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正式な警備員として任命され、警備業務をこなしていく日々に事更に数ヶ月。「ママ……」「大丈夫よ、大丈夫…………」
今日も二人は深夜に夜な夜な誰もいない暗闇の空間となっているあのピザレストランで警備をやっていく。もう着慣れた正服を着て物音さえ何一つない静寂に満ちたこの警備室に今日も入る。「ユリメア、ずっとよく眠れてないでしょ?無茶し過ぎないようにね、眠くなったら遠慮なく言うのよ?」
「分かってる……分かってる…けど、寝ちゃったらあの悪夢を見ちゃうの、夢の中に入ったら……私は…………おかしくなりそう……」
「辛いわよね、大丈夫。ママが傍に居るから。だから一人で怯える必要はないの、ユリメアは私の大切な娘だもの、娘を守るのが母親の役目だから」
「ママ‥………………」
ユリメアはぎゅっと抱擁してもらった。
「ママ………ありがとう」
「一緒に乗り越えていこう」
「うん…………………」
警備開始から数時間後………………
すると、ユリメアが突然しゃがみ込んで取り乱した。「あの子達…笑ってる、ガワの中に捩じ込まれたあの達の亡霊が私の事を誘ってる……嫌っ!!嫌……嫌あっーーーー!!」
「駄目よ、あの亡霊達の声を聞き入れたら……!」
「分かってる……のに…!」
警備中に徘徊する機械人形達には其々特有の行動パターンがあるのだが…「あれ……これまでの彼らの行動パターンと…何か違うような…」
「ええ、それにカメラ越しに私達を見ているようにも見えるわ」
動きが少しずつ俊敏になって警備室付近に近寄る事 が増え、彼らはユリメアに執着しているようだ。そしてこの機械人形達は想像もしなかった行動に出た。
「あれ……?、皆んな映らなくなった?」
「何処の監視モニターにも映ってないわね、……?もしかしたら……」と言ってマーティルはとある一室に目を向けた。
そこに映って居たのは……機械人形のガワの頭部を持った機械人形達の姿。
「ママ……怖いよ…何で…何で…あの子達は人形の頭部を持ってるの…?」
「彼ら、本格的に貴女を仲間へと誘い込もうとしてるみたいね」
「いや……嫌…!」
ユリメアは顔を監視カメラの映像から背け、彼らから視線を外した。最初こそは彼らの元へ、彼らとお友達になりたいと思って居たが、血塗られた真実を知ってしまい、死などには直面したくない。そう思った。
恐ろしい恐怖に追い詰められながらも、彼女は母親と共に警備の時間を生き延びる。
「あの子達……ずっとこっちを見てる…怖い……怖いよ…!!うう……」
「大丈夫、大丈夫よ。気をしっかり持って」
「…………う、うん‥……」
そうして二人は迫り来る、ゆっくりと這い寄る恐怖に怯えながらも警備を乗り越えた。
ーーー午前六事ーーーー
「今日の警備もようやくこれで乗り越えられたわね」
「うん‥………」
「ユリメア……あの子達の事が怖くなったのね、それもその筈、でもママが傍に居るから、ずっと一緒よ」
「ママ、ママっ……!!」
堪えていた恐怖心が絶頂に達して、思わず泣いた。警備を終え、自宅へ帰宅しずっと緊迫した空気感の中での警備の日々の為、帰った途端疲れが一気に押し寄せまた今日も一眠り……だけど、また悪夢に魘されてしまう。
「うう……うう……うう……嫌、来ないで……来ないで…!!」
ユリメアは悪夢に魘された事で飛び起き、冷や汗をかいた。
「はあ……はあ……はあ…………」
「ユリメア……大丈夫…?」
「ママ………私はもう……あの子達から逃げられないのかな、ずっと…あの警備室に居ても家に居ても、ずっと私の事を呼んでる声が聞こえてくるの……」
「ユリメア‥……」
マーティルはユリメアをそっと抱き寄せた。彼女を誘う血染めの影はもうすぐ傍に近寄っていた。そして……遂に、惨劇は繰り返されてしまうのだった。
それは警備をいつものように終えて家でゆっくりと休息を取っている時の事だった。「ん……うう、うう……、はあ私…何時迄悪夢を見続ければいいのかな、眠れないや……」
