テラーノベル
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【はじめに】
※ちょっとした注意事項
・この物語はガーデンバースの設定を取り扱っております。
・NL、BL、GLを含みます。
・物語の設定の都合上、キャラクターの一部の設定(特に過去に関する内容)をほんの少しだけ変更しています。
◇ ◇ ◇
──どうしてか、とても体が重い。
何か変なことをしていたような気はしない。そしてこれまた何故か、目を覚ますまでの記憶を失っている。
木々のざわめき。小鳥の鳴く声。暖かい日差し。
……木? 小鳥? 日差し?
目覚める前の記憶はなくとも、目が覚めた瞬間にそれらの情報が自身の脳内に入ってくるということがどれほどおかしなことか、彼は瞬時に理解した。そして起き上がる。
周囲を見渡し、彼はハッとする。
知らない場所。それも、いつも自分が生活している場所とどうも雰囲気が違う。
そう、おかしい。昨晩彼は寝室で寝たはずで、しかしそこからの記憶がどうも曖昧になっている。
──ここはどこだ?
(昨日は寝室で寝たはず……。それがどうしてこんな所に?)
起き上がり、彼……ヴィア・クォーツは自身の体を確認する。あちこちに小さな切り傷があり、それを見るなりヴィアはちくりとした痛みを感じた。それは紛れもない、切り傷による痛みだ。そして手足は土だらけ。一体どうしたらこんなことになってしまうのか、ヴィアは不思議でならなかった。
起き上がり、手足や服についていた土を払い落とす。口の中は知らぬうちに切ってしまったのか、微かに血の味がした。
じとりと、周囲に視線を向ける。小鳥は、鼻歌でも歌っているかのように呑気に、それでいて楽しげに鳴いている。時折吹く風によって木の葉がざわざわと揺れる音は、やけに心地よさを感じられた。
(じゃなかった……。落ち着いて、まずは状況を整理しなくてはですね)
ヴィアは昨日、家に帰って自室のベッドの上で眠った。そのことは彼もきちんと覚えている。……しかし、当然だが眠りについたあとの記憶はない。今より前に起きることもなかったはずである。そして、目覚めると見たことのない森の中に居た……。
そこまで考え、ヴィアは首を傾げる。更に奇妙なのは、体の至る所に切り傷があることだ。とっくに固まったのか血こそ出てはいないが、にしてもこの数の傷は異常である。これほど傷が出来ていてもなお眠っていた、というのもおかしい。
……つまるところ、全てがおかしいのである。彼がここに居ることも、体にある傷も、全部。
──その時、近くの茂みが音を立てたのが聞こえた。明らかに風によるものではない、そして風によるものにしてはやけに不自然な音。ヴィアは咄嗟に構えた。
「……ま、待って! 僕は悪者じゃないよ!」
そう必死に叫ぶ男性の声が聞こえ、ヴィアは思わず力が抜けてしまう。攻撃しないでくれ、と懇願する声を聞いて、ヴィアは困惑した。
もしかすると、彼も森に迷い込んできたのではないか? そう考え、ヴィアはその男性が潜んでいるであろう茂みを覗く。そこには、ヴィアよりも酷い傷を負った──もっと詳しく言うと、右足を負傷した男性の姿だった。
攻撃をしてこない様子のヴィアを見てか、男性はほっと息をつく。この男性も怪我を負っているのを見て、ヴィアの頭の中には更に疑問が増えた。しかし、ひとまず目の前の男性の救出が優先だ。ヴィアは、座り込んでいる男性に手を差し伸べた。
「……立てますか?」
「ありがとう、助かるよ……」
差し伸べられたその手を取り、男性はよいしょと立ち上がった。立ち上がった時に「痛っ」とぼそりと呟いていることから、足の怪我は深刻なものなのだろう。
立ち上がった男性は、そのままヴィアと向き合う。そして、ヴィアに対して深々と頭を下げた。それも、彼のつむじがよく見えるくらいに。そして、男性はヴィアに対して感謝を述べる。
「本当にありがとう、助かったよ……! 突然目覚めたら知らない場所に飛ばされてるし、右足は捻挫してるのか何なのかめちゃくちゃ痛いし……。君が助けてくれて本当に、良かった」
「いえいえ、お気になさらず。その様子だと、貴方もここに迷い込んできたのですよね? 私はヴィア・クォーツです。貴方の名前は?」
「僕はサウカだよ。よろしく、えっと……クォーツさん?」
そうして、2人は情報交換をした。と言っても、どちらも寝て起きたらここだったので、話すことと言ってもあまり多くはないのだが。
……しかし、情報交換をして判明したことがあった。
その一、どちらも昨晩は自室で眠り、次に起きたらここに居たこと。
その二、サウカは目が覚めると右足を負傷しており、森をうろついていた謎の虫のような何かに襲撃され、その傷が悪化してしまったこと。
その三、おそらく、二人以外にもこの森に誰かが居るということ。
まず一つ目はそのままで、ヴィアが自室で眠り目覚めると森の中だったように、サウカも自室で眠ったはずが、寝て起きるとこの森だったという。
そして二つ目、これはヴィアにもよく分からなかった。サウカは森を探索している最中にその黒い虫のような何かを見つけ、それから逃げている最中に足を酷く負傷してしまったらしい。その黒い虫は攻撃的だったようだ。
