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プレゼン前日。
朝から社内は慌ただしかった。
照と辰哉も最終確認のため、会議室にこもって資料を見直している。
💜「これで最後かな」
💛「うん」
画面を見つめながら照が頷く。
二人で作り上げた企画。
五年前なら、こんなふうに並んで仕事をする未来を想像していた。
でも、その未来は一度終わった。
だからこそ。
今こうして隣にいることが少しだけ不思議だった。
────────
夕方。
「少し休憩しよう」
照の一言で、二人は会社近くの公園へ向かった。
ベンチに座り、缶ジュースを開ける。
風が心地いい。
辰哉は空を見上げながら呟いた。
💜「ここ、初めて来た」
💛「俺は来たことある」
💜「一人で?」
💛「うん」
少し間が空く。
💛「辰哉と別れた後」
辰哉はゆっくり照を見る。
照は視線を前へ向けたまま続けた。
💛「仕事でうまくいかない時とか」
💛「ここでぼーっとしてた」
💜「……」
💛「そしたら」
💛「“今辰哉なら何て言うかな”って考える癖がついてた」
辰哉は思わず笑ってしまう。
💜「何それ」
💛「笑うな」
💜「いや、照らしいなって」
💛「そうか?」
💜「うん」
二人で笑い合う。
その笑顔は、以前より自然になっていた。
────────
帰ろうと立ち上がった時だった。
辰哉の足元に、小さなキーホルダーが落ちていることに気付く。
拾い上げる。
星の形。
💜「これ……」
見覚えがあった。
照も驚いたように目を見開く。
💛「まだ持ってたのか」
辰哉は照を見る。
💜「これ、俺があげたやつ?」
💛「高校の文化祭」
💛「お揃いで買った」
辰哉の記憶が少しずつ蘇る。
「卒業しても持ってよう」
そんな約束をした。
別れたあと、きっと捨てたと思っていた。
💜「ずっと?」
💛「財布につけてた」
💜「……五年間?」
💛「うん」
照は照れくさそうに笑う。
💛「捨てられなかった」
辰哉は何も言えなかった。
自分も同じだったから。
家の引き出しの奥。
もう使わないはずの同じキーホルダーを、一度も捨てられなかった。
────────
会社へ戻る道。
信号待ちで並ぶ二人。
辰哉は小さく息を吸う。
💜「俺も」
💛「?」
💜「まだ持ってる」
照が驚いた顔で振り向く。
💜「引き出しの奥」
💜「捨てようと思ったこと、何回もあった」
💜「でも結局できなかった」
照は少しだけ笑った。
💛「一緒だな」
💜「……うん」
信号が青に変わる。
二人は並んで歩き出す。
五年間の空白は長かった。
それでも。
少しずつ埋まっていく音が、確かに聞こえている気がした。
その時、辰哉のスマホが震える。
画面には部長からのメッセージ。
「急で悪い。明日のプレゼン、先方の都合で役員も参加することになった。絶対に成功させよう。」
辰哉は画面を見つめ、小さく息を吐く。
💜「明日、緊張するな」
照は隣で穏やかに笑った。
💛「大丈夫」
💛「隣にいるから」
その一言だけで。
辰哉の心は、不思議なくらい落ち着いていった。
コメント
1件
第9話、読み終えたよ……🤍🥀 公園のベンチで照くんが「別れた後もここで辰哉なら何て言うかなって考えてた」って話、すごく刺さった。お互い捨てられなかったキーホルダーのエピソードも、五年分の想いがじんわり伝わってきて泣きそうになったよ。 「隣にいるから」の一言でこんなに心が軽くなるんだね。二人の空白が少しずつ埋まっていく感じ、丁寧に描いてくれてありがとう。明日のプレゼン、絶対うまくいくよ🌙
#めめこじ
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