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あぁ、またこの夢か。
嫌に現実味のある、血腥い夢。
私は知らない芝生広場の中央に立たされている。
周りからは声が聞こえる。
『ここはどこ?』『怖いよ。』 『お父さん、お母さん。』『怖いよぅ、』
泣き叫ぶ声 母、父を呼ぶ声 助けを乞う声
いずれ私は空を見る。
だが毎回、後悔する。見なければよかった。
空にある、アレは、アレは、アレは。
私に真っ直ぐと向かう、何者かの口。
喰われる。くわれる。クワレル。
どんなに助けを乞いても、泣いても、母や父を呼んでも。
ソレは向かってくる。
叫んでも、もう、オソイ。
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朝。鳥のさえずりが聞こえる。
私は飛び起きる。やはり、汗だく。気持ちが悪い。
「…また、あの夢。」
しかし、思い出せない。何があったのか。
とりあえず、支度をしよう。
…コレを片付けた後に。
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『安城百合香』
……今日も学校。
大丈夫、課題は終わらせた。
最近、私と話してくれる優しい人がいる。
誠斗さん。
谷川、誠斗さん。
彼の顔を見た時、確信したの。
あぁ、彼なんだっ……て。
あ、マズイ。もう出ないと。
私は重い腰を上げて、カバンを持ち、家から出た。
向かいの道には、美しい彼が立っていた。
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『谷川 誠斗。』
T字路先の彼女と目が合う。
今日も、美しい。綺麗だ、愛している。
「おはよう、百合香さん。」
「おはようございます!誠斗くん!」
この間まではさん付けだったのだが、慣れたのだろうか?
「あぁ、おはよう。今日も暑いね。」
「はい、汗かいちゃいますよ。」
汗を拭く動作すらも愛おしいとは。
「そうだ、誠斗くん。昨日のニュース見ましたか?」
「ニュース?知らないね。」
「昨日の…ちょうど今頃。都内で男女2人が異形化した姿で見つかったって…」
「異形化?」
「はい、異形化。その男女は、下半身と頭が特に酷く、もう顔すらも…」
「なるほど…」
異形化。
私が常に見る世界。
今だってそう。そこを歩いているサラリーマン。老婆、登校中の中学生。
皆、汚い。
「怖いですよね…私震えちゃって。でも何より怖いのが…」
「怖いのが?」
「…2人はまだ、生きていて、痛みも感じるって…」
そんな、そんなのって、まるで…
「生き地獄。」
「…ですね…」
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学校でも、その話題で持ち切りだった。
「異形化ってやばくね? 」
「俺画像見ちゃったわ…」
「普通にデマだろ?」
お前たちの顔も、私から見ればそうなのだが。
とりあえず席について、お気に入りの本を読もう。
本はいい。人の顔を見なくて済むのだから。
「本ばっか読まないで、人と話しなよ」
…幼なじみの猫宮。
なぜこの女はこうも、干渉してくるのか。
醜い…見ていられない。また更に醜さが増したか?
「…ねぇ、ねぇ!聞いてんの?」
「あぁ、ごめん。考え事を…」
「……あっそう!私の話なんか興味なさそうだし、もういい!」
彼女は行ってしまった。まぁどうでもいいが。
とにかく今は策をねろう、百合香を僕のものにする方法を。
彼女についてまとめると、父子家庭。父からの家庭内暴力。恐らく父は仕事か夜遊びか…で、帰りが遅くなる。つまりそれまでは彼女は家に1人きりなのだ。
そう考えると…
やはり、アレしかないのだろう。