最後に三つ目。サウカは、目覚めてすぐに人の話し声のようなものを聞いたらしい。内容までは聞き取れなかったそうだが、足音をは少し慌てているようだったんだとか。
そして、2人が最終的に出した結論は……
「「まさか、誘拐……?」」
大の男を2人も森に拉致して何をするつもりなんだ、とは考えたが、そうじゃなければどうしてこうなったのか説明がつかないのだ。もちろん、起きた時についていた傷の理由はまだ分からないのだが、一番有力なのはその説だった。でなければ、これはきっとリアルな夢か何かなのだろう。
目が覚めたら謎の森に居て混乱しているのか、思考回路がめちゃくちゃになっていることはヴィアも自覚していた。しかし、それ以外に理由が思いつかないのだ。
どうしてこんなことに……と2人が頭を悩ませていると、すぐ近くから誰かの足音が聞こえてきた。
「……どちら様ですか?」
「おや、すまない。驚かせるつもりはなかったのだけれど……。ところで君達、ここがどこか知らないかい?」
現れたのは、緑髪でモノクルをかけた、いかにも紳士というような装いの青年だった。青年は髪が少し傷んでいるのか、乱れている上にボサボサとしていた。よく見ると、服にも土が付着している箇所があった。ヴィアとサウカは自分たちの置かれている状況のこともあってか、それが気になって青年を見つめていた。
青年は髪の乱れを直し、服の土を払った。そして2人を見て、2人が怪我を負っている──特にサウカが右足を酷く負傷していることに疑問を抱いた。
「君達も目が覚めるとここに居たのかな? 実は私も同じなんだ。だから仲良くしよう」
「私はアスター。気軽にアスターと呼んでくれ。君達は?」
青年……アスターは自身が不審に思われていることに気付いたのか、傷つけるつもりはないということを証明するためにまずは自己紹介をした。2人はその様子を見て少しは警戒心が解けたのか、簡潔にだが彼に続けて自己紹介をする。
偶然、同じタイミングで同じ場所に3人も飛ばされてくるだなんておかしな話だ。だからこそヴィアはやはり、何かを企んだ誰かが自分達をここに飛ばしてきたのだろう、と思った。“ただの偶然”という言葉で片付けるには、その偶然があまりにも重なりすぎているのだ。
その時、突然黒い影が目の前を横切った。それは一瞬で、周囲には風が巻き起こる。ほんの一瞬視界に入っただけだったが、ヴィアはそれが良くないものだということを感じ取った。後方を見ると、サウカが目を見開き言葉を失っている。先程までのサウカの発言を思い出しながら、ヴィアはサウカに声をかけた。
「もしや、サウカさんの見た“虫の形をした何か”というのはアレのことですか?」
ヴィアがそう尋ねると、サウカは無言のまま頷く。先程まで理由も分からず追いかけられていた謎の生物を見つけ、サウカも気が動転しているのだろう。実際に彼は、もしかしたら追いつかれてしまうのでは、と不安でならなかった。
この森に虫の形をした“何か”が居るということを知らないアスターは、生まれてこの方見たことない姿形の生物をこの目で見て、尚更周囲への警戒を強めているようだった。
しかし、3人は気付いていなかった。その背後へと忍び寄る影が居る、ということを。
「ひとまず、あの謎の生物に警戒しながら隠れられそうな場所を──」
「……! ヴィアさん、避けて!」
背後の影──虫の形をした生物は、ヴィアを狙っていた。後ろに居る謎の生物に気付いたサウカが叫ぶと、虫は光線を吐き出した。ヴィアがすんでのところで避けると、その光線はヴィアのすぐ真横を通り抜けた。
ヴィアは後方に視線を向ける。そこに居たのは、背の高いヴィアよりも大きな虫だった。その虫は不気味な羽音を周囲に響かせ、3人を見つめていた。
虫が口を大きく開ける。それが再び光線を放とうとしているためのだと3人が察した時、突然銃弾が虫の体を撃ち抜いた。虫からは黒々とした液体が溢れ出す。虫がその痛みに悶えていると、もう一発、銃弾が虫の体に当たった。
銃弾が二発も当たった虫は、ドロドロになって溶けてしまった。何者かとヴィアがもう一度振り返ると、すぐそこに桃色髪の少女が居た。その少女は純白の翼を持っており、比喩でも何でもない“天使”だった。少女は柔らかい笑みを携えながら、ショットガン──ベネリM3を仕舞う。
「初めまして、見ない顔の方々ですね。お怪我はございませんか?」
コメント
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はじまったぁぁぁ…!!!✨ もう読んでてワクワクのドキドキが胸を高鳴っていました…(?) 最後のサザンカさんの登場がめちゃくちゃイケメンでヤバいですね👍🏻👍🏻 続き楽しみにしてます!無理せず頑張ってください☺️

一話からもう神作でわくわくしてます…!! 続きも楽しみにしています♪ 無理せず頑張って下さい😉
臨場感っていうか…すっごくのめり込めてめっちゃ面白くて大好きです😘🫶🫶 続きが気になる!!応援してまうす🙌☺️