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第十五話「嘘と真実のフランベ」



🔪ミトラの料理帳


路地裏のマンション、302号室。

壁一面が真っ白な“言葉のキャンバス”と化していた。


そこに立つのは、ミトラ。

金縁の眼鏡が光を受けて鈍く反射し、

銀髪はピンで左右対称にまとめられ、動きの一切を排した装い。


整った姿勢、感情を消しきった目。

そのすべてが“人形のような完璧さ”を思わせる。


ミトラは壁に向かって、黒いインクで一行をしたためた。


「この部屋には、すでに死体がある。」




――すると、“何もなかったはずのクローゼット”から、血の匂いが漂ってきた。





🔪スケアリーの実況「言葉で作る即席シチュー」


「はああああああっ!!!」


スケアリーは声にならない歓声を漏らし、壁に額を押し付ける。


「これだよこれだよこれだよッ……!!」


「言葉ひとつで、現実がグツグツ煮えたぎる!

まるで**“文字を煮詰めて作ったシチュー”だよ!!!」**


ユリウスが目を細める。


「……もう“嘘”ですらない。現実そのものを書き換えてる。」


スケアリーはワインを一口。

「うん……“ウソの香り”がする。」


「だがこれは悪質な偽物じゃない。“演出された誤解”じゃない。」


「本物の“嘘”という名のソースで現実を覆い尽くす……」


「……そう、これが“真実のフランベ”だよ!!!」





🔪殺人予告と現実


ミトラはノートを開く。

ページには淡々とこう書かれている。


「彼はミトラのことを恨んでいない。

彼はミトラを信じている。

だから、彼はミトラに殺される。」




そしてページを閉じると、ノック音が鳴る。


扉の向こうに立っていたのは、

若い男。営業マンらしいスーツ姿。


「こんばんは、ミトラさん。…お久しぶりです。」


「うん。久しぶり。」


ミトラは静かに応え、

テーブルに紅茶を二つ並べた。


男は迷いなく座り、紅茶に口をつける。


「僕、まだ……君のこと、信じてるよ。」


数秒後、彼の瞳から光が抜け落ちた。





🔪スケアリーの食レポ「信頼という下味」


「ううぅ~~~~ん、来る、来る来る来るッッ!!!」


スケアリーは目を見開き、床に這いつくばって呻く。


「信頼を“調味料”に使うなんて……

なんて……人間を美味しくする手法なんだッ!!!」


「これはもう“思い込みスパイス”だよ!!」


「相手がミトラを信じている――それだけで、

毒も罠も成立してしまう!」


ユリウスがぽつりとこぼす。


「彼女は、相手の“信頼”すらもレシピにしてるのか……」


スケアリーが狂ったように拍手する。


「うんうんうん!! 信頼とは、つまり“調理される覚悟”のことだよ!!」





🔪言葉で綴る死のパズル


ミトラはページをめくり、こう書く。


「この殺人は事故として処理される。」




そして立ち上がり、窓を開けて夜風を受けた。


「――終わり。あとは、現実が勝手に料理してくれる。」


彼女の背中は整いすぎていて、人間の曖昧さが一切なかった。





🔪京麩の興奮


別の空間で、京麩=スケアリーはつぶやいた。


「嘘を書いて現実にする。現実を支配して完全犯罪にする。」


「これは――」


口元を綻ばせ、震えるように言った。


「これがスケアリーイズム……!!」






次回 → 「文字の皿に盛られた死」



スケアリーイズム - 完全犯罪のレシピ

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