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「おおっ、 徹君。ご無沙汰してました。
先日は瀬里香がお世話になって、どうもありがとう」
「私は体調不良で、その節は失礼しました」
勇次郎と美愛子が立ち、徹にお辞儀をした。
徹も2人に深々とお辞儀を返したが、 何気に気まずい感覚は否めなかった。
「どうぞ、座ってください」
勇次郎が徹に、自分の向かいのソファに座るように勧めた。
「私、何か冷たい飲み物を持ってきますね。
…あ、あなたも そこに座ってらして」
美愛子は席を立ち際、緑にも座るように言った。
徹と緑は複雑な表情のまま、静かにソファに腰を掛けた。
勇次郎と徹、 瀬里香と緑が向かい合った。
「あなた、陸斗の…」
瀬里香が緑を見て 口火を切った時、
「申し訳ございませんでした! 今更もう、嘘をつくつもりはありません。
自分がした行いは、本当に最低だったと反省しています。謝罪をしても 許される話じゃないとも思っています。いかなる罰も受ける覚悟で、今日はここに来させていただきました」
緑は膝に付く程、瀬里香に深く頭を下げたまま 謝罪の言葉を伝えた。
瀬里香の隣で、勇次郎が苦い顔をしている。
「割と早くに、気づいてたんです」
「えっ?」
瀬里香の言葉に、緑は思わず顔を上げた。
「検診の日、突然悪阻つわりに襲われて 病院の洗面所に駆け込んだ時。あの時に、私を介抱してくださった看護師さんですよね。その前は…そう、いつだったか 陸斗のマンションのエレベーターで すれ違ったことがあったのを思い出しました」
「実は、私もさっき 玄関でお会いした時に…。
正直言って…驚きました。
あの、その時からずっと…ご主人と私の関係をわかってらしたのですか?」
「最初はピンときてなかったんですが、何いずれの日も あなたが私の近くに来た時、陸斗が使っているのと同じシャンプーの香りがしたので…。
悪阻の時って、匂いに敏感になってるから。
彼はアレルギーがあって、市販されているものではなく 特別なシャンプーを使ってます。それと被かぶるなんてことは 滅多にないんじゃないかと思うので。多分、陸斗とよく会ってるのかなって…そこから何となく、わかってきました」
緑は驚きのあまり、手で口元を覆った。
「…ところで、富枝さんは お元気にされていますか?」
今度は勇次郎の言葉に驚いた緑が、勇次郎の顔を釘付けになって見ていた。
#狂愛
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コメント
1件
第57話、読み終えました。一気に空気が変わった回ですね。 緑の謝罪が始まったかと思いきや、瀬里香が「ずっと気づいてた」って…あのシャンプーの香りの伏線、本当に上手いなと思いました。悪阻で匂いに敏感になる時期だからこそ気づけた、という説得力がすごく好きです。 そして最後の勇次郎さんの「富枝さんはお元気に?」で、また新たな伏線が…! この家族の会話の裏にある、まだ見えてこない過去の形が気になって仕方ないです。続き、楽しみにしています。