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『開店しまーす』
放送と共に自動ドアが開き、一斉にお客さんが入ってくる。
ここのお店はとても忙しい。おまけに、人手不足だ。
正社員は、私とレジのチーフしかいない。だからだろうか。私はすごく期待されている。
次のチーフは藤塚さんしかいない、とかさすがは社員だ、と呟かれてる。
その期待に時々押し潰されそうになることもある。だけど私はそんなこと言えない。
前向きで、頑張りやさんの私を必死に演じている。みんなに、嫌われないように。
「いらっしゃいませー!!」
誰にも負けないくらいの声でお客様を出迎える。とびっきりの笑顔で。
そしてひたすら、機械的にレジを流していく。どんな嫌なお客様にも笑いかけて。
それは、不思議と苦ではなかった。職場の皆さんへの態度と同じだから、その態度が染み付いたのだ。
ある意味、この仕事は天職なのかもしれない。だけど…本当の私をさらけ出せる場所がない。
それは、時に悲しくなる。
(私って…何なんだろうな。)
笑顔の仮面の下で、そんなことを思うが、誰も気づいてくれることはなかった。