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さぶれ-SABURE-
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K-Takasaka
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朝の光が森を照らし始めたころ、メバルたちは東へ向かって歩いていた。
先頭はアオノ。
その後ろをマサカゲとメバルが続いている。
「本当に、こっちに人の住んでいた跡があるの?」
メバルが周囲を見回した。
森を抜けてから、しばらく人工物らしいものは見つかっていない。
道らしきものはあったが、途中で崩れていた。
石の壁も、ほとんどが土に埋まっている。
「地形データ上では、建築物の密度が高い場所があります」
アオノが答える。
「ただし、現在も人が住んでいるとは限りません」
「住んでたとしても、もう誰もいないかもしれないってこと?」
「その可能性もあります」
メバルは少しうつむいた。
「誰かいたらいいのに」
マサカゲが振り返る。
「いたとしても、警戒しろ。敵とは限らないが、味方とも限らない」
「分かってるよ」
メバルはそう答えたが、歩く速度は少し上がっていた。
「でも、人がいるなら話を聞けるかもしれないよ。ゲームから出る方法とか、ここで何が起きてるのかとか」
「相手が話を聞いてくれればな」
「マサカゲ、最初から怖いこと言わないでよ」
「可能性を述べただけだ」
しばらく進むと、森の向こうから煙が上がっているのが見えた。
アオノが足を止める。
「煙を確認しました。自然発生ではありません」
「火を使ってるってこと?」
メバルが顔を上げる。
「人がいるかもしれない」
マサカゲはすぐに周囲を確認した。
「慎重に近づく」
「うん」
三人は木々の間を抜けた。
視界が開ける。
そこには、石造りの家々が並んでいた。
道には木材が敷き詰められ、畑には四角く区切られた作物が植えられている。
中央には井戸があり、煙突から白い煙が上がっていた。
さらに奥には、高い鉄の壁が村全体を囲んでいる。
メバルが息をのむ。
「村だ……!」
家の前を、作業をしている人影が歩いていた。
人間に見える。
頭に布を巻いた者。
道具を運ぶ者。
畑を耕す者。
間違いなく、誰かが生活している。
「人がいるよ!」
メバルが駆け出した。
「待て!」
マサカゲが叫んだ。
しかし、メバルは止まらなかった。
「助けてもらえるかもしれない! Kさんたちにも知らせられるかもしれないよ!」
アオノとマサカゲも、仕方なく後を追う。
村の入口までは、あと数十メートルだった。
メバルが手を振る。
「こんにちは! 私たち、道に迷って――」
その瞬間、村の門の両脇に立っていた鉄の像が動いた。
巨体だった。
人間より一回り以上大きく、全身が鋼鉄でできている。
赤い光が目の位置で灯った。
「え……?」
メバルが足を止める。
鉄の用心棒が腕を上げた。
マサカゲが叫ぶ。
「下がれ!」
だが、間に合わなかった。
用心棒の腕から鎖が飛び出し、メバルの腰へ巻きついた。
「きゃっ!」
メバルの体が宙へ持ち上がる。
「メバル!」
マサカゲが走り、鎖をつかんだ。
アオノも鎖の接続部を確認する。
「動力源は内部です。外部から切断するのは困難です」
用心棒は二人を振り払った。
マサカゲは地面へ転がり、アオノは石壁に背中を打ちつける。
メバルは鎖に吊られたまま、村の門へ引きずられていく。
「待って! 私たちは敵じゃないよ!」
村人たちは遠巻きに見ているだけだった。
誰も助けようとしない。
一人の村人が、用心棒へ何かを伝える。
鉄の頭部が赤く光った。
続けて、別の用心棒が動き出す。
マサカゲは立ち上がり、拳を握る。
「アオノ、弱点は分かるか」
「関節部は稼働しています。ただし、装甲が厚い」
「ならば、関節を狙う」
マサカゲは近くに落ちていた石を拾い、用心棒の膝へ投げつけた。
石が当たる。
用心棒の動きがわずかに鈍った。
その隙に、アオノが用心棒の背後へ回り込む。
「背面に端子があります」
「停止できるか?」
「接続規格が不明です」
「試せ」
「了解」
アオノが用心棒の背中へ手を伸ばした。
だが、別の鉄の腕が彼女をつかんだ。
「アオノ!」
メバルが叫ぶ。
三人はそれぞれ鎖や鉄の腕に拘束された。
マサカゲだけが最後まで抵抗していたが、用心棒の力にはかなわなかった。
