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ツミコは淋しそうに笑いながら天井を見上げている、恐らく涙を堪えているのであろう……
そんな彼女に善悪は言った。
「約束…… その約束をしてからは、えっと…… ツミコさんも叔父さんを助けなかったので、ござる、か?」
ツミコがキョトンとした顔を向けて答えた。
「いいや、昼夜が勝手にやっていた事だからね、アタシはそんなの関係ないって開き直ってガンガン助けてたね、不良に絡まれてる時とかさ、特に成人後、聖女と聖戦士になってからはそんな事言ってられないからね、それは善悪アンタだって分かるだろう? チームだからね、その頃には昼夜も普通にアタシを庇って怪我したりしてたしさ、お互いに背中を守り合うんだから当然だろう?」
善悪は顎の前に手を置いて何やら考え込んでから、再びツミコに問い掛けた。
「ツミコさん、その約束以外に、そのぉ、ツミコさんと叔父さんの間に約束みたいなものは無かったのでござるか? それこそ、ほら、パーティーのモットーだとかぁ?」
「モットー? ふむ、そうだね? アタシ等二人と今アンタんとこにいるゼパル達のパーティー名は『守護者(ガーディアン)』て言ったんだけど、モットーって言うか、討伐に出掛かるときの合言葉は、『人々の為、自ら戦えぬ人の為、命を捨てて戦おう』だったけどさ…… な、なんか青臭くて恥ずかしいわねぇ、でも、それがどうしたの?」
「いや、良く分からなかったでござるが、最後に限って久しぶりにシロツメクサを残した事が気になったのでござるよ、直接手渡してもいないでござるし…… いずれにしてもその栞は叔父さんがツミコさんに残したものでござる、お渡しできて良かったでござるよ! ………… あと、その、元気を出すのでござるよ」
「ん、ああ、さっきの? 大丈夫もう慣れっこよ! それにね、そんなに辛い事ばかりでもないのよ、それなりに楽しい事もあるんだから!」
そう言って微笑んだツミコはドアの方に目を移すと善悪に言うのであった。
「誰かこっちに向かってきてるわね、ほら窓から出なさい、ここに来てたってばれるとアンタまで変に勘ぐられてとばっちりよ! 急ぎなさい、それと、ありがとね善悪」
「りょ! んじゃサンダル借りるでござる、ドロン、でござる」
善悪が窓から出て、すぐ脇の壁にその身を隠すと同時に、ツミコの部屋のドアが開き明るい声が響くのであった。
「ほれ叔母さん、お寿司としょっぱそうな料理持ってきたわよ、ケーキとかよりツマミになりそうな物のほうが良いでしょ? ここに置くわよ! 足りなかったら気にしないでアッチに戻ってきなさいよぉ、ん、綺麗な栞ね? 乙女チックじゃない、なはは、んじゃあね」
ずかずか入ってきたコユキの声を聞きながら、玄関へと回り込んだ善悪がサンダルを揃えていると、丁度ツミコの部屋から戻って来たコユキと鉢合わせになる。
「善悪、アンタ……」
「あー、えーと、ちょっと表に────」
「トイレって立ちションだったの? 汚いわねぇ~、アンタも大概昭和よねぇ! 善悪少年もすっかり中年よねぇ♪ ケラケラケラ」
なるほど、そりゃそう思われても仕方が無いシチュエーションだわな、善悪もそう思って言うのであった。
「うん、ごめん、えっと、開放感がね…… スマソ……」
「もうっ! しょうがないわね~、下品なんだから~、ほら! 手をしっかり洗って…… さっ! 戻るわよ!」
「う、うん そうだね、えへへ」
二人が戻ったイベント会場は、本格的に盛り上がって行くのであった。