ユリメアは起き上がり、ふと窓の外を見た。
彼女は外を見た途端、背筋派が凍った。何故ならそこには、黄色いウサギの着ぐるみスーツを着た男性と、数体の機械人形達だった。
「え……何で……あの子達………私の家まで来てるの…?」
彼女は酷く怯えた。
何故なら、窓の外に居るメンツが以前彼女が母親に描いて見せた絵のまんまだったからだ。「怖い……怖い……悪夢で見た映像が………現実になってる……逃げたい……隠れなきゃ……」
「怖い…………」
彼女は恐怖心が一気に高まった事で余計に眠れなくなった。恐怖のあまり。布団を深く被って、彼らが去っていくのを待ったのだが、『おいで……友達になろうよ、さあ……おいでよ』
と機械人形達に宿っている魂達が彼女を誘う。
「いや‥………行きたくない…っ!!………死ぬのは怖いよ‥……!いや、来ないで…!」
そう叫び、もう一度彼女は窓の外を見た。だが、何故かそこには彼らの姿はなかった…出てこないから諦めて帰ったのかな…、そう安堵していられたのも束の間、彼女は「まさか……」と思いながら、けど何故か不思議と身体が無意識に動く。
彼女に近づいてきている存在が、あの絵の通り……だからついて行っちゃ駄目って事…分かってる筈なのに、彼女は何故か足取りを止めようとしない。
玄関に辿り着くと、ゆっくりとドアが開き、「やあ君を迎えに来たよ」
「えっ……と、貴方は誰なの……何でこんな時間に…」
「お話は店についてからにしよう、一緒に来てくれないかい?楽しいパーティをしよう、ほら君が大好きな機械人形も勢揃いさ」
「怖い……いや、ついて行きたくない………」
「朝方の時間で、周囲に声が響いてしまう。あまり大きな声は出したら駄目だよ」
「な、何する気なの…近寄らないで……」
突然家に現れた謎の男は彼女の口元に布を当て眠らされた。どうやら、睡眠剤が塗られていたようだ。
「さて、楽しいパーティを開く準備をしよう、彼女を車へ運んでくれ」
そうして彼女は眠らされた状態で、車に揺られ……次に目が覚めた時には、あのピザ屋だった。
「………ん………あ、あれ……此処は………」
ユリメアは睡眠剤で眠っていた眠りから覚め、またぼんやりぼやけた視界で辺りを見渡す。「やあ、お目覚めかな、ユリメアちゃん」
「貴方は……誰なの…」
「ああ、そういえば自己紹介がまだだったね」
彼はそう言って、そっと着ぐるみスーツの頭部を外し、そして黒い受話器を手に持ち、「ハローハロー?」と。
何処かで聞いたフレーズだった。そう……彼こそ、「もしかして、貴方って…あの録音電話の音声の人……?」
「ああ、そうだよ。あれは事前に私が録音しておいたものさ、何より君と君のお母さんの警備の仕事ぶりもよーく遠くからずっと観察していたよ」
「何で、此処に急に私は運ばれたの…?」
「此処で君の歓迎パーティをする為さ、彼らとお友達になりたいんだろう?今日がその日という事だ」
「パーティ……?」
「ああ、そうさ。機械人形達と共に戯れ、ピザを食べて一緒に歌も歌う、素敵な事だろう?」
「まあ、戯れの最中に噛みつき事故が起こるだろうが、それも貴重な体験になるだろう、さあ……」
「………………………」
そうして、男に言われるがままに不気味なパーティの時間を過ごし、けど……怖い筈なのに何故か、不思議な気持ちも同時に湧いてくる。
「どうだい?パーティは楽しいかい?さあ、次はとっておきのサプライズを君に送ろう」
「嫌‥……嫌‥……!!」
「何故拒絶するんだい?友達になれたら永遠にアニマトロニクス達と離れる事はない、まあ記憶や自我はアニマトロニクスに乗っ取られるが…そんな苦痛なんて一瞬さ、同じ空間で同じように過ごす、遊び相手がくるまで同じ事の繰り返し……」
そうその男は言い、また頭部を被り、更には機械人形の頭部のガワを用意し…「さあ、ガワと一つになれば、君も晴れてこのアニマトロニクス達と同じ存在になり、ずっと離れる事などない。ほら、此処に君が入るガワもある、さあ………」
