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敵を討ったあと、森に深い静けさが降りた。 灰になったパーティの残骸――その中で、レイは両膝をつき、震える指先をじっと見つめていた。
「…………」
あたりには、風が木々を揺らす音しか聞こえない。
シルフの声も、もう心には届かない。
「……シルフ……?シルフ!」
何度も心の中で呼びかけるが、あの優しい声は一切返ってこなかった。
「ふざけるな……。何で……何で黙ってるんだよ!」
レイは地面を拳で叩いた。だが、こみ上げてくるのはただ、深い空虚と疲労だけだった。
「……本当に、これでよかったのか……?」
思い返せば、彼らはひどい奴らだった。裏切られ、殴られ、滅多刺しにされ、命まで奪われかけた。
復讐は正当な報い――それでも、心の奥に引っかかりが残る。
「俺は……もう、元には戻れないのか……」
レイの体は黒煙にまみれていた。
今や、技も力も誰にも負けない。だけど……ただ孤独だけが際立つ。
「…………」
森のなか、不意に小さな動物が顔を出す。レイを見て怯え、すぐに去っていく。
自分が化け物みたいに見えるのだろうか。そんな考えさえ脳裏をよぎる。
「シルフ……俺、一人は……やっぱり……怖いよ……」
力なくうずくまるレイ。
ふと、散らばった本の破れたページが、風に乗ってレイの手元まで転がる。
「……俺の、大事な本……。せっかく……シルフと一緒に……」
破れた本のページを大切に摘み上げ、指でなぞる。
「どこまで進んでいたっけ……シルフ、最後に何を言ってくれたっけ……」
ぼろぼろのページに書き込まれたシルフの
魔法や記録
それを声に出して読み返してみる。
「“希望の風の魔道士…か………」
その瞬間、胸の奥で微かに何かが灯った気がする。
「俺……まだ、終わってないよな。まだ……進まないといけないんだよな」
静かに立ち上がり、両手に本の破片と“アビス・ブレイド”を握る。
「シルフ……聞こえても聞こえなくても、俺は――絶対、前に進むよ。どんな過去も背負って、これからも歩いていく」
遥か森の奥、わずかな光が差し込んでくる。
その光を目指し、レイはふらふらと一歩を踏み出した。
「……俺がこの力を持つ意味。俺が生きる意味……絶対に見つけてみせる」
森の木々が、わずかに道を作ったかのように開き始めた。
「……絶対に、シルフにまた会えるまで――俺は立ち止まらない」
小さな影が、夕陽に伸びていく。
不安や後悔を胸に抱きながらも、レイは確かな決意とともに歩き始めた。