』
残った魔力を使い、ゼフィリアの召喚を解いたエレノアは、そのまま倒れ込んでしまった。
徐々に大きくなってゆくリーンスガエラの炎。間に合わないと思ったフィニスは、リーンスガエラの腕を切り落とした片方の剣を彼女目掛けて投げ飛ばした。
『2人を”殺さなければ”いいんだもんね』
身体を少しだけ捻り、コアへの直撃だけを避け、フィニスの剣により胸を貫かれるリーンスガエラ。今更こんな傷どうでもいい。そうとでも言うように、全く気にも留めず腕に魔力を込めると、生成された巨大な炎が鳥の形へと姿を変える。
「……くそっ!」
今までの隠匿するような魔力ではない。ただただ巨大で禍々しい魔力。それに気づいたアルテアがリーンスガエラの方へ視線を送る。
「!!?」
ルミナへは最低限の治療は施している。それよりも、あの魔法の直撃を喰らったら元も子もない。
「フィニスさん!下がって!!」
アルテアが大声で叫び、それに応えるようにエレノアの元へと下がるフィニス。
アルテアはルミナの回復を手伝ってくれた信者達の治療を中断させ、フィニス達の前方に全力で防護結界を張るように指示を送り、アルテア自身も結界を張ることに全神経を集中させた。
フィニス達の前面に展開される巨大な防護結界。それを見て呆れるように笑うリーンスガエラ。
『それじゃ、バイバイ』
灼熱の火の鳥が、世界樹の前に並んでいる全員を焼き尽くす勢いで襲いかかる。
パリーン!!
結界など一瞬の時間稼ぎにもならない。
「なっ!!」
咄嗟にエレノアを抱き抱えるようにして守ろうとするフィニス。
「……」
すでに膝をついて気を失っているエレノア。
「そんな……お姉ちゃん!!」
自身の結界がまるで紙屑のように破られる。目の前のフィニス達が炎に包まれるのを見て、フィニスのようにルミナの上に覆い被さるアルテア。
逃げ惑う者。最後まで抵抗しようと結界を張り続ける者。アルテア同様、ルミナを守ろうと身を挺して覆い被さる者……
世界樹諸共その全員を、灼熱の白い炎の鳥が包んでいった。
⸻
草木だけではない。ありとあらゆるものが焼け焦げた匂い。全身に火傷を負いながらも意識を取り戻したフィニス。
腕の中にいるエレノア。至る所が焼けただれてはいるものの、かろうじて息をしていることがわかり、その場にそっと寝かせる。
『あ、起きたんだ』
後ろから聞こえる声に、軋む身体を無理やり動かして振り向くフィニス。
そこには失った片腕を肘先まで回復させたリーンスガエラが、アルテア達のすぐ隣で胸に突き刺さっていたフィニスの剣をゆらゆらと揺らして立っていた。
「!!」
助けに行こうとするも、力が入らずその場で倒れ込むフィニス。
『あんまり動かないで。死なれたら困る』
原形を留めていないほど焼き焦がされた多くの信者の真ん中にいる、リーンスガエラ。
重傷のルミナが力を使ったのだろうか……ルミナの上に覆い被さっていたアルテアを含め、近くにいた数名の信者の肩が動いているのがわかった。
「やめろ……」
身体を引きずりながらアルテア達の元へ行こうとするフィニス。
『だから動かないでって……ん?』
少しだけ呆れた表情をしたリーンスガエラが、足元に気を取られ、視線を下に移す。
「……がい……」
『え?なに?』
足元から聞こえる声。アルテアにより治療をされてはいたものの、脇腹に穴が開き、全身火傷を負ったルミナが息も絶え絶えに何かを言っていた。
「私は……いいから……。この子……だけは……」
ぷるぷると震えた腕をリーンスガエラに向けて上げるルミナ。
『いや、そういうのいいから。……あ、そうだ』
そう言ってフィニスの方に視線を送るリーンスガエラ。
「おい……やめろ」
ゆらゆら揺らしていたフィニスの剣を、ルミナに覆い被さっているアルテアの背中の上でピタッと止める。
『これ……返しておくね』
「やめろー!!」
サクッ
力なく地面へ崩れ落ちるルミナの腕。表情ひとつ変えないリーンスガエラ。フィニスの叫びも虚しく、リーンスガエラはルミナと、その上に覆い被さるアルテアの身体を、フィニスの剣で貫いていた。
「……!!」
身動きが取れず、倒れているフィニスを無視しながら、ふわりと身体を浮かべたリーンスガエラが後ろで燃え続けている世界樹を見つめる。
『さすがにちょっとやりすぎたかな……アニタ様……怒ると怖いんだよね……』
そう呟いたリーンスガエラは、そのまま白い輝きと共に、歪んだ空間の中へと消えていってしまった。
コメント
1件
うわっ…第129話、めっちゃ重かった…。リーンスガエラ、やっぱりただ者じゃないな。落下中に水蒸気でプラズマの威力を落とすとか、頭良いし冷静すぎる。でも一番キツかったのは最後のルミナとアルテア…フィニスの「やめろー!!」が本当に響いた。世界樹も燃えてるし、この先どうなるんだろう。続きが気になりすぎるわ…。月白さん、今回も胸が締め付けられる展開をありがとうございます🔥
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羽海汐遠
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