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四度目の三日目。
俺は一睡もせず、勇斗の寝顔を見つめていた。
事故
病気
火災
次はなんだ。
空から何かが降ってくるのか?
それとも通り魔か?
俺の神経は、一本の細い糸のように限界まで張り詰めていた。
「……仁人、寝てないだろ。目の下、真っ黒だし、、」
朝、目を覚ました勇斗が、痛ましそうな顔で俺の頬に触れた。
その温もりが、もうすぐ失われる「死体」の予熱にしか思えなくて、俺は反射的にその手を叩き落とした。
『触るな……! 勇斗は、黙って俺の言う通りにしてろ、、!』
「…っ,,いい加減にしろよ! 何なんだよ、数日前から! 俺が何したって言うんだよ!」
勇斗が声を荒らげる。
当然だ。
理由も言わず、四六時中監視され、行動を制限されているのだから。
でも、言えるはずがない。
"お前は今日死ぬんだ"
…なんて。
昼過ぎ、太智と舜太、柔太朗が様子を見に来た。
俺の荒れ果てた部屋と、怯えたような勇斗、そして幽霊のように憔悴した俺を見て、三人は息を呑んだ。
「仁人、ちょっと外で話さん?な?」
太智が俺の腕を掴む。
『離せ! 勇斗から目を離しちゃダメなんだよ、!』
「仁ちゃん、ほんとに異常だよ。勇ちゃんが可哀想だと思わないの?」
柔太朗の冷徹な指摘が胸に刺さる。
分かってるよ。
そんなの俺が一番分かってる…。
でも、死ぬよりはマシだ。
嫌われても、軽蔑されても、生きていてくれればそれでいい。
夕方、俺は勇斗を窓も何もない家の物置部屋に閉じ込めた。
ここなら火が回ってもすぐに逃げ出せるし、外からの落下物もない。
『…ここにいて。あと数時間で、今日は終わるから。… 終われば…終われば明日が来る..から…っ,,』
「…仁人、お前、泣いてんの…?」
鍵を閉めようとした俺の手を、勇斗が掴んだ。
その瞳には、恐怖ではなく、深い悲しみが宿っていた。
俺は何も答えず、泣きながら扉を閉め、外から鍵をかけた。
静寂だった。
心臓の音だけが、時計の針のように時を刻む。
一分…五分…十分…
物置の中からは、何の音もしない。
『…勇斗?』
不安に駆られて、声をかける。
返事がない。
嫌な予感がして、震える手で鍵を開けた。
そこには、俺が持ち込んでいた古いロープで、自ら首を吊った勇斗の姿があった。
足元には、書き殴ったようなメモ。
【仁人をこんなに変えてしまったのは、俺のせい。俺がいなくなれば、仁人は元に戻れるかな】
『……あ、…あ、あ゛ぁ゛……っ,,』
俺が殺した。
事故から守ろうとして、
病気から遠ざけようとして、
俺が…俺があいつを絶望に追い込んで、死なせたんだ。
俺が…
俺が。
崩れ落ちる。
膝の力が抜けて、畳に額を擦り付けた。
三度目の時よりも、声が出ない。
ただ、胃の底からせり上がってくる絶望を吐き出すように、獣のような呻き声をあげることしかできなかった。
駆けつけた太智たちが、絶叫している。
俺の肩を揺さぶり、何かを叫んでいる。
でも、何も聞こえない。
『……ごめん..っ,,ごめん、勇斗…っ,,…』
意識が遠のく。
いつものように、逃げるように俺は意識のスイッチを切った。
もう戻りたくない。
このまま、消えてしまいたい。
どう頑張ったとしても勇斗が死んでしまうのなら、俺も一緒に死んでしまいたい。
そう思いながら、
to be continued…
コメント
2件
毎回神作ありがとうございます😭めっっちゃつらい、т т