「水の呼吸」
「羊の呼吸!」
八剱は自分の基本、水の呼吸を、わためは自身で開発した羊の呼吸を繰り出そうとする。
「はっ!水の呼吸はともかく羊の呼吸だぁ?そんなもんで俺を倒せると…思うなよ!」
技を繰り出す前に、黒い黒雷が響き渡り、二人の間を通過し、わための腕が激しい鮮血を上げる。八剱も、切り傷を食らったようだ。
「わためさん…!」
「……」
無限城を一望できる、吹き抜けの部屋を歩いていたのは、金髪の術師、七海建人である。この城の変化にも問題なく対応する、敏腕術師の一人だ。その時、再び琵琶の音が響き渡り、床がぬける。落ちた瞬間に、足元の照明が怪しく点灯し、落下場所。美しくもどこか閑散、不気味な無限街を映し出した。
「ぐっ…!」
次に七海が落ちたのは無限の街であった。そこにいたのは、荼毘ーの、生首、瀕死の伊黒、クロヱ、そして荼毘の生首を高らかと持ち上げていた上弦の参、猗窩座であった。
「ほぉ…今日は宴のようだな」
「……こちらは命日となりそうなのですが」
その時、伊黒が再び立ち上がる。
「誰かは知らぬが助太刀を……頼む!この女を守りたい…」
「わかっています!」
幸い、七海の術式、瓦落瓦落は、障害物の多いこの空間では、相性が良い。
「瓦礫に沈め。鬼王よ。」
「破壊殺・虚空!!」
猗窩座が自身の体を自傷する。その瞬間、殴った跡からボコボコと肉片が吹き出し、肉のよろいが猗窩座を包み、先ほどの背丈の倍ほどになる。
「はっ!これが俺の完全体、肉片の鎧!!」
「なっ……おい金髪!俺が隙を作る!そのうちに…」
「隙など作れるのか?」
振り返ると肉片の鎧が拳を伊黒に向ける。
「満身創痍のこの状態でか!?」
ドオン!!という破壊音と共に伊黒が屋敷のような建物にぶつかる。
「……もう意識を失ったのか?」
伊黒の頭を掴み上げ、左脚を絞り上げる形にする。
「これが巨体になったメリット!!」
ギギギ……!という音と共に締め上げられる。
「破壊殺・録嗚未!!」
「ぐああああ!!」
「これは……まずい!!」
まさに肉の巨人となった猗窩座をはるか上空から眺めている2つの人影があった。
「ふむ……彼は、呪霊操術の範囲におけそうだな。」
「夏油ー、オレいっていい?」
一人は袈裟姿にデコに縫い目、前髪が垂れているのが目立つ男、夏油傑。の、姿で受肉し、今世に降り立った呪詛師、羂索であった。そしてその隣で梁に足をかけて座っていたのは灰色や紺色の髪色に体中のこれまた縫い目が目立つ人型の呪霊、真人であった。
「もう少し眺めていよう。無為転変が無限に再生可能な鬼の肉体に効くのかは気になるが、最後に勝利を収めるには漁夫の利が大事なんだよ、真人ー」
すぐ横を振り向くと、すでに真人の姿はなく、無限城を落下しながら、無限街を目指していた。
「ったく……、私は先に行ってるよ」
実は、巨漢になった猗窩座にもデメリットはあった。羅針盤の範囲が狭まったのだ。それでも猗窩座には十分七海の攻撃をいなしながらも、伊黒をいたぶる実力はあった。それでも彼は慢心していた。勝利を確信し、伊黒に決め技をかけるか、悩んでいたとき、後ろから冷たい手が確かに触れた。
「!?」
「無為転変」
七海もよく知る真人は、クヒッという趣味の悪い薄ら笑いを浮かべて、術式を発動した。
「はい、終了」
「馬鹿…な!?」
その瞬間、静かに肉の塊が変形を開始した。
「くそっ!!こんなはずでは!!!」
そういいながらも、猗窩座の肉体は確実に崩壊へと向かっていた。
「さて……次は君、七三術師君、……と言いたいところだけど、さすがに夏油に怒られちゃうかなー」
「!!待て!」
真人が床に触れると、その床も音が無しに崩壊を開始し、そのひずみで空いた穴に去っていった。
「何だったんだあいつは…!」
その時、すでに魂の破片と成りかけていた猗窩座の肉体が、静かに、確かに動き始めていた。
「俺は……まだ…!」
(なんで……!?何故なんだよ…!)
獪岳は目の前で信じがたい光景を見た。百以上の切り傷を受けている。自慢の角にも少しヒビが入りかけており、いくら一つ一つの傷が小さくてもとうに倒れているはずだ。それでも、立っている。隣の八剱はもう戦闘不能だが、わためは立っている。生身の人間がだ。
「なんなんだよ…!早く倒れろよ…!」
「倒れないよ……信念がある限り」
「くそっ!!」
(俺は……まだ死ぬわけにはいかねえ!)
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ホロライブと鬼滅最高!👍