どうしてこんなことが始まったのか。それは渡辺自身にもわからなかった。
メンバーそれぞれから好意を打ち明けられ、断りきれずにいるうちに、誰とも自然と付き合っているような流れになり、それぞれが渡辺に愛を求め始めた。
求められるとつい応えてしまい、ここまでみんなとずるずると関係を続けて来てしまった。
他のメンバーに見つかったのは向井が初めてではない。
先週、目黒と岩本が衝突した。
渡辺は二人が取っ組み合いになるのを必死で止め、涙を流した。
結局その日は岩本の方に軍配が上がり、岩本の家へ連れて帰られ、激しく愛された。
手首にはその時ついた痣がまだ残っている。
明け方、泣いている渡辺を抱きしめ、岩本が言った。
💛俺だけのものになってよ
💙……ごめん、決められない
渡辺が悪いからもう会わないと言うと、どのメンバーもそれでも自分といてほしいと懇願するのだった。
渡辺はみんなの要求に応えているだけ。
意志がなく、ただ、流されているだけ。
渡辺のことが好きな男たちは、いつか選んでもらえることを信じて、渡辺のそばを離れないのだった。
誰かと二人でいる時の渡辺は可愛い。
仕事の時と違って、自分だけに甘えている。そのギャップに、みな、やられてしまうのだ。
それを渡辺本人が気づいていないところがまた周囲を唆ってしまう。
💙俺、もう行くね
渡辺はしゅん、となって控え室を出て行った。
邪魔をされた宮舘は不機嫌に椅子に腰を下ろす。
向井は信じられない気持ちでその場に佇んでいた。
🖤しょっぴー、今日は俺ん家来れる?
💙いや、阿部ちゃんと会うことになってて…
🖤じゃあ来週は?
💙来週なら行ける…と思う
🖤やった
目黒は後ろから渡辺に抱きついている。
渡辺は目を伏せた。
メンバー内の距離感が近いから、スタッフたちも見慣れてしまっていた。
収録が始まる。
目黒は渡辺の耳元で囁く。
🖤愛してる
と。
渡辺は何事もなかったように、照明を浴びてステージの位置に着いた。
個人の仕事が増えたのと反比例して、メンバー仕事が減って、みんなで会える機会が減った。
デビューから5周年。
渡辺はみんなで仲良く、揃ってファンに会いたいと繰り返し公言していて、スタジアムでのライブも近づいている。
そんな中の内情は、渡辺を中心とした八角形。それぞれが、渡辺を愛している。
正直、カオスだ。
💚翔太、好きだよ
💙俺も好き
阿部の優しい眼差しに、心が蕩けそうになる。
渡辺は阿部に尋ねた。
💙阿部ちゃんは、俺に決めてって言わないよね
💚何を?
💙俺を一人占めしたがらない
💚ふふ
💙俺のこと、好きじゃないの?
💚好きだよ
💙本当かなあ
嫉妬されなければされないで、寂しい。渡辺が不安そうにしていると、阿部は渡辺の耳を齧った。
💙ん…っ?
💚翔太はいけない子だね
阿部の手が渡辺のものを握っている。
愛されたばかりなのに、また、少しそこは熱を帯びていた。
💙ごめん…なさい
阿部は再び渡辺を愛し始めた。
コメント
6件
これ渡辺担💙しか嬉しくないだろ。 でもあっという間に書き上げてます。 どんどん上げます〜