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しばらくの間その少女と見つめあった。
美しい。初めて人に対してそう思った。
ひまわりを連想させる黄色い目
大きく、だがいやらしくない自然で美しい唇
すーっと通った鼻筋
風に従順になびく髪。
醜い顔の面影もない。他と違い、服を着ているように見える彼女。
美しい 美しい 美しい
私のものにしたい。
「あ、あの…私になにか…用ですか、?」
オドオドと彼女が私に聞く
「あぁ、ごめんなさい。僕、誠斗と言います。 」
「えっと…私は百合香…です。」
話を聞くと、彼女は自殺しようとしていたようだ。
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私たちは帰る方向が同じだったので、一緒に帰ることにした。
校門前で彼女を待つこと…3分25秒32。
彼女が駆け寄ってきた
「おまたせしました!百合香です!」
やはり美しい。生徒玄関から走ってきたのか、彼女の頬は夕焼けのような赤に染まり、美しく見えた。
「全然待ってませんよ、行きましょう。」
私は笑顔で答えた。爽やかだろう。
「はい!あの、お話したいことって…」
あぁ、そういう誘い文句だった。
適当なことを言っておこう。
「なぜ自殺しようとしたのか聞きたくて。」
「…あぁ、それですか… 」
さっきまでにこやかだった彼女の顔が、すぅ…と暗くなるのを感じた。
今の質問はまずかったか、質問を変えよう。
「…じ、実は…」
彼女が話し始めた、やっぱりやめて真摯に聞こう。
「父に虐待を受けてるんです。母が不倫で出ていって…それから父子家庭で。」
「なるほど…それは辛い。頼れる人も…」
「ほとんどいません。」
「御学友は?」
「ぼっちなので…」
…ふむ。つまり…
彼女が今頼れるのは私のみ。私に依存させるのは容易いだろう。
「…誠斗さん?」
「ん?あぁ、すみません。ぼーっとしてました。」
「そうなんですね、私家こっちなので。では。」
「さようなら。」
彼女はT字路の右の道へと歩みを進める。
私も、自宅のある左の道へ…
行くわけが無い。
彼女が心配だから、ついていって監視をしておこう。
変な虫に付かれたら、彼女も醜い顔になるかもしれない。
彼女はT字路を曲がって、ゆっくりと歩く。長い髪がたなびき、遠くからでも彼女の香りを感じる。
すると、自分の家に着いたのか、カバンを漁り鍵を取り出す。俗に言う鍵っ子だろうか。
彼女は大きく深呼吸をすると家へと入った。
安城百合香。
同い年。いじめ、DVの苦しみに日々耐えている。
彼女自身は醜くは見えない。
彼女を汚さないように、早く何とかしなくては。
明日GPSでも付けておこう、それと盗聴器。彼女のために。