「嫌‥………嫌‥……っ…!ママと離れ離れになりたくないよ…!お願い…やめて……、死ぬの……怖いよ…!」
「ああ、一応言っておくが‥‥どれだけ叫んで助けを呼ぼうが無謀だよ、だってこの部屋は施錠してある、だから逃げられもしないって訳さ」
「そんな‥……開けてよ……!」
と彼女がかなり抵抗しているのを見て、痺れを切らしたのか、彼はアニマトロニクス達を操り、彼女はアニマトロニクスに固く拘束された。
「っ‥……!!、皆……離して……っ!うう……! 」
「さあ、この機械人形達と一緒の仲間になるんだ、こいつらも友達が欲しくて仕方がないんだ」
「いや‥……来ないで…被りたくない……、それにママと離れ離れになるのは嫌だ!!お願い……嫌っ‥……!」
「これからは皆、ずっと一緒だ?」
「いや‥…………いやあああああっ…!」
そして、彼女は機械人形に肩を噛まれ、更に腹を貫かれ…追い討ちを描けるように男からはナイフで何度も、何度も刺され刺殺された。
返り血が飛び散り、出血多量で意識が朦朧としていく中、彼女はフレディーにぎゅっと掴まれ、ユリメアは『とあるアニマトロニクス』のガワへ押し込まれた。
ガワは、所謂内骨格と呼ばれ、中には無数の動線やワイヤーが張り巡らされており、彼女の身体に無数の剥き出しのワイヤーや動線が食い込んで、身体が圧縮される。
「さて、これで後は君の魂が機械人形の身体と合わさり、取り憑くのを待つだけだ……完璧なる機械人形の実現を、私は決して諦めない…‥」
「置いていかないで…………痛い‥……痛いよ………此処から‥……出し……てよ」
彼女が殺されてしまった次の日、「ユリメア、調子はどう?、………ユリメア……?」
彼女の声が聞こえてこない、不自然に思ったマーティルは家の部屋中全て見てみるも彼女の姿は見当たらなかった。
「どうして‥………あの子が居ない、一体何処に消えたの…?」
「ユリメア‥……」
娘の突然の失踪……その後警備はマーティル一人であたる事になり、そして突然と起きた行方不明の事をあのピザ屋の関係者であるジュディアに相談した。
「…………そうだったのね」
「ねえ、ユリメアを探すのを手伝って欲しいの、何か心当たりはない?」
「協力は良いけど、行方を探すなんて事もう無意味だろうし、もう何もかも手遅れよ」
「え………?それってどういう事…」
「また事件が再来した…、っていう事はユリメアちゃんを拐ったのは間違いなく彼しか該当者は居ない、あの頃の惨劇が繰り返されてしまったのよ、こうなる事は最初から仕組まれてたって事」
「え…………??」
「最初から……この時を実行に移す為に、影にずっと潜んでいたのよ、それに貴女達を態々親子で警備員として採用するように我々に命じたのも、きっと彼の思惑通り……」
「じゃあ、つまりはあの手紙から、全て……あの子を殺害する為に私達は……警備員として勧誘されていたの…? 」
「ええ…………でも、何れにしても事件だとしても都合上全て…命が失われた、そんな事態が起きようが不慮の事故で、処理されてしまうのが実情…残念だけど誘拐されたって事は確定事項、つまり、貴方の大切な娘さんはもう……」
「……………もうどんなに無惨な姿でも良い、あの子に会いたい……」
と、もう生きていないという事が確定してしまっていても、それでもまた娘に会いたいと、親として切実な思いを漏らす。
「駄目よ、もしかしたら貴女まで死んでしまうかもしれない…それに会いに行ったところで、貴女の知るユリメアちゃんの面影はないに等しい、それでも行くというの?」
「それでも良い、それでも私は…‥ただあの子にもう一度会いたい、ただそれだけよ」
「…………分かった……だけど、あの場所に立ち入れるか、わからないわ」
「…………どうにかしていけないの…?」
「それに仮に入れたとして、彼女はこれまでの事件の被害者と同様なら機械人形のガワの中に押し込まれてる、機械人形はロックがかかって、その解除方法は技術者しか知らない。外側はおろか内側からも出る事は出来ない仕組みになっているのが、あのピザ屋の機械人形の仕組みよ」