「武器を持っていないのに、これほどの戦力……」
マサカゲが低くつぶやく。
「相手は村全体を防衛するために、装備を整えている」
アオノが答えた。
「でも、話を聞けば――」
メバルが言いかけたとき、用心棒が彼女の口元を鉄の手で押さえた。
「んっ……!」
マサカゲが睨みつける。
「メバルに触るな!」
用心棒は反応を示さない。
三人はそのまま村の奥へ運ばれた。
村人たちは道の端へ避け、こちらを見ている。
メバルは必死に話しかけた。
「お願い! 私たちは迷い込んだだけ! 誰も傷つけてないよ!」
村人たちは目を合わせようとしなかった。
その態度が、メバルには不気味だった。
村の中央を抜けた先に、黒い鉄格子が見えた。
牢屋だった。
壁も床も鉄でできている。
扉には複数の鍵が取り付けられていた。
用心棒は三人をそれぞれ別の牢へ入れようとした。
「分けるな!」
マサカゲが叫ぶ。
「別々にされると、情報共有ができない」
「それは困るね」
アオノが淡々と答える。
「ただ、抵抗しても拘束される可能性が高いです」
メバルは牢屋の中へ押し込まれた。
扉が閉じる。
重い音が響いた。
マサカゲとアオノも隣の牢へ入れられる。
三人は鉄格子越しに向かい合った。
「ケガは?」
マサカゲが聞く。
「私は大丈夫。アオノは?」
「打撲のみです。行動に支障はありません」
「マサカゲは?」
「問題ない」
メバルが少し安心した。
「よかった……」
牢屋の外には、鉄の用心棒が二体立っている。
赤い目が、こちらを監視していた。
「どうして村人は何も言わないのかな」
メバルが小声で尋ねる。
「恐怖で支配されている可能性がある」
マサカゲが答える。
「用心棒に?」
「あるいは、村の規則に」
アオノが鉄格子を調べている。
「この牢屋は、通常の鉄より硬い素材です。外からの破壊は困難です」
「Kさんがいたら、何か方法を考えてくれたかな」
メバルがつぶやいた。
その言葉に、二人は返事をしなかった。
K-Tたちが今どこにいるのか、無事なのか。
確認する方法はない。
やがて、村の鐘が鳴った。
一度。
二度。
三度。
すると、牢屋の床がわずかに揺れた。
「地面が動いている」
アオノが言う。
鉄格子の下から、低い駆動音が響く。
ごうん、という音とともに、牢屋全体がゆっくりと上昇し始めた。
「えっ?」
メバルが床へ手をつく。
牢屋は建物の中を上がり、屋根を突き抜けた。
村全体が眼下に見える。
鉄の壁。
整然と並ぶ家。
無表情にこちらを見上げる村人たち。
そして、村の外れに建てられた巨大な装置。
そこには、太い鉄骨で組まれたクレーンがあった。
牢屋はクレーンの先端へ吊り下げられている。
アオノが装置を見た。
「これは処刑設備です」
「処刑……?」
メバルの声が震える。
クレーンがゆっくり旋回する。
牢屋が運ばれていく先には、赤く輝く池があった。
マグマだ。
熱気が上がり、空気が揺らいでいる。
メバルは鉄格子をつかんだ。
「いや……待って……」
マサカゲは冷静に周囲を確認する。
「アオノ、脱出方法は」
「現在、解析中です」
「急げ」
「急いでいます」
クレーンが停止した。
牢屋はマグマの真上で吊られている。
下から熱気が押し寄せ、鉄格子が赤く染まり始めた。
メバルは震えながら、麻酔銃を握っていた。
「これ、持ってるけど……」
彼女は銃を見下ろす。
「ここからじゃ、何もできないよ……」
マサカゲが鉄格子を調べる。
「メバル、銃を貸せ」
「え?」
「金属部分を壊せる可能性がある」
メバルは麻酔銃を差し出そうとした。
しかし、その瞬間。
クレーンの鎖が大きく揺れた。
牢屋が傾く。
メバルの足が床から離れ、体が鉄格子へぶつかった。
下では、マグマが赤く波打っている。
アオノが初めて声を荒らげた。
「落下まで、あと数秒です!」
クレーンの巻き上げ機が動き出した。
牢屋が、ゆっくりと降下する。
メバルは鉄格子にしがみつきながら叫んだ。
「誰か、助けて!」
その声は村全体に響いた。
だが、誰も動かなかった。
牢屋の底が、マグマの熱に包まれていく。
コメント
1件
うわ……第5話、めっちゃ重かった……。最初は「村だ!人がいる!」って希望が見えたのに、一瞬で絶望に変わった感じがゾッとしたよ。鉄の用心棒とか村人たちの無表情、誰も助けてくれない冷たさがすごく生々しくて。マグマの真上に吊るされて、もう時間がないってとこで終わるの、心臓がギュッてなった……。メバルの「誰か助けて!」が本当に切なかった。続きが気になりすぎるよ……。