テラーノベル
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「……これは」
「その、尊さんよく手帳持ってるじゃないですか。前に職場で使ってるボールペンが古くなってるって言ってたの思い出して……それで、それを見つけて」
「ああ、ちょうど買い替えようと思ってたところだ。ありがとな、恋」
「えへへ…っ、喜んでくれてよかったです」
安堵から小さく吐いた息が、幸せな形に溶けていく。
尊さんは愛おしそうにボールペンを取り出すと、その重みを確かめるように指先で握った。
「色も気に入った、使い勝手も良さそうだな。早速明日から使わせてもらう」
「はい、ぜひ!」
胸の中で安心と喜びが心地よく混ざり合う。
すると、尊さんが「次は、俺からだな」と言って、ジャケットの内ポケットに手をやった。
差し出されたのは、白銀の光沢を纏った、小ぶりな正方形のケース。
パールのような上品な輝きを放つ表面には、流れるような筆記体で赤いロゴが刻まれている。
「…えっと…これ、は?」
戸惑う俺の目の前で、ゆっくりとその蓋が持ち上げられた。
内側に広がる清潔な白の世界に並んでいたのは───
「ペアリングだ」
尊さんが静かに、けれど逃れられないほどの熱量を持って言った。
「へっ……?」
「……えっ!?」
驚きと、後から押し寄せてきた強烈な歓喜。
あまりの衝撃に言葉が繋がらない。
尊さんは慎重に二つのリングのうち一つをつまみ上げると、戸惑う俺の左手を優しく、包み込むように握ってきた。
「手、貸せ」
「は……はい」
言われるがままに差し出した俺の左薬指に、ひんやりとしたシルバーの感触が滑り込む。
ピタッと吸い付くように収まった指輪の内側には、小さな石が埋め込まれていて、照明を受けてキラリと瞬いた。
「え、指輪…こんな、ペアリングとか…も、もらえると思わなくて…えっ、ゆ、夢じゃないですよね…っ?」
「そんなに驚くか」
「だ、だって…俺、ただのボールペンですし、こんなに素敵なもの貰っちゃっていいのかなって…」
「前も言ったが、お前から貰ったものなら何でも価値があるんだよ」
尊さんは少し目を細め、慈しむような声で続ける。
「それに……会社じゃ関係は秘密にしてるだろ?だからたまには、こういうものをプレゼントしたいと思ったんだが…嫌だったか?」
「なわけないですよ!尊さん…っ、もう、なんか…大好きです」
今度はもう、涙を堪えることができなかった。
頬を伝う熱い雫に、尊さんの深い想いが重なって胸が苦しくなるほどに熱い。
コメント
1件
ちょ、え?ペアリングですか?! しかもつけるところ、左のく、薬指に... 尊い( ´ཫ` )