「そんな…………」
こうして月日は過ぎて、だけど月日がどれだけ経っても、大切な娘を突然失った悲しみは記憶からも、胸の奥からも消える事はなかった。
「ユリメア、貴女は一体何処へ旅立ってしまったの……何で……何で……」
深く抉られた悲しみを背負いながらも、亡き人となった娘の事を不意に思い出しながら、警備を続ける。
「ユリメア…………貴女の分まで、ママ頑張るからね。見守っていてね」
警備を続けつつ、引き続き同僚の仲となった ジュディアから娘を殺害し、死体を遺棄した『犯人』についての情報を得る事にした。
「なるほど……それで、情報を知りたいと……」
「ええ、貴女何か情報を知ってるんでしょ?知りたいの、事件を過去に何度も引き起こしていた張本人、『彼』という存在について…」
「そうね、惨劇がこうして再来してしまった以上、言わない理由も隠しておく理由も無くなった…ええ、教えるわ」
「ありがとう」
「単刀直入に言うと、貴女の大切な娘さん‥…ユリメアちゃんを誘拐した末に殺害した人物……それはこのピザレストランで、アニマトロニクスの技術者を担当していたウィリアム・アフトンよ」
「ウィリアム・アフトン…??」
「ええ、彼はこのフレディーファズベアーズピザで機械人形達の技術者担当で娘を持つ父親だった、けど……彼は数々の事件を繰り返してきた凶悪な犯罪者でもあるわ」
「え…………まさか、これまでの事件、そしてあの子を攫って殺害した犯人って…」
「彼で間違いないでしょうね、彼は完璧な機械人形を創るという理解し難い思想を理念として掲げていた…ユリメアちゃんはその新たな犠牲となってしまったって訳よ」
「…………あの子……あの子はもう…」
「受け入れ難いのは承知だけど、残念ながら……」
詳しい犯人の情報を得たマーティルはその後、自宅に帰ってはまた悲しみに暮れた。最愛の娘を突然と失った悲しみはそう安易に消え去ることは出来ない。「あの亡霊の子供達とお友達になっちゃったのね、いつかどんな姿でも構わないから、もう一度‥…貴女に会いたいよ」
「……………………」
突如として訪れてしまった悲しみの別れ、だがこの誘拐殺人事件をきっかけにあの男が理念として掲げている『完璧な機械人形を造る』という思想は再び大事件となって再来する事だろう。
「ユリメア……貴女を失ってから、貴女の事を考えない日はないわ、貴女の事を助けられなくて……ごめんね…………」
マーティルは亡き娘の懐かしき頃の写真を見てそうぼやいた。悲しみを超え、それでも乗り越えなきゃ、その一心で夜間警備を続ける。
「貴女の事を思い出しても、もう涙は流さないって決めたのに…駄目駄目ね……」
娘を葬った存在、完璧なる機械人形を作りだそうと彼は数々の幼き命を奪い、その魂が機械人形に乗り移って、だから不自然な稼働を起こすようになったのだ。
『噛みつき事件』、『誘拐殺人事件』、そんな血塗れの闇が多く埋もれているピザ屋で、またも繰り返されてしまった悲惨な事件。
また、一人の尊い幼き命が犠牲になった…母親が悲しみに暮れている最中、彼女は誰も訪れる事ない、閉ざされた部屋で身体が朽ちていく経過をゆっくりと待つのみ……。幼き命野時は‥突然止まった。
そして気付けば、あの事件から数週間が経っていた。
「ユリメア…………ごめんね…」
「ママ………私を……見つけて……」
幼き彼女の命は何れ、取り込まれた機械人形と融合し、身体も腐敗しゆくだろう。あの機械人形と『お友達』に、同じく幼くして死んだ子供達の元へ、旅立った。
「ふふっ、やっとお友達になれたね。ようこそ、此方側へ」
彼女の死を始めとし、それは狂い始める。全ては……完璧なる機械人形を作り出す為に。
「さようなら……ママ」
無理矢理身体を捩じ込まれた機械人形のガワの中で内骨格のワイヤーが食い込み、全身が更に血塗れになって、次第に冷たくなっていく身体に、時が溶け去っていくごとに彼女は…死んでいく。
そして、また‥…………………。
「私を………見つけて…………」