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「ここが魔物の領地か…。」

数十年後、大賢者ユリアが指揮をとる魔王討伐の騎士団が魔物の住む森にたどり着いた。

騎士団に属する一人の青年が毒の霧で満ちた禍々しい空気に圧倒されながらも剣を抜いて魔物の背中に狙いを定める。


「まぬけなスライムだ…俺の攻撃を喰らえ!!」

男は剣を手にスライムに向かって走った。

すると次の瞬間、目の前が白く光って、強い力が全身にあたって押し返される。

「ぐあっ!?こ…これは…?」

…体がしびれて痛い…毒は装備で無効化したはずなのに、これは一体…。

そう男が思っていると、突然目の前にひとりの少女が現れる。

真っ白な髪に青白い肌、魔王のとよく似た尖った角を生やして、その角の近くには青い羽根の髪飾りがついている。

彼女の冷ややかな秀麗さの奥にある闇の覇気に、一目見た瞬間に男は、この少女が魔王の側近か、魔王と同等レベルの強さを持つ魔物ということを理解した。しかし、彼女の髪についた羽の髪飾りを見て男ははっと、恩師のユリアの話を思い出す。


「そ、その髪飾りは…ふ、風水師のルナ様であられるか…?」

「!」

その時、少女の目に一瞬光が宿った。しかし、ほぼ同時に男の背後に一体の魔物が現れ男の背中に弓矢を突き刺す。

「ぐあぁぁっ…!?」

男は前に倒れ、鮮血に染まった体は死体と化した。

「…。」

「…ご主人様、ここにいらっしゃったんですね、帰りましょう。」



「お散歩は楽しかったですか?今度は俺と一緒に行きましょうね。」

「…うん。」

先ほど男を始末した一匹の魔物、アルベルトはにっこりと笑って少女の手を引く。

「あの男…なかなか背丈がありましたね…ご主人様がラバーズトーンのついた胴体をご自身の体にくっつけたように

俺も人間の足をくっつけてみましょうかね、そしてらご主人様を膝枕することもできますし、一緒に寝る時も困りません。」

「…。」

少女の表情は暗かった。対してアルベルトはにこにことときどきはにかみながら彼女に話しかけて、魔王の部屋へと進む。

「魔王様、ご主人様をお連れしました。」

「おお、待っていたぞ、

…ルナ、こっちにおいで、お薬の時間だ。」

「…はい。」

少女が小さく首を縦に振り、黒い軍服をまとった王子の膝に乗る。

魔王はそれを見てふふ、と嬉しそうに笑うと、手に持っていた解毒薬を口に含み、彼女に口移しした。

「ん…飲めたか?」

「はい。」

「そうか…いいこだな。」

魔王はほほ笑むと、彼女の口周りにこぼれた解毒薬をぺろぺろとなめ始める。

魔物の領地にふりまかれた、人間にだけ効く毒の霧はこの少女の魔法によるものだった。

ポイズンミストと呼ばれる風水師魔法にいくつかの改良を施したもので、

彼女は自身が毒を喰らう代わりに、魔物たちの安全を維持している。

魔王はそんな彼女を生かし続けるために、定期的に毒の痛みを消す解毒薬を独自に作り、彼女に飲ませているのだ。

よって、彼女は魔王がいないと毒で死んでしまう。そのため、南十年たった今でも魔物の領地から出ることが出来ない。


「ご主人様、薬が効いて眠たくなっていませんか?一緒に寝ましょう。」

「待て。アルベルト…ルナ、俺と風呂に入ってからにするよな?」

「魔王様は公務にあたってください、それに今日は俺が一緒に入る日です。」

魔王とアルベルトが少女を挟んで恒例の言い合いを始める。

間に挟まれた少女に彼らを仲裁する気はなく、ただ手招きしてくる眠気を感じていた。

…はやく、この悪夢から覚めますように。

意識を手放す直前、少女はそう呟いた。



おわり

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