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「「うわあぁ♪」」


 リエとリョウコ、コユキの可愛い可愛い妹達、三十代のおっかさん、ママン二人がティーンエイジャーのような声を上げて喝采を上げたのは、善悪謹製の逸品、おめでとうお義父さん2021春バージョン、デコパウンドケーキの美しい姿に向けてであった。


『Happy Birthday ヒロフミ殿 』


パウンドケーキの上に掛けられたナパージュの光沢の上にアーモンド色で達筆に書かれたバースディメッセージが、的(まと)、それもど真ん中にクリティカルヒットしたようである。

隣に座っているコユキも冷静ではあるが、賞賛の声を上げた。


「うん、英字やカタカナは兎も角、『殿』は凄い、いいや凄まじいわね、『殿』よ『殿』、アンタやっぱりレベチよね! レベチっ!」


絶賛であった。


「いやあ、普通に作っただけでござるが…… そう? 凄い? なはは、調子に乗っても良いでござるか? ぬふふふふ、でござるっ!!」


嬉しそうである、良かったね。

喜んでいる善悪に、まるで水を注すかのようにコユキは言うのである。


「んでも、皆で分けたらほんの一口ね…… 悲しいわ、アタシの相方がこんな…… 惨(むご)い仕打ちをするなんて…… ね……」


充分大き目のパウンドケーキを前にして、この図々しい発言、流石はわが祖母、コユキ婆ちゃんである!

思わず胸を張ってしまう私、観察者であった、胸無いけどね。


善悪爺ちゃんがニヤリとしながら返した。


「ふふん、そう来ると思っていたのでござる! 故に昨日帰ってから新たに生み出して置いたのでござるよ! ババーンっ! はいっ! コユキ殿専用のロールケイクお代わりバージョンでござる! お食べあれぇ~」


みんなの視線が善悪が新たに取り出したロールケーキに注がれる。

先程のデコパウンドと同じく、光沢のあるナパージュの上に描かれた文字に注目している、その文字は……


『Love Forever』


シンプルだが直球の告白が描かれていたのである。


「「んキャャアァァー!! スッゴイ! ロマンスティックぅ!」」


最早一卵性双生児か? と疑うレベルで声を合わせるリエとリョウコ。

宴は最高潮の盛り上がりであった。


「い、いや、ヒロフミ殿のお誕生日を祝うためのメッセージを書くための練習、そう只の練習の為に腕慣らしで書いただけでござるゆえ~、深い意味など無いのでござるよ~、っていうか何か意味あるのでござるか? このバテレンの文字列に?」


この言葉は、無論、大嘘である。


そもそも、コユキに父ヒロフミ用のパウンドを持たせて送り届けた後に、新たに焼いたロールケイクが練習だったとしたら時空理論がおかしくなってしまうのだから……


「エーあんな事言っちゃってぇ? ねぇリョウちん、可笑しいよね? 一定方向にだけ進んでる時空の中では、ねぇ?」


「うん、そうだねぇ~、これってぇ、コユキの為にぃ~、態々(わざわざ)作ったって事だよねぇ~、時空理論的にぃ~?」


面倒臭い妹たちであった、家庭内お誕生会の場で時空理論とか言ってんじゃないよ、全く!

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