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#ワンナイトラブ
最悪の週初めだ。
思い出せ、私。 ……思い出せ、思い出せ。 何でこんな事になってるの。
薄明かりの視界に広がるのは、生活感は無いのに住み心地の良さそうな部屋。びっくりする程全く見知らぬ部屋。
その部屋に見合った大きなベッドの上で何故か目覚めた午前三時。 だけどそこから針は進まない。
他人の匂いの染み付く部屋、裸の私、隣に眠る…男。 嫌でも脳裏を霞める事の次第。
どうしてこんな事に……!
頭がズンと重くて、考えようとすれば頭蓋にヒビでも入ったかのように痛みが増して、一時的に処理能力の落ちた脳みそは考えることを放棄しようと……した。
だけどやっぱり無視できない現実。軽い握りこぶしで頭をいたずらに叩いてみても乾いた音が聞こえるだけ。
ほんとに、どういう状況なんだこれ……。
顔を両手で覆うと立てた膝に額を押し付け、大きなため息を思いっきり吐き出した。
そうして指の隙間から恐る恐る、隣を覗いた。
あどけなくも綺麗な寝顔。柔らかそうにしなる緩やかなパーマヘアー。
寝ているだけなのに一生このまま見ていられる程整った顔立ちの男性は、一時期女子社員の話題を総ナメにしていた人。
そのせいで一時期私を苛立たせていた人。
それっきり、私とは一生関わることの無いと思っていた、人。
……もう、最悪だ。
周りを見渡すと大きなベッドの上に脱ぎ散らかされた衣服の中にはバッチリ自分の下着もある。
下腹部の違和感も、その事実を後押ししている。
なのに1ミリも思い出せないなんて、どんな記憶の改ざん能力してるんだ。
そしてこの場所はラブホテルでも、戻れなくなった私の家でも無く、十中八九……彼の家だろう。
ただ、どうしてこの状況下に陥ったのか。
最重要案件が丸ごとすっぽり頭から消え失せたとは。|穂波依愛《ほなみいちか》27歳、人生最大の失態だ。
「………頭われそ………」
頭の芯がじんと痛くておまけに身体は重くて更には喉の奥が焼け付く。これはきっと、ううん絶対二日酔いだ。
……なんでこんなになるまで飲んだわけ……?
取り敢えず動かしたくない身体に何とか指示を出して下着を付けるとパチンと小さく頬を叩いた。
……昨日は確か、残業が思ったよりも早く片付いたから|旺《あきら》くんに……
あ。
毎日のルーティンを思い返せばひとつだけ、胸を突き刺す痛みが蘇った。
そうだ、昨日家に帰りついた私を出迎えたのは、見慣れた革靴と見慣れないパンプス。
その二つが仲良さそうに並んでいて、一気に胸騒ぎとともに嫌な血流が全身に駆け回った。
嘘だ、とか、そんなわけ、とか、思う隙すら与えず、お風呂場からすっっごく楽しそうな声が聞こえてきて。
あーーーそうだ。思い出してきた。
浮気現場を目撃したんだった。
思い出したら嫌でも鮮明に蘇り、鳩尾からイライラが噎び返しそうになったので深呼吸をして一旦考えをリセットさせる。
でもそれがどうしてこの人と直結するんだ……?
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