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私の強い言葉に、「え?」と、柿原さんは目を丸くさせる。
「柿原さんの大事な身体を軽々しく傷つけて欲しくありません」
「そんなの……私、そういう目でしか、」
「見られてなくても、です。どんな事があろうと、きちんと私に話してください。お願いします」
丁寧に頭を下げると、少し間を置いて、分かりました、と、彼女は了承してくれる。
……私がもし、こんな無表情な女じゃなければなぁ。
早々に素をさらけだして、何でも話してくれるような取っ付きやすい先輩で居れたら、柿原さんに無鉄砲な行動をさせずに済んだのに。
その不甲斐なさばかりが胸を突き刺して、悔しさで涙が滲んだ。
「穂波さん、本間さんの事は私が勝手にやったので、気にしないでくださいね」
「……いえ、全て私の責任です」
「……ごめんなさい。でも、常葉さんは余計な心配は必要なさそうですから。安心されて下さい」
不安を拭うような言葉が聞こえるので、「本当ですか?」と、真意を問い詰める。
「私のアプローチに全然靡かないですよ?それにあぁ見えて意外と仕事一筋な人だから、女性関係の話も聞かないので眞鍋さんとの婚約話が出回ったらしいですよ」
……そうなんだ。
確かに、受付は噂が集まる場所だって言っていたし……彼女の言葉には信憑性がある。
その言葉を受け止めて、ちら、と、柿原さんの顔を覗いた。
「……昨日は楽しかったですか?」
「はい。普通に。私は途中で帰りましたけど、常葉さんは?」
「…22時過ぎ……でしょうか。顔出すだけって聞こえたのに意外と遅かったなぁと」
「あぁ、あれは、常葉さんが居たからあのプロジェクトが穏便にまとまったからですよ」
初めて聞く事実に、「常葉くんが?」と問いただした。
「終盤、割と難航してたのに常葉さんが先方の意見を汲んで下請け纏めて、根回ししたから進んだって話してましたよ。お酒飲まずに早く帰りたい雰囲気出してましたけど、引き留められてて」
「そうなんですね。すごいなぁ」
「出世コースは間違いないみたいですよ」と、柿原さんは目配せする。
カッコイイし若いし、仕事もできるなら、飽きたら捨てられて、すぐ違う子見つけそうだな……。
「穂波さん、自信ないんですか?」
常葉くんといい柿原さんといい、どうして簡単に見透かすのだろう。信じられなくて、え?と目を丸くする。「心の声漏れてますよ」
「え、え?本当に?」
「穂波さんって、常葉さんの事になると表情崩れるんですね」
嘘、崩した覚えはないのに。と、急いで頬を抓って目に力を込めた。
「だって……未だにからかわれてるだけと思う時がありますし」
それに、と、言葉を続けようとしてやめた。
こんな情けない事を、これ以上知られたくないと思ったからだ。
だけど柿原さんはそんな私を横目に、くすくすと綺麗に笑ってみせる。
「因みに常葉さん、昨日、みんなから相当怒られてましたよ?」
「どうして?」
「穂波さんに飲み会の事伝えるって言って伝えてなかったからですよ」
「……え、そんなの一言も……」
「それも私が思うに、多分」
含んだように彼女は微笑むと、口を手で囲い耳にそっと寄せた。
だけど私は彼女が聞かせた言葉に「…………え?」と、間抜けな声を出すしか出来なかった。
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#ワンナイトラブ
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