テラーノベル
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昼食前にちょっとしたハプニングがあった。
テント内で仮眠中の先輩が、なかなか起きてこないのだ。
普通に呼んでも起きない。
亜里砂さんのシュラフとマットで熟睡してしまっている。
最終的には亜里砂さんが魔法『表層意識に直接爆音を届ける』を発動。
やっと起きてきた。
「いや、あのテントにマットにダウンのシュラフ、無茶苦茶寝心地がいいな。仮眠のつもりが熟睡してしまった。しかし亜里砂の魔法は凶悪だな」
「もっと弱い魔法も試したのだが、起きてくれなかったのだ。耳元で囁く程度の音量、枕元の目覚まし程度の音量では駄目だったのだ。急ブレーキ中の地下鉄直近レベルの音にして、やっと目覚めてくれたのだ」
「確かに、さっき寝心地を確かめた時、ちょうどいい感じでしたね」
美洋さんもそう言う。
テントの下が板のせいもあるが、かなり温かいのも確からしい。
あとで中に入って確かめてみよう。
取り敢えず今は昼食。
温かいスープスパゲティが美味しい。
「簡単だけれど、間違いない味だね、これ」
「追いチーズの効果も、なかなかいいのです」
こういう普通の山料理も色々憶えないとな。
先生も先輩も料理が上手いから、なかなか機会が無いのだけれど。
きっちり全部食べた後、キャンプ場の洗い場で鍋と食器を洗う。
本当の登山なら、濡れティッシュで拭いて誤魔化すのだが、今日はそこまでしなくていいだろう。
食べた後は、ちょっとのんびり。
ここは林の中を少し開いたような場所だ。
だから風もあまりなく、日向だと冬でもそこそこ温かい。
温かいと言ったら、まだテントの中を試していなかったな。
「ちょっとテントの中を試してみる」
入ってみる。
流石に女の子の寝袋の中に入るのは申し訳ないので、その上で横になるだけ。
確かにこれは快適だ。
荷物は入口の外で、フライが屋根になっている部分に置けば、2人まで楽勝。
雨の日も屋根のある外部分で調理とかすればいいし。
1人か2人旅なら、こういう感じがいいのかな。
彩香さんなら、足下に荷物を置けばちょうどいいかな。
『ほら、やっぱり彩香のことを考えるのだ』
そりゃ色々身近な存在だしさ、と言おうとして気づく。
今の亜里砂さんの声は、声じゃない。
『彩香に聞こえないように、魔法で直接話しているのだ。悠から会話するには、会話文を話すつもりで思い浮かべれば大丈夫なのだ』
本人がそう説明してきた。
なので、その流儀に従って質問してみる。
『今、この方法で話しかけてきたのは何故なんだ?』
亜里砂さんは無制限に他人の表層思考が見えてしまう。
その事は知っている。
でも、こうやって態々話しかけてきたのは初めてだ。
その理由が知りたい。
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