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「琴音」
龍聖君が、ギュッと私を抱きしめる。
この感覚を何度も味わってきたのに、今日が1番嬉しいのはなぜだろう。
「ごめんな」
「私もごめん」
お互い謝ってて、おかしいよね。
だけど、私達にはその言葉の意味が痛いほどわかっている。
龍聖君は、私をゆっくりと体から離して2、3歩下がった。
少し長めの前髪から覗く瞳がとても美しい。
「俺……」
艶を帯びた唇がゆっくりと動く。
呼吸が止まるほどの緊張感。
そしてあなたは……
決意を持って言葉を紡いでくれた。
「琴音が好きだ」
一瞬、時が止まり、私はギュッと固く目を閉じた。
龍聖君の男らしい声が私の全身を包み込み、胸がとても熱くなった。
その一言、たった7文字を伝えるのにどれほどの時を越えてきたんだろう。
恋焦がれた大切な人からの告白、次は自分の番だと思った。
「私も龍聖君が好き」
ようやく……
ようやく、私もちゃんと言えた。
嬉しくて、抱きしめたくて、私は龍聖君の腕の中に無我夢中で飛び込んだ。ずっと閉じ込めてきた想いが解放され、私は声を出して泣きたくなった。それでも、ここで泣いてはいけないと声を押し殺した。
「琴音。もう何も我慢しなくていい。いっぱい泣いていいから」
龍聖君は私の思いに気づいてくれた。
その言葉で、錆び付いて抜けなくなっていた心の栓が勢いよく飛び出し、私はまるで子どもみたいになりふり構わず泣きじゃくった。
何年分かの切ないほどに熱い想いが、今やっと、龍聖君に届いた。
何一つ残らず、全て、全部――
情けなく泣き続ける私をただ優しく抱きしめてくれる龍聖君。迷惑なくらい大声を出しているのに、文句1つ言わないで頭を撫でてくれて……
私は、愛しい人のとても広くて大きな心に触れ、安心し、そして……だんだんと落ち着きを取り戻していった。
「琴音、大丈夫か?」