テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
身体中がズキズキと痛み悲鳴をあげている
ここは……?
目が覚めると、柔らかなベッドの上で寝ていた。
そうだわ、確か落ちたのだった
「気がついたか?」
耳障りの良い穏やかな声が聞こえる。
自分に向けられた声なのかと思い、ゆっくりと声のした方向へと顔を動かす。
「痛っ…」
首を少し動かしただけなのに、まるで電流が流れたような感覚が走る。
「痛むのか?」
声と共に、遠慮がちに触る手の温もりを顔に感じた。
大きな手が私の顔を優しく撫でてくれる。
その手に触れられるだけで、痛みがスーッと波が引くように消えていった。
優しい手の主は気遣わしげな表情で見つめてくる。
流れるようにサラサラとした漆黒の長い髪を、ゆるく一つに束ねた若い男性だった。
師長様と同じようなローブを身に纏っており、長いまつ毛に黒曜石のような瞳が印象的だ。
(かっこいい……)
思わず心の声が漏れる所だった。
心臓が早鐘を打っている
ばちっと目があった瞬間に、心を鷲掴みにされたようだった。
直視できないほどに綺麗な男性だったというのもある。けれど、単にその理由だけではなくて、自分でもよく分からない妙に落ち着かない感情が溢れてくる。
自分の感情も、今の状況も、全てが整理できずに言葉に詰まっていた。
「声がでないのか?
まだ痛むだろうが、じきに治まる」
『は……い……』
やっとのことで絞り出せたのは、肯定の返事のみだった。
「話せるのだな。巻き込んですまなかった」
男性はベッドの傍にある椅子に腰掛けたまま、深々と頭を下げる。
私は、何かに巻き込まれたのだろうか。
『私は、散歩していたと思うのですが…』
「こんな所に人がいるとは思わなかったのだ。この辺りは滅多に人は通らない。」
憂いを含んだ眼差しで私を見つめながら、男性は訥々と語り始めた。
どうやら男性が魔法で作った穴に、私が落ちたということ。
意識不明で酷い怪我だったので、早急に応急処置をしてくれたこと。
治療により傷は消えているが、痛みの感覚は残ってしまうということを。
命を落としていたのかもしれないという事実に、今頃になって恐怖が蘇る。
私の怪我の原因を作った人物でもあり、命の恩人でもある男性に心から感謝の気持ちを伝える。
『助けていただき、本当にありがとうございました。』
「いや、こちらの責任だ。本当にすまない。ご家族も心配されているだろう。
痛みが治まれば家まで送らせて欲しい。
ご家族にも私から説明させて欲しい」
『いえいえ大丈夫です!
家族は、いません……ここには…』
私は、しどろもどろになりながらも、強い口調で返答する。
「一人で暮らしてるのか?」
『いえ……』
気がついたら異世界に召喚されていたのです……それで
お城でお世話になっています
などと答えたら、きっと頭のおかしい人だと思われてしまう。
この方には、変な人だと思われたくない。
『お世話になってる所がありまして、そろそろ帰らないと…』
あまり詮索されないように言葉を濁して返答する。
「もう少し休んでからの方がいい。
心配せずとも私は隣の部屋にいる。後から送っていこう」
そう言うと男性は隣の部屋へと姿を消した。
誠実な人だな。
急に一人になり淋しさを感じる。
男性が入っていった部屋の扉を名残り惜しむように見てしまう。
痛みと体のだるさが酷い。
私は、もう少しだけ休ませてもらおうと思いそっと瞼を閉じた。
こちらの世界に来てからというもの、見ず知らずの方にお世話になってばかりだ。
段々と自分の警戒心がなくなっている。
優しい人達ばかりに巡り会う。
色々と勘繰り疑う自分が情けない。
いつのまにか深い眠りへと誘われて、ぐっすりと眠っていた。
どれくらいの時間がたったのだろう。
窓からの日差しが眩しい。
目を開けると、すっかりと明るくなっていた。
思いがけずに熟睡して気分もすっきりしていた。
エレナさん心配しているかもしれない。
頭がクリアになるにつれて、お城の人達に連絡していないことが気がかりになってくる。
捜索されていたらどうしよう…