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三週間ぶりに咲の顔を見て、咲に触れたら、止まれるはずはなかった。俺は夢中でキスをして、夢中で彼女を揺さぶった——。



三十分前、俺はクイーンズホテルの最上階で城井坂麗花さんと会っていた。内藤社長夫妻と城井坂社長夫妻、俺の父さんが同席し、逃げ場のない見合いの席だった。

『本当にいいのか、蒼』

昨夜遅くに、父さんから電話があった。

「すぐに結婚するわけじゃないし、広正伯父さんと城井坂社長の目的が和泉兄さんのプロジェクトを乗っ取るだけなのか、探りを入れるのにちょうどいいから」

『それじゃ、相手のお嬢さんに……』

「父さん、相手だって子供じゃないんだから、状況はわかってるはずだよ。俺を探るように指示されてる可能性もあるし、父親に逆らえないだけかもしれない」

『…………』

沈黙で、父さんの心情が痛いほど伝わった。

「それより、父さんは同席していいの? 伯父さんと城井坂社長の相手は気が進まないだろう?」

『年寄扱いするなよ。腹の探り合いには慣れてるさ』

「父さんは伯父さんのこと……何か知っていた?」

伯父さんが絶妙のタイミングでT&Nフィナンシャルと城井坂マネジメントの提携、俺と城井坂家の縁談を持って来たということは、この騒ぎに絡んでいる可能性がある。

咲はそのことに気が付いているだろうか?

咲のことだ、伯父さんのことも、俺の縁談のことも知って、動いているだろう。

知っているから充兄さんの、広正伯父さんのいる観光に近づいたのか……?

『義兄さんの噂は絶えず耳に入ってくるからな……。それより、本当にいいのか? お前にも大切にしたい女性がいるんだろう?』


知っていたのか……。


「大丈夫だよ。この騒ぎが落ち着いたら、紹介するよ」

『楽しみにしているよ——』

城井坂家の一人娘、麗花さんは見るからに『お嬢様』で、咲よりも少し背が低く、咲よりも髪が長く、咲よりも声が高かった。

ホテルで俺を知っている、恐らくT&Nの社員に見られていること、エレベーター前で段差に躓いた彼女を支えた時、写真を撮られたのはわかっていた。

もしかしたら、広正伯父さんか城井坂家の仕業かとも考えた。


このお嬢様と結婚か……。


営業スマイルでお嬢様と会話をしながら、ふと考えた。


まずは、疲れそう……。

見合いだからかもしれないが、ピカピカに磨かれて彩られた爪で料理をするのだろうか?

指輪にネックレス、ブレスレット、ピアスと全身のあちこちを輝かせている装飾品は総額いくらだろう。

このお嬢様は休日の朝、パンケーキを食べるために並んだりはしないだろうな。

それに……。

このお嬢様相手に勃つ気がしねぇ——。


見合いを初めて四十分ほどして、広正伯父さんが昼食は俺とお嬢様の二人でと言い出した時、充兄さんが現れた。

「お邪魔してすみませんが、火急の要件で弟をお借りします」


充兄さん……?


エレベーターホールまで行くと、充兄さん言った。

「あのお嬢さんが俺の義理の妹になる前に、お前に確認しておきたいことがあってさ……」

「はっ?」

「咲、俺がもらっていいか?」

「何言って——」

「お前は会社のためにあのお嬢さんと結婚するんだろう? 会社はお前にやるから、咲をくれよ」

充兄さんが耳打ちした。

「ふざけるなよ——」

「本気だよ。咲もまんざらじゃなさそうだしな」

「そんなわけ……」

「お前に似たこの声に感じてたぞ?」

一瞬、相手が充兄さんだということを忘れていた。

俺は充兄さんのシャツの襟を掴んで、壁に叩きつけた。

兄さんは怒りに顔を歪ませる俺を見て笑った。

「咲に何をした!」

「彼女に聞けよ。今頃、内藤社長のデスクを探ってるんじゃないか? そういえば、情報システム部の館山って奴から、咲と連絡が取れなくなったって電話がきたな」

「それを早く言えよ!」

会社の危機とか、父さんの面子とか、どれも俺を引き留める理由にはならなかった。

気が付けば車を走らせていて、気が付けば観光ビル内の階段を駆け上がっていた。

そして、気が付けば目の前に咲がいた。

女は秘密の香りで獣